『INSIDE』 戦略的設計と背景に組み込まれた罠とは

『INSIDE』における、右に進む動機の根源は、この「予想と裏切りの繰り返し」というダイナミックな揺さぶりなのではないでしょうか。さらに、この揺さぶりはエンドレスに続きます。前に書いたとおり、『INSIDE』は、制作者自身が抱える様々な制約ゆえに、周回プレイを前提とした作品に仕立てられているからです。つまり、背景に仕掛けられた物語の隙間によって、プレイヤーの想像力と好奇心は絶えず刺激され、また新たな予想に永遠に続いていくのです。

『INSIDE』は、現実的な制約の中で生まれました。開発人員も時間も余裕がなく、プレイ時間が2~3時間程度の小作品しか作れない環境でした。更に、ワールドワイドで販売するため、文字による表現が制限されました。これにより、人々を魅了するような壮大な物語は作れなくなり、説明が必要な複雑なアクションも実現不可能となりました。

しかし、Playdeadのクリエイターたちは、その制約すらも、面白さの根源として機能するように仕上げたのです。文字情報がないからこそ、背景に仕掛けられた隙間だらけの物語が生きてきます。短いプレイ時間だからこそ、周回を楽しむことができます。その結果、本作は「プレイヤーを裏切り続ける」という特異な面白さを獲得したのです。

その意味では、本作への賞賛は、戦略に基づいた緻密な設計と、横スクロールアクションで永続する面白さに挑戦したクリエイターらしさにも向けられるべきではないでしょうか。

本作は「左から右に進むゲーム」です。操作もシンプルです。にも関わらず、プレイヤーを画面の右へ右へと誘い、強力に動機付けます。それは、プレイヤーの好奇心(怖いもの見たさ)を刺激し、疑問を持たせ、裏切るという大胆な展開によるものです。

(ビデオ)ゲームを遊ぶということが、これほど豊かな体験をもたらすのだと、私たちに気付きを与えてくれる名作であったと思います。