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『パラッパラッパー』 – 始祖の功績と失われた音ゲーの20年間

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■音ゲーは単純化と閉じた遊び方へ

しかし、そういった自己表現的な遊び方は次第に衰退していきました。代わりに、リズムに重きを置いた音楽ゲームが主流となっていきます。演奏・演技を直接のモチーフとせず、流れてくる譜面通りにボタンを押して、反射神経を試すタイプの音楽ゲームが台頭してきたのです。この流れを決定づけたのは、2009年に大ヒットとなった『リズム天国 ゴールド』でした。『パラッパラッパー』が12年間保持しつづけた1位の座を越え、累計販売本数は159万4000本に達し、業界を驚かせる結果となりました。

それと並行して、『beatmania』『Dance Dance Revolution』『DrumMania』『GuitarFreaks』といった疑似体験型のタイトルも、超高難度の曲が増え、通常の演奏ではありえないような動きが求められるようになりました。たとえば、『Dance Dance Revolution』では、先ほどの「魅せプレイ」よりも、足を高速でバタバタさせてステップを踏み続けるような、およそダンスとは呼べない動作が必須となってしまい、そうしなければクリアすることもままならない、という状況になってしまいました。

その結果、見る / 見られる、聞く / 聞かせるという、表現を巡る関係が崩れ去り、ひたすらハイスコアを追い求めるようなナルシシズム的な閉じた遊び方に収束していきました。

さらに、スマホゲームの普及がこれに拍車を掛けます。『ラブライブ! スクールアイドルフェスティバル』に代表されるスマートフォン向けの音楽ゲームでは、ゲームセンターにあるような大型筐体と異なり、動作や音で周りを巻き込んだり、自分なりの表現を示すことはほぼ不可能です。

このように、音楽ゲームは「音ゲー」と呼ばれてはいるものの、音楽の本来持っていた表現としての要素は既に脱落しており、実質的にはアクションゲームとして存在していると言えます。

 

■作り手とユーザーの共依存

『リズム天国 ゴールド』以降、私たちは、指示通りにプレイすることに随分囚われてきたのではないでしょうか。『パラッパラッパー』のプロデューサーである松浦氏は、

「『パラッパ』以降の音楽ゲームは、”100点満点のあるゲーム”が多くなったことが少し残念ではありました」 – PS.Blogより

と指摘しており、かなり早い時期から、音楽ゲームにおける自己表現の脱落に気付いていたようです。

確かに、音楽ゲームを作る側も遊ぶ側も“100点”を目指して、長らく「良い子」を演じてきたように思います。「この譜面通りに遊んでくれたら、ハイスコアを与えよう」というゲームシステムによる条件付きの承認を得るため、ユーザーは脇目も振らず、過剰にスコアを求め続けてきました。

一方で、開発者側も「ユーザーは更なる難度を求めている」と信じて疑わず、本来の演技・演奏からかけ離れた譜面を作り続けました。考えてみれば、両者の関係はまるで共依存です。そして、この共依存は、ジャンル衰退の予兆でもあります。かつて、シューティングゲームや格闘ゲームが勃興し、衰退していったのと同じ様相を呈してはいないでしょうか。

難しいステージはスリルやクリア時の達成感をもたらします。しかし、それは、一度でも遊んでみないことには理解できません。人生で一度も音楽ゲームやシューティングゲームをやったことのない人に、高難度ステージの面白さを伝えることは、それこそ困難でしょう。そのため、新規ユーザーが増えず、ジャンルは徐々に衰退してしまうのです。

『ラブライブ!』『THE IDOLM@STER』のような強力なIPによって、音楽ゲームは辛うじて生きながらえています。しかし、音楽ゲームというジャンルそのものを愛好する人が増えているという実感はありません。その意味では、シューティングゲームや格闘ゲームと同じように、存続の危機に瀕していると言えます。

 

■自己表現を認めてくれる『パラッパラッパー』

©2006, 2017 Sony Interactive Entertainment Inc. ©Rodney A.Greenblat/Interlink

この状況を打破するためには、アクションゲームとしての「音ゲー」ではなく、もっと普遍的な、「自由に音を奏でてみたい」とか「ステージの上で格好良く踊ってみたい」というような自己表現への憧れ・欲求に応える要素が必要です。それは、音楽ゲームからいつの間にか脱落していた“自分なり”の表現であり、見る / 見られる、聞く / 聞かせるという関係の再構築に他なりません。

「ゲームでの自己表現」は難しい注文でしょうか。しかし、実は20年も前にそれを成立させたゲームがあります。それが『パラッパラッパー』なのです。

『パラッパラッパー』で最高の評価を得ると、「COOLモード」という特別なステージに突入します。「COOLモード」では、お手本(つまり譜面)が消失し、グルーヴにノッてアドリブでラップを刻まなくてはなりません。アドリブ部分の判定基準は荒削りであるものの、『パラッパラッパー』は、譜面通りではない、プレイヤーの“自分なり”の表現を評価してくれる、始祖にして唯一無二の音楽ゲームなのです。発売から20年を経た今でも、無限に広がる面白さがあり、その斬新さが輝いています。

©2006, 2017 Sony Interactive Entertainment Inc. ©Rodney A.Greenblat/Interlink

 

■インタラクティブ性のこれから

「音楽は、表現の自由さが重要です」 – PS.Blogより

松浦氏の言うように、音楽はとても自由です。楽器が弾けなくても、音楽の知識が乏しくても、ビートの効いた曲を聴けば、自然と体がリズムを刻みます。

一方、ゲームはルールの集合体です。スコアやボタンなどで、プレイヤーの「できること」と「してはいけないこと」がカッチリと決まっています。つまり、音楽ゲームとは、この相反する2つを融合させてインタラクティブ性を実現するものであり、とても面白いけれど、作るのはなかなか難しいジャンルなのです。

そして、20年の間、残念ながら、この課題を解決するイノベーションは生み出されませんでした。結局、アクションゲームとして生き残るほかなかったのです。

世界的なゲームデザイナーであるChris Crawfordは、インタラクティブ性を次のように表しています。

インタラクティブ性 = 達成可能性 / 想定可能性

想定可能性は「プレイヤーが『やりたい』と思う事」、達成可能性とは「プレイヤーが実際に体験できたこと」を指します。インタラクティブ性を高くする(1に近づける)には、分子を増やすか、分母を減らすしかありません。

ほとんどの音楽ゲームは、分母をぐっと小さく抑えてきました。「譜面通りに入力を行う」という可能性しか想定してこなかったのです。時折、想定を越えたプレイヤーが「魅せプレイ」などの特殊な遊び方を発見しましたが、それを汲み取ってくれるクリエイターは遂に現れませんでした。

これからの音楽ゲームは、達成可能性と想定可能性のどちらも大きくしていきながら、インタラクティブ性を高めていくことが求められています。作り手側が考える以上に、ユーザーは音楽ゲームでやりたいことがたくさんあるはずですし、技術の向上によって体験できることも随分増えてきました。

松浦氏は音楽のインタラクティブ性を求め、『パラッパラッパー』を生み出しました。クールモードでは、自分が「カッコイイ!」と思うタイミングでラップを刻むことができます。シンプルなゲームシステムで、インタラクティブ性を限りなく1に近づけることに挑戦した、希有な作品だと言えるでしょう。

音楽の自由さを保ちつつ、ゲームとして成立させるのは決して簡単なことではありません。しかし、音楽ゲームというジャンルは今、岐路に立たされています。このままアクションゲームとして生き延びるか、今度こそ進化するのか。厳しい状況が続きますが、パラッパのように「I gotta believe!(僕なら出来るさ!)」と、ピンチを救ってくれるクリエイターが現れることを願っています。

 

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神谷美恵

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1984年生まれ。立教大学 社会学部 卒業後、富士通マーケティングに新卒で入社。その後、ITインフラ・クラウド事業を行う企業でサービス企画、 プロジェクトマネージャーに従事。趣味はガンダム研究とゲーム全般。(illust 黒川依)

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