『白猫』シリーズ復活の鍵はどこにあるのか マーケティングのアンチパターンに学ぶ

マーケティングのアンチパターン

マーケター向けのニュースメディアには、様々な業界・企業における成功事例が掲載されています。そして、大抵のマーケターは成功事例が大好物です。ですが、成功事例から分かることは大まかなトレンドだけで、自社が成功するための要素がそこに書かれているわけではありません。それを知ってか知らずか、彼らはアルファベット3文字で表される項目が上がったり下がったりしたことを1日に何回もシェアしています。

私は仕事柄、ゲーム業界のプロデューサーやマーケティング担当者と話をする機会が多くあります。面白い(というと大変失礼ではありますが)のは、成功した要因を聞くと皆バラバラの回答が返ってくるのですが、失策を嘆くぼやきは大体同じだということです。他人の失敗を言いふらすようなことはできませんが、内心は「あの人もこの人も同じことを言っているなぁ」と、不思議に思っていたりします。

取材を通じて見えてきたのは、3つのアンチパターンです。興味深いのは、ゲーム業界に限らず、どこの業界にも同様の失敗を発見することができる点です。

1.プロダクトがニーズに応えていない

世の中には、一体誰が買うのだろうかと、こちらが頭を抱えたくなるような商品が発売されることがあります。有名なところでは、赤城乳業の「ガリガリ君 ナポリタン味」がその一例です。一部では意外に美味しいという意見もあるようですが、3億円もの赤字を出したといいますから、やはり氷菓にナポリタンの味わいは求められていなかったのでしょう。

2.魅力が伝わっていない

どん兵衛 だし天茶うどん

マーケティングの迷走ぶりを自らキャンペーンにしてしまったのが日清食品の「黒歴史トリオ」(キャンペーンサイトはこちら)です。過去に大失敗に終わった3つの商品をあえて復刻するという試みですが、食べてみたところ、こちらはいずれも大変美味しく、おすすめです。「黒歴史トリオ」はどれも味は良いものの、発売当時にはその魅力を市場に伝えきることができなかったため、失敗してしまいました。トリオの中では「どん兵衛 だし天茶うどん」がお気に入りなのですが、蓋の部分には“天ぷら茶づけ風”という言葉の横に“うどん”と書いてあり、確かに買う人を混乱させます。

3.シナジーの生まれない組み合わせ

シャープの複合機に取り付ける「プラズマクラスターイオン発生装置」というオプション製品があります。Twitterでは「そんなことをやっているから経営が傾くんだ」などの辛辣な意見が噴出しましたが、言わずもがな、既存商品(複合機)とシナジーの全く無い点がオプション商品としての存在価値を損なっています。

では、この3つの商品は、コロプラの不振にどのような示唆をもたらすでしょうか。

『白猫プロジェクト』も『白猫テニス』も、一度遊んでみるとわかるのですが、ゲームとしては秀作です。「ぷにコン」の操作性は高く、キャラクターも丁寧にデザインされています。したがって、「ガリガリ君 ナポリタン味」のようにプロダクトとして破綻しているわけではなさそうです。思い出せば、数年前までは『パズル&ドラゴンズ』『モンスターストライク』とトップ争いをしていたのですから、高いポテンシャルを秘めたゲームであることは間違いありません。つまり、『白猫』シリーズの不振は、市場に魅力が伝わっていないか、シナジーを得られていないか、あるいはその両方に課題を抱えているということになります。

『白猫プロジェクト』のユーザーが減少し始めたのは、パルメショック(2016年5月)ではなく、2016年9月期第4四半期(2016年7月~9月)です。それは『白猫テニス』がリリースされたタイミングでもあります。この時、『白猫テニス』の登場によってコロプラのポートフォリオ戦略が大きく崩れてしまったことが、現在の不振に繋がっていると私は考えています。プロダクト同士の位置関係がこじれたことで、市場に対するメッセージ性と、プロダクト間のシナジーが失われてしまったのではないでしょうか。







ABOUTこの記事をかいた人

1984年生まれ。立教大学 社会学部 卒業後、富士通マーケティングに新卒で入社。その後、ITインフラ・クラウド事業を行う企業でサービス企画、 プロジェクトマネージャーに従事。趣味はガンダム研究とゲーム全般。(illust 黒川依)