『白猫』シリーズ復活の鍵はどこにあるのか マーケティングのアンチパターンに学ぶ

「看板タイトル」と「スピンアウトタイトル」

今や、どのゲーム会社も複数のプラットフォーム上で多種多様なタイトルを販売・運営しています。当然ですが、ユーザー層やゲーム性などを鑑み、プロダクトを適切に配置するポートフォリオ戦略が重要となります。そして、如何にして精度の高いポートフォリオ戦略を策定できるかが、マーケターとしての腕の見せ所というわけです。

コロプラにとって、『白猫プロジェクト』は大事な看板タイトルであり、『白猫テニス』は『白猫プロジェクト』のスピンアウトタイトルという関係にあります。看板タイトルは文字通り、「この会社といえば、このタイトル」と言ってもらえるような稼ぎ頭のタイトルで、IPとして独立して展開できるほどの強さがなくてはなりません。例を挙げるとすれば、任天堂の『マリオ』や『ポケモン』、ミクシィ・XFLAGスタジオなら『モンスターストライク』、Cygamesの『グランブルーファンタジー』といった存在です。

一方、スピンアウトタイトルは、(多くの場合は)看板タイトルに軌道修正を加えたものを言います。その目的は、看板タイトルでは手の届かなかった顧客層にリーチすることです。スピンアウトタイトルとして最大の成功を収めたのは『ポケモンGO』でしょう。2016年7月にファミ通が行った調査では、『ポケモンGO』ユーザーの57.5%が「これまでに『ポケモン』をプレイしたことがない」と回答しており、正に狙い通りの結果をもたらしています。

スピンアウトタイトルは扱いが難しいポジションです。なぜなら、そこには2つの大きなリスクがあるためです。

ひとつは、看板タイトルにそれほど貢献しないかもしれない、というリスクです。たとえば、『ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス(以下、FFBE)』は同シリーズのスピンアウト作品で、歴代ナンバリングタイトルの登場人物がクロスオーバーして出演します。このケースでは、正式後継のナンバリングタイトルが『FFBE』を強化していますが、逆方向の強化はほとんど働いていないでしょう。歴代のナンバリングタイトルを遊んできたファンが『FFBE』をプレイしている可能性が高いからです。

もうひとつは、看板タイトルのユーザーを横取りしてしまう危険性があることです。看板タイトルとスピンアウトタイトルには緩やかな繋がりと類似点があります。そのため、看板タイトルの既存ユーザーが、新しくリリースされたスピンアウトタイトルに流出してしまうことがあるのです。その点、『ポケモンGO』は従来の『ポケモン』とは全く異なるハードとゲームシステムに仕上げることで、このリスクを上手く回避しています。

『白猫テニス』は、スピンアウトタイトルとして、この2つの問題を解消しきれませんでした。本来であれば、『ポケモンGO』がそうであったように、看板タイトルとはある程度の距離をとったポジションでなければなりません。しかし、『白猫テニス』は『白猫プロジェクト』と共通のキャラクターが多数登場する上、同じターゲット層に向けて、似たようなクリエイティブのプロモーションを繰り返してしまいました。その結果、もともと『白猫プロジェクト』が持っていた「王道アクションRPG」というビジョンが希釈され、メッセージ性をどんどん失っていったのです。これが新規ユーザーの獲得力を低下させた直接の原因でしょう。

一見、同じようにしか見えない2つのゲームがあったとしたら、大抵の人はどちらかひとつを選択するはずです。両方ともせっせと遊ぶコアなファンもいなくはないでしょうが、『白猫』シリーズが主としてきた若年層のライトユーザーでは考えづらい行動です。実際はゲーム性に違いがあったり、色々な楽しみ方があったとしても、ライトユーザーにとってはどちらかひとつ、ありさえすれば十分です。

このように考えると、『白猫プロジェクト』が『白猫テニス』と共倒れに陥っていることにも説明がつきます。『白猫テニス』ユーザーの何割かは『白猫プロジェクト』からスイッチしてきた可能性があり、『白猫プロジェクト』のユーザー数は実質的にかなり減少しているのかもしれません。しかも、先ほど書いたように『白猫』シリーズは新規ユーザーの獲得力が大幅に低下しています。看板タイトルである『白猫プロジェクト』は活気を回復することができず、それと繋がりのある『白猫テニス』も人気が落ちていったと考えられるのです。

コロプラの驚くべき自浄作用

コロプラの今期第3四半期は大幅な減収減益に終わりました。しかし、決算資料で最も注目すべき点は「6月下旬から白猫PJが復調」という記載です。今、コロプラは力強い自浄作用によって徐々に体制を立て直しつつあります。

コロプラ 2017年9月期第3四半期決算説明会資料より抜粋

看板タイトルである『白猫プロジェクト』の回復はコロプラにとって最重要課題でした。これまでかなり苦戦を強いられてきましたが、これは大きな転機となり得るでしょう。

自浄作用は直近の施策にも表れています。『白猫テニス』では7月31日に1周年記念イベントを開始し、ガチャピン・ムック、江戸川コナン、ハローキティなど国民的キャラクターとのコラボレーションを行っています。普段ゲームを遊ばない人たちにも知られているであろうキャラクターを起用することで、スピンアウトタイトルとしての本来の役割を果たそうとしています。

『白猫プロジェクト』も3周年を迎え、「ゼロ・クロニクル~始まりの罪~」という新ストーリーを追加しました。主人公とヒロインの秘密に関わる悲恋の物語で、正に「王道アクションRPG」に相応しい原点回帰です。PVも壮大な世界観を感じさせる内容で、賑やかでライトな雰囲気の『白猫テニス』とは十分に距離を置くことができています。

この自浄作用は、コロプラがまだまだ大きなクリエイティビティを秘めている証拠でもあります。今後も『Project : Pani Pani(仮称)』『アリス・ギア・アイギス』といった新作が控えています。ひとりのファンとして、『モンスト』『パズドラ』に比肩するタイトルが再びコロプラから生まれることを願ってやみません。