「クオリティが高いだけでは難しい」…モバイルゲームでも高みを目指すネクソン、次の一手

ネクソンが好調です。2017年8月10日(木)に発表された第2四半期累計(1月-6月)の業績では、売上収益1218憶5600万円(前年同期比27.4%増)、営業利益560憶4000万円(同228.1%増)、最終利益393憶5400万円(同2,947.1%増)と大幅な増収増益を果たしました。

主に利益率の⾼い中国事業の好調が要因。中国では、人気PCオンラインゲーム『アラド戦記』の9周年アップデート及びアイテムの売上が業績をけん引。9年目を迎えたタイトルとはいえ、深みあるライブゲームの運営⼒、追加コンテンツの計画性が寄与し、業績に結実したことでしょう。

下記は、2017年度第2四半期の地域別売上構成比率とプラットフォーム別売上構成比率です。時期によって異なりますが、売上構成比率はPCが8割近く占めています。テレビCMのキャッチコピー「オンラインゲームはネクソン」と銘打つように、同社の主力プラットフォームとして成長を続けると同時に、市場でも圧倒的なポジションを獲得しています。

▲平成29年12月期第2四半期決算説明資料より抜粋(一部編集)

そんなネクソンですが、モバイルゲームの成長も著しいです。クオリティの高いタイトルを矢継ぎ早にリリースし、その評価の高さとヒットの打率も高くなってきています。たとえば日本の売上収益では、モバイルゲームが高い水準を記録しています。『HIT』及び『ハイドアンドファイア』が引き続き収益に貢献しているようです。

▲平成29年12月期第2四半期決算説明資料より抜粋

また、直近ではゲームアプリ『真・三國無双 斬』のヒットも大きなトピックスのひとつです。同作は、コーエーテクモゲームスの『真・三國無双7』を題材にしたアクションRPG。台湾のXPEC Entertainmentが開発し、ネクソンはパブリッシングを務めます。日本と中国を除く139地域にて2017年3月30日より英語版の同時配信が開始され、韓国・台湾・香港でセールスランキングでTOP3入りを果たしました。

日本のみならず、全世界でヒットを飛ばすネクソンのモバイルゲーム。この勢いはどこまで続くのでしょうか。

奇しくも決算後となる8月17日には、同社の国内モバイルゲーム事業説明会が開催されました。当日は、これまでの取り組みについて、市場の傾向や主要リリースタイトルの動向と合わせて説明があったほか、今後の事業方針や戦略までも言及されました。

本稿では、説明会から分かったことをベースに、ネクソンのモバイル事業本部の概況、そして今後における豊富なタイトルラインナップについて紹介していきます。

 

徹底したローカライズ・カルチャライズを意識

説明会では、まず株式会社ネクソンのモバイル事業本部 本部長の金 起漢(キム キハン)氏が登壇し、同事業部の詳細について触れました。ネクソンのモバイル事業本部は、2015年8月に設立され、現在は約70名のスタッフが在籍。職種の構成は、運用・技術・プロダクション・ローカライズ・QA・マーケティングなど多岐にわたります。

▲金 起漢(キム キハン)氏

金氏は、これまでのゲームアプリ市場について、「ブラウザゲームの盛況から時代はネイティブに移り変わり、やり込み要素が高いタイトルが登場。開発費は高騰、他社との競争も激しくなり、成功の確率が下がってきた」と振り返りました。市場が成熟してきた2015年のことを指しています。

同様にネクソンのモバイル事業本部も2015年に立ち上がりましたが、金氏は「遅れている感覚は無い。ゼロベースではなく、PC事業部やgloops(モバイルゲームの開発・運用に特化した子会社)から運用・QA・技術のメンバーも合流し、事業を進めている」とノウハウの高さを言及しました。

一方で2016年下期からは、各社、独自性が高くハイクオリティなタイトルをはじめ、海外タイトルの参入も増え、市場は再成長の兆しを見せています。例に漏れずネクソンもクオリティの高いタイトルを創出していますが、日本ならではのコンシューマ向けJRPG級のクオリティとは異なり、グローバル企業としての様々なアプローチで人気を集めています。

ここからは、スライドと共に立ち上げから現在までの取り組みについて紹介。

▲提供タイトルは2年間で18タイトルをリリース(2015年8月~2017年8月)。ジャンルの傾向はRPGやアクション、シューティングなど多種多様。また、自社・他社問わずIPタイトルも複数。

▲累計登録ユーザー数は約2年で16倍強に。

▲こちらは月別の平均DAU(1日のアクティブユーザー数)。新作やマスプロモーションのタイミングで上昇していますが、なかでも顕著なのが『HIDE AND FIRE』のリリースです。倍以上の伸びを見せており、リリース当初からDAUが高かったことが予想できます。

▲モバイル売り上げ推移では、2015 Q3と2017 Q1の比較では、約8倍の売上増に。ヒット作『HIDE AND FIRE』や『HIT』の登場は2016 Q4(『HIDE AND FIRE』のリリースはQ3末)。過去最高の売上を叩き出した2017 Q1では、マスプロモーションが寄与した『HIT』が売上をけん引しました。

ここからは、各タイトルごとの現況について。

▲ピース・又吉直樹さん出演のテレビCMでも話題を呼んだ『ドミネーションズ』。リリース当時はセールスランキングでも見かけていたタイトルでしたが、今は落ち着きを見せています。ただ、日本における継続率は高いとのこと。長期運用フェーズにも入り、息の長いタイトルとして今後にも注目。

▲驚くべきなのが、『HIDE AND FIRE』のヒットだ。国内配信のモバイルタイトルとしては初の長期ヒット作とのこと。金氏は「リリース前、日本でヒットするかは疑問だった。ただ、大前提にクオリティが高いこと、そして新しいジャンルを提供する弊社のこだわりと考えを尊重した」と振り返りました。結果、ノンIPかつマスプロモーションを行わず、50万ダウンロードを突破。成功の要因に金氏は、「カルチャライズとマーケティング構築に1年投資。キャラクターイラストやシナリオも一から書き(描き)直した。公式生放送を行うなど、コンテンツの面でも色々な挑戦をしたタイトル」と分析。

▲モバイル事業本部、最大のヒット作である『HIT』。セールスランキングでは、最高3位にランクインしました。横持ち型の本格3DアクションRPGは、まだ日本では成功事例がありませんでした。金氏も不安を抱えながらリリースを迎えたことに触れつつも、結果的にヒットし、「韓国の開発力の高さが伝わった」と振り返りました。

▲『HIT』成功の秘訣は、ローカライズとカルチャライズの配慮にあります。『HIDE AND FIRE』同様に、キャラクターやシナリオは日本市場向けに大幅変更。さらに日本向けのオリジナルコンテンツを導入するなど、ユーザーからの支持を集めました。

▲8月3日にリリースされた新作シミュレーションRPG『StraStella』。ロボット×美少女というネクソンとしては今までにないタイプのジャンル。『HIT』などと比べると、大きな伸びあがりを見せていませんが、金氏いわく「DAU、継続率ともに右肩あがり」とのこと。長期運営を狙えるタイトルとして期待がかかります。

▲そのほか、個性的なタイトルを複数リリースしているネクソン。有料アプリがあるかと思えば、ステージ踏破式の完全無料アプリがあるなど、そこには利益先行ではない、純粋に面白いゲームを世に生み出したいという姿勢を感じられます。現にこれらの意欲作は、アプリストアのトップバナーにフィーチャーされました。

以上がネクソンのモバイル事業本部の概況となります。

ネクソンは、韓国に開発会社を構えていますが、それだけではなく、世界中のデベロッパーたちとの業務提携を経て、独自性の高いタイトルを創出しています。

そのクオリティの高さと面白さは万国共通…かと思いきや、金氏は「クオリティが高いだけでは難しい」と語ります。「細やかなローカライズとカルチャライズが重要。この2年間は、それらを実感できた。今後も継続してクオリティの高いタイトルを持ってくることを前提に、しっかりと(ローカライズ・カルチャライズの)準備期間を設けてリリースしていく」と、これからの方針を語ってくれました。

なお、説明会では今後リリースされるタイトルに関して、サプライズな発表はありませんでした。ですが、直近の決算説明資料にもある通り、現在ネクソンには数多くのパイプラインが存在します。

▲平成29年12月期第2四半期決算説明資料より抜粋

次ページからは今後リリース予定の新作モバイルゲームのラインナップを一部紹介。

※ゲーム画面・動画及び情報に関しては開発段階のものです







ABOUTこの記事をかいた人

Pick UPs! 代表 / 編集者 / ライター / APPアナリスト。過去、ゲーム会社でマーケティング、広報、WEBプランナーなど多数のPR業務に従事。その後、Social Game Info 副編集長、Social VR Info 編集長を担当。現在は、ゲームとビジネスの観点で執筆・企画に尽力するほか、アプリデータ分析サービス「Sp!cemart」の編集長も兼務。