コロプラ 2019年9月期 第3四半期:サービス終了が相次ぎ赤字幅拡大 新作の課金ブースト問題の影響は

【Topics】
■ 新作不振と周年準備で1億5,000万円の赤字
■ 『バベル』課金ブースト問題で調査報告書を公表
■ 『白猫PJ』足元は昨年超えも、主力タイトル頼りが続く

 

決算概要

 株式会社コロプラは8月13日に2019年9月期第3四半期(2018年10月1日~2019年6月30日)の決算を発表した。

 第3四半期の累計連結業績は、売上高275億7,900万円(前年同期比16.6%減)、営業利益4億9,300万円(前年同期比90.2%減)、経常損失1,600万円の赤字(前年は46億円の黒字)、純損失1億4,900万円の赤字(前年は30億5,300万円の黒字)となった。

(出典)2019年9月期第3四半期 決算説明会資料 P.6

 第3四半期単体(2019年4月~6月)では、売上高79億5,600万円(前年同期比18.6%減)、営業利益0円(前年同期比99.9%減)、経常損益6,600万円の赤字(前年同期は4億6,800万円の黒字)、最終損益8,100万円の赤字(前年同期は3億800万円の黒字)となった。

(出典)2019年9月期第3四半期 決算説明会資料 P.7

 

事業状況

 前四半期同様、新作・既存タイトル共に振るわず、広告投資を抑制しても業績悪化に歯止めを掛けることはできなかった。既存タイトルで安定的な収益を確保し、新作投入で収益を積み上げるという「ミルフィーユ」戦略を掲げてきたが、既存タイトルの下げ幅に対し、新作の伸びが全く足りていないのが現状だ。

 第3四半期では、2019年6月12日に『最果てのバベル』をリリース。同作は、シナリオに野島一成氏(代表作『ファイナルファンタジーⅦ』等)、音楽に崎元仁氏(代表作『伝説のオウガバトル』等)を起用したソロプレイ専用のスマートフォン向けRPGだ。App Storeセールスランキングでは、リリースから翌日にTOP30入りを記録し、幸先のいいスタートを切った。

 しかし、これが後に、コロプラの従業員が同作のセールスランキングの操作を目的とした不適切な取引を行っていたことが判明した。

 決算発表当日には、本件に関する調査報告書が公表された。

特別調査委員会の調査報告書公表等に関するお知らせ

 報告書によると、本事象には役職者を含むマーケティング本部の従業員2人が関与し、セールスランキングの操作を目的として、自社費用847万8,000円をもって『最果てのバベル』に課金することを取引先のWEB広告会社に依頼していた。

 また、本事象は取締役CCOの森先一哲氏が事前に認識していた可能性が高く、8月13日付で森先氏からの取締役辞任の申し出を同社が受理、さらに当該従業員2人を同日付で懲戒処分を決定した。加えて、代表取締役社長 兼 CEO 兼 COO 馬場功淳氏、及び取締役 CSO マーケティング本部管掌 長谷部潤氏の月額報酬10%減額(3ヵ月)を決定。

 なお、本事象は匿名の情報提供により判明した。

 本件課金の企図は、自己負担で課金を行いセールスランキングの上昇を図る、いわゆる“課金ブースト”だ。これは、ランキング上位のタイトルをユーザーが“優良タイトル”として認識し、ダウンロードのきっかけを作るなど、数年前から海外を中心に行われている施策である。

 当該従業員のマーケティング本部 本部長は、リリース直後のセールスランキングが注目され易く、課金ブーストがプロモーションに一定の効果が期待できるのではないかと考え、実行に移した。

 これまでの決算記事でも伝えているように、昨今のコロプラの業績は芳しくない。『魔法使いと黒猫のウィズ』や『白猫プロジェクト』以降、ヒット作にも恵まれず、近年リリースされた新作もサービス終了の発表が相次いでいる。

 コロプラの当該従業員は、こうした新作がヒットしていない状況下で、本作が配信開始直後のセールスランキングが上位になれば、ゲームメディアで取り上げられることにより、注目されて話題にも上がる、ひいてはダウンロード数の増加及びアーリーアダプター層(リリース直後にセールスランキングを意識してゲームを開始するユーザー)の獲得が期待できるのではないか、と考えたようだ。

 しかし、課金ブーストは景品表示法の「優良誤認表示の禁止」に抵触する可能性があるほか、そもそもApple社のガイドライン上には、こうした行為を禁止している。場合によっては、対象デベロッパをDeveloper Programから除名することもありえる。

 現在、iOS端末上のApp Storeではセールスランキングは表示されないが、Apple社からRSSフィードにより提供される情報などをまとめたWEBサイトが複数存在するため、実際にはセールスランキングを閲覧することは可能である。同ランキングを閲覧するのは極少数かもしれないが、前述した法律・規約などを鑑みても、本件課金は不適切な行為と言わざるを得ない。

 本件課金の実行は、レンタル・私物端末を合わせた149台が使用された。依頼先のWEB広告会社は、情報漏洩を避けるために担当者を含める計10人を実行者として選抜し、それぞれが各端末で有償アイテムの精霊石を購入した。

▲『最果てのバベル』ショップ画面

 また、本件課金の発覚を免れるため、コロプラの当該従業員は、WEB広告会社に対して「ゲームを進めながら精霊石を使用するように」と伝えたが、実際には時間の制約から課金を行ったのみで、精霊石は使用されなかった。

▲「特別調査委員会設置のお知らせ」より。
コロプラがWEB広告会社に送った発注書の料金は1,080万円(税込み)。

 では何故、今回の稟議手続がコロプラ社内で通ってしまったのか。コロプラの社内規程によれば、外注業務を発注する場合は、稟議手続を必要とし、決裁者は発注額によって下記のように区別される。

・1,000万円以上5,000万円未満 ⇒ 取締役の承認
・500万円以上1,000万円未満 ⇒ 本部長の承認

 ところが、広告宣伝業務の外部発注については、過去の経営会議承認により例外事項とされ、稟議手続を経ず、上長1人からの承認を得ることにより発注がされていた。

 つまり、広告宣伝費の外部発注に係るコロプラの処理は、四半期毎に決議される広告宣伝費の予算総額の枠内である限り、個別の外部発注ごとの稟議手続を経る必要はなく、その発注金額の大小にかかわらず、上長1人の承認があれば発注が可能なものとして処理されていた。

 この上長は、当該発注担当者より上位の上長であれば良いものとされ、現に、1,000万円以上の発注であっても取締役や本部長よりもさらに下位のポジションである上長の承認によって発注がされていた。

 なお、過去の類似調査対象6タイトルである『プロ野球バーサス』『PaniPani-パラレルにクスパンドラナイト』『ディズニー ツムツムランド』『アリス・ギア・アイギス』『DREAM!ing』『バクレツモンスター』は、類似の取引は確認されなかったとのこと。

 コロプラは、再発防止措置として、役員・従業員に対するコンプライアンス教育をはじめ、稟議手続きの見直し、モニタリングの強化に努めていくとしている。

 さて、ここからは、他タイトルの状況について言及していく。

(出典)2019年9月期第3四半期 決算説明会資料 P.13

 主力の『白猫プロジェクト』を含む「FY2014タイトル」は、7月に控える周年準備のためセールスは落ち着ているが、前年同期比で26.1%減となっている。3年前の全盛期には遠く及ばず、勢いを取り戻すには至っていない。

 『魔法使いと黒猫のウィズ』などの「FY2013タイトル」は前年同期比で16.0%減、『東京カジノプロジェクト』の「FY2015タイトル」は前年同期比で77.1%減、『白猫テニス』の「FY2016タイトル」は72.4%減だった。

 FY2015タイトルとFY2016タイトルは、期中にサービス終了を発表した一部タイトルの影響により大幅な減収となっている。それぞれFY2015タイトルが『バトルガール ハイスクール』(2019年7月31日サービス終了)、FY2016タイトルが『ドラゴンプロジェクト』(2019年6月27日サービス終了)となる。

 「FY2018タイトル」は、『ディズニーツムツムランド』『アリス・ギア・アイギス』『DREAM!ng』の3本。『DREAM!ng』はコロプラ初の男性キャラクター育成ゲームとして話題となったが、収益貢献はいまひとつ。『ディズニーツムツムランド』と『アリス・ギア・アイギス』は安定的に推移し、FY2014タイトル・FY2015タイトルに次ぐ売上規模を誇っている。

(出典)2019年9月期第3四半期 決算説明会資料 P.14

 「FY2019タイトル」は、前述した『最果てのバベル』と『バクレツモンスター』の2本だ。『最果てのバベル』はすでにセールスランキング200位圏外と、先の課金ブースト問題も重なり、ここからの立て直しは困難だろう。余談だが、先行タイトルかつスマートフォン向けソロプレイ専用RPGのパイオニアである『アナザーエデン』は、2周年を迎えた今もセールスランキング上位を記録している。

 なお、『バクレツモンスター』は2019年8月29日にサービス終了。1年も満たない、約10ヵ月での幕引きである。

 

見通し

 2019年9月期通期の業績予想は非開示。

 新作パイプラインは他社IPタイトル4本、自社タイトル5本が予定されている。すでに判明しているタイトルは、2019年内リリース予定の『ドラゴンクエストウォーク(以下、ドラクエウォーク)』(企画・制作:スクウェア・エニックス、開発:コロプラ)だ。

(出典)2019年9月期第3四半期 決算説明会資料 P.20

 『ドラクエウォーク』は、国民的RPG「ドラゴンクエスト」の世界と化した現実世界を、自らが主人公となって冒険できる、位置情報を活用したスマートフォン向けゲームだ。社会現象を巻き起こした『ポケモンGO』に続けとばかりに、様々なIPタイトルが同様のジャンルに参戦しているが、例に漏れず本作もそれに該当している。

 2019年6月にクローズドβテストを実施、リリースは年内を予定している。

 既存タイトルでは、『白猫プロジェクト』の足元が周年前月(6月)からの当月(7月)のユーザー数伸長率が昨年超えを果たしているという。

(出典)2019年9月期第3四半期 決算説明会資料 P.21

 2019年7月14日に5周年を迎えた『白猫プロジェクト』では、TVCMをはじめ、ゲームに一定期間ログインするだけで最大「100回+5」分のガチャが無料で引けるお得なキャンペーンやイベントガチャなど、周年施策が功を奏した。また、直近開催したアニメ「ソードアート・オンライン」とのコラボ施策も貢献し、App Storeセールスランキングでは1位を獲得。

 現状のコロプラでは、不振続きの新作タイトル状況を鑑みると、当面、主力の『白猫プロジェクト』及び『魔法使いと黒猫のウィズ』頼りになることが予想される。

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