エイチーム 2019年7月期 通期:ゲーム事業が振るわず利益大幅減 中長期方針はIP×海外展開×マルチデバイス

【Topics】
■ 新作・主力含めてゲーム事業が振るわず利益が大幅減
■ ライフスタイルサポート事業は過去最高の売上高・利益に
■ スマホゲーム専業から脱却へ。中長期方針はIP×海外展開×マルチデバイス

 

決算概要

 株式会社エイチームは 9月13日に2019年7月期 通期の決算を発表した。

 2019年7月期の連結業績(2018年8月1日~2019年7月31日)は、売上高371億5,100万円(前年同期比1.4%減)、営業利益28億1,100万円(前年同期比40.2%減)、経常利益28億900万円(前年同期比40.6%減)、当期純利益14億7,300万円(前年同期比55.4%減)となった。

(出典)2019年7月期 通期 決算説明会資料 p51 <クリックで拡大>
(出典)2019年7月期 通期 決算説明会資料 p52 <クリックで拡大>

 主にエンターテインメント事業における内外的要因により業績が振るわず、連結売上高が前期比で横ばい、営業利益、経常利益、当期純利益については前期比で大幅に減少した。

(出典)2019年7月期 通期 決算説明会資料 p54 <クリックで拡大>

 

事業状況
エンターテインメント事業

 スマートフォン向けゲームを展開するエンターテインメント事業は、セグメント売上125億7,700万円(前年同期比22.2%減)、セグメント利益15億3,200万円(前年同期比57.3%減)だった。

(出典)2019年7月期 通期 決算説明会資料 p62 <クリックで拡大>

 引き続き既存ゲームアプリの効率的な運用を進めながら、2018年10月に新規ゲームアプリ『少女☆歌劇 レヴュースタァライト -Re LIVE-(以下、スタリラ)』をリリースした。既存の主力ゲームアプリ『ヴァルキリーコネクト』や『ユニゾンリーグ』などが減衰し、全体として売上が減少する中、『スタリラ』で既存ゲームアプリ全体の売上減少分を十分には補えず、エンターテインメント事業は前期比で減収減益となっている。

 『スタリラ』もリリース当初は、無料ダウンロードランキング1位、セールスランキング10位にランクインするほどの好調なスタートダッシュを切ったものの、現在はその推移も下火になっている。メディアミックス作品として、様々なチャネルの動向に合わせて、『スタリラ』も巻き返しを図りたいところだ。

 

ライフスタイルサポート事業

 引越し比較・予約サイト「引越し侍」、自動車査定・買取サイト「ナビクル」のほか、ブライダル関連サービス「ハナユメ」、金融サービスなど生活に密着したWebサービスを運営するライフスタイルサポート事業は、セグメント売上225億2,500万(前年同期比18.8%増)、セグメント利益31億3,700万(前年同期比2.0%増)と、過去最高の売上高・セグメント利益となった。

(出典)2019年7月期 通期 決算説明会資料 p58 <クリックで拡大>

 2019年7月期では、各サブセグメントが好調に推移し、既存事業の育成と周辺サービスの拡充に加え、新しい事業領域において複数の新規サービスへの先行投資を実施。

 

EC事業

 自転車専門のECサイト「cyma(サイマ)」を運営するEC事業は、セグメント売上20億4,800万円(前年同期比19.7%減)、セグメント損失2億1,000万円(前期は2億1,100万円の赤字)となった。

(出典)2019年7月期 通期 決算説明会資料 p65 <クリックで拡大>

 自転車通販サイト「cyma-サイマ-」は引き続きフルフィルメント(※)を強化しながら、運営の最適化に向けた体制整備を優先した結果、前期比で減収したものの、事業の課題の明確化及び今後のアプローチ方法を具体化できた一年となったという。

 ※フルフィルメント:ネット通販における受注管理、在庫管理、ピッキング、商品仕分け・梱包、発送、代金請求・決済処理など、通販ビジネスで最も重要なコアプロセス全般を指す。また、苦情処理・問い合わせ対応、返品・交換対応のカスタマーサポートや顧客データ管理などの周辺業務も含まれる。

 

見通し

 2019年7月通期の連結業績予測(2019年8月1日~2020年7月31日)は、売上高350億円(前年同期比5.8%減)、営業利益10億円(前年同期比64.4%減)、経常利益10億円(前年同期比64.4%減)、当期純利益5億円(前年同期比66.1%減)を見込んでいる。

(出典)2019年7月期 通期 決算説明会資料 p67 <クリックで拡大>

 同社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向け、2020年7月期において、各セグメント事業の強化・拡大を図るとともに、新たな事業の育成に向けた投資を進めながら事業ポートフォリオの強化を図っていくとのこと。そのためにも人材採用は抑えつつも、引き続き、人材育成及び環境整備・組織体制の強化には注力していくという。

 上記のような戦略を促進する観点で2020年7月期の連結業績見通しについては、新たなサービス育成のための投資や人材・組織体制の強化など、次期以降の再成長に向けて、事業全体を拡大する準備の一年と考えているようだ。

 さて、ここからはセグメント別業績の見通しについて解説。

 エンターテインメント事業では、『ヴァルキリーコネクト』『ユニゾンリーグ』『スタリラ』など主力タイトルの効率的な運用に取り組みながら、2020年7月期以降にリリースを予定している他社との協業による新規ゲームアプリの開発に注力していく。

 業績について、既存タイトルは現時点で想定できる費用を織り込んだ上で、直近のKPI推移を踏まえた売上と利益、協業による新規ゲームアプリの開発費用を十分に織り込んだ予想としている。なお、協業による新規ゲームアプリのうちひとつにおいては、これまで資産計上していた開発コストが今回の協業スキームでは大部分を当該期間に費用計上予定とのこと。

 また、エンターテインメント事業の中長期方針として、スマホゲーム専業から脱却し、マルチデバイス展開でグローバル市場を狙うとしている。キーワードは、「IP×グローバル×マルチデバイス」の3つだ。

(出典)2019年7月期 通期 決算説明会資料 p36 <クリックで拡大>

 方向転換の背景には、国内スマホゲーム市場の成長が鈍化し、開発費が高騰していることが挙げられる。エイチームによれば、開発コストは2012年リリースの自社開発ゲームから約10倍にも膨れ上がっているという。グローバルゲーム市場は今後も継続的・安定的に拡大することを鑑み、前述した方針に舵を切ったようだ。

 突然の方向転換に不安視されることもあるが、これまでのエイチームの取り組み、自社ノウハウから考えても、“なるべくしてなった”という印象だ。

 たとえばグローバル展開では、これまで同社は複数タイトルを自社で全世界に直接運営してきた体制とノウハウを備えている。低コストでローカライズ可能な体制と実績、グローバルにプロモーションを実施できる複数地域の主要メディアとのパートナーシップ、多言語対応可能なCS体制&コミュニティ運営力など、こと海外展開における実績を挙げれば枚挙にいとまがない。

 他方、“IP”の取り組みでは、高い技術力が業界内でも認知されているほか、協業や提携、ゲーム内イベントコラボレーションなどを通じた多くのIPホルダーとの関係性を構築しているため、決して高いハードルではない。そもそも『スタリラ』というIPタイトルをヒットさせた功績を見れば一目瞭然だろう。

 このように同社のゲーム事業では、すでに「IP×グローバル×マルチデバイス」を軸に複数の開発パイプラインが走っている状態だ。

(出典)2019年7月期 通期 決算説明会資料 p37 <クリックで拡大>

 ライフスタイルサポート事業では、サブセグメントとなる引越し関連事業、自動車関連事業、ブライダル関連事業、金融メディア事業それぞれにおいて、利用者数の増加、利用者1人当たり売上高の向上並びに利益率の向上を図りながら、引き続きサービス間の相互送客・継続顧客の獲得に注力していく。また、中長期的な成長を見据え、新規サービスの育成のために積極投資を実施する予定。

 業績について、既存の各サービスの収益力、KPIの状況を踏まえ、季節要因や内外の環境要因等を現時点で想定可能な範囲で加味して予想している。新規サービスは、現時点で想定可能な範囲で費用を織り込み、売上は保守的に予想。既存サービスにおいても競争力強化に向けた投資を一部先行投資も含めて行っていくことから、売上・利益ベースでは例年同様の成長を見込むものの全体としては営業利益率の低下が予想されるようだ。

 EC事業では、引き続きフルフィルメントの強化を行いながら、中長期での持続的な利益創出に向け抜本的な構造改革に取り組んでいくという。業績については、各KPIの状況に鑑み、季節要因などを加味しながら構造改革に向けての投資を踏まえ予想。

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