15年以上前のMMORPGをモバイルに最適化…『リネージュ2M』の初速要因を探る

 スマートフォン向けアプリゲームの日々の運用とその効果を調査し、ゲーム関連企業へ様々データを提供するスパイスマートの分析記事。

 世界各国のゲーム事業者に利用されている同社のサービス「LIVEOPSIS (ライブオプシス)」では、ランキング推移とゲーム内施策を一覧で閲覧できる「イベントカレンダー」やTwitterトレンド情報、毎月発行の調査レポートなどが提供されている。

 なかでも「イベントカレンダー」は、セールスランキング上位のゲームアプリの運用施策をダッシュボード形式で閲覧可能。ゲーム内プロモーション施策の効果測定やセールスランキングと運用効果の相関を時系列で分析できる。

 本稿では、リリースから1ヵ月が経過した『リネージュ2M』について、「LIVEOPSIS イベントカレンダー」を利用し、プロモーションやゲーム内施策を中心に振り返っていく。

 

原作を尊重しながらもスマホに最適化したゲーム仕様

タイトル:『リネージュ2M(Lineage2M)』
リリース日 : 2021年3月24日
配信:NCSOFT

【調査箇所:2021年3月24日〜4月19日】

 NCSOFTの次世代オープンワールドRPG『リネージュ2M』は、リリース直後からApp Storeの無料ダウンロードランキングで首位を獲得し、セールスランキングでは最高21位、以降も2度のスパイクを形成しつつTOP100圏内を維持。リリース後約1週間で国内のプレイヤー数が100万人を突破している。

 本作は20年以上の歴史がある「リネージュ」シリーズの最新作で、PC用MMORPG『リネージュ2』の正統後継モバイルリメイク作品。韓国では2019年にサービスを開始し今も人気を博している。その後、2021年1月4日に日本向けティザーサイトが公開され、国内向けにサービスが展開される運びとなった。

 『リネージュ2』をベースとしながらも、昨今のスマートフォン向けMMORPGには定番のオート戦闘やクエスト自動進行の機能を搭載した遊びやすい仕様。

 特筆すべき点として、ゲーム中いつでもクラスを切り替えられることが挙げられる。クラスはゲーム開始時に選んだもののほかに、ガチャや合成といった方法で獲得でき、入手したクラスであれば何回でも転職することができる。

 クラスごとに扱う武器が異なるのはもちろん、全く違う見た目のキャラクター(種族・性別)に変身するため、ひとりのキャラクターを長く使うことの多いMMORPGとしてはかなり特殊だといえる。

 この仕様によって、ガチャで手に入れたクラスを気軽に試すことができ、新鮮な気分でプレイできる。キャラクターのステータス振りによっては使用に向かないクラスも出てくるが、クラスの入手状況はアカウントで共通のため、違うキャラクターを新たに作成して育て直すことで利用することが可能。

 

プロモ施策:事前登録記念TVCMを放映

【リリース前プロモ施策の一部】

2018年11月8日 韓国NCSOFTの新作発表会で初出
2019年11月27日 韓国でサービス開始
2021年1月4日 日本版のティザーサイトを公開
2021年1月8日 事前登録開始&TVCM放映&RTキャンペーン開催
2021年2月25日 「リネージュ2M オンライン発表会」開催
2021年2月25日 公式サイトで「キャラクター事前作成」「血盟エントリー」「ミニゲーム」開催
2021年3月 公式YouTubeチャンネルで最新お役立ちガイド映像を公開
2021年3月17日 公式TwitterでカウントダウンRTキャンペーンを開始
2021年3月23日 事前ダウンロードを開始
2021年3月24日 正式サービス開始

 本作はリリース直後に無料ダウンロードランキング1位を達成している。これは「リネージュ」シリーズのもともとの認知度に加えて、2021年1月8日(リリース75日前)に事前登録開始と同時にTVCMを放映、さらに公式TwitterでRTキャンペーンを行ったことが効果を発揮したものと考えられる。

 事前登録者数は2月上旬に100万、下旬に150万、3月上旬で200万のペースで増加。2月25日からは、事前にアカウントを作成してキャラクターを作成できる「キャラクター事前作成」およびギルドに参加する「血盟エントリー」といったイベントが開催。正式サービス開始時に報酬が獲得できた。なお、報酬内容は下記の通り。

【事前登録キャンペーン達成報酬】

10万人達成:100,000アデナ
20万人達成:ソウルショット(刻印) 500個
30万人達成:サイハの息吹(刻印) 10個
40万人達成:戦闘のスクロール(刻印) 5個
50万人達成:武器強化スクロール(刻印) 1個
70万人達成:防具強化スクロール(刻印) 1個
100万人達成:クロニクル継承者のリング 1個 / 武器強化スクロール(刻印) 1個 / 防具強化スクロール(刻印) 1個

(以下、登録者増加により追加報酬として配布)

150万人達成:祝福の聖杯(刻印)30個 / ソウルショット(刻印)1,000個
200万人達成:祝福の聖杯(刻印)50個 / 武器強化スクロール(刻印)2個 / 防具強化スクロール(刻印)2個

≪事前登録達成報酬アイテム説明≫
アデナ:リネージュ2M世界の通貨。
ソウルショット(刻印):精霊の力が武器に宿り、一時的に敵に強力な攻撃を加えられるアイテム。
サイハの息吹(刻印):キャラが素早くなる一時加速アイテム。
戦闘のスクロール(刻印):キャラが強くなる一時強化アイテム。
武器強化スクロール(刻印):武器を永続的に強化するアイテム。
防具強化スクロール(刻印):防具を永続的に強化するアイテム。
祝福の聖杯(刻印):経験値とアデナの獲得量が一時的に増加する。
クロニクル継承者のリング:最大HPや防御力などがあがる特別なリング。

 また、「ミニゲーム」でポイントをためるとサービス開始後に使用できるアイテムと交換可能だった。これらの施策は事前登録者に対してリリース後のプレイを促す施策として機能したとみられる。

 認知度向上には、事前登録と同時に放映されたTVCMの効果が大きいと考えられる。

▲事前登録記念TVCM

 

 そして、事前登録開始記念として1月8日~リリース日の期間中、iPhone 12 Pro(10名)が当たるRTキャンペーンを実施。

 

 サービス開始直前にはGoogle Pixel 5(各1名)、Amazonギフト券3,000円分(各25名)といったプレゼントを毎日用意するRTキャンペーンで後押ししている。

 

 以上のように、リリース前からキャンペーンを多く打ち出し、認知度向上に努めた結果、初日の無料ダウンロードランキング1位獲得に至ったといえる。

 

ゲーム内施策:セールスランキングで2度のスパイクを形成

 売上のランキング推移を見ると、スタートダッシュの施策に加え、2度のタイミングで大きく伸びていることがうかがえる。

 まず、本作のマネタイズは主にダイヤの販売となる。ダイヤはガチャ(ゲーム内では召喚と表記)や装備、アイテムなどの購入に使用する。

【ダイヤのラインナップ】

130ダイヤ(370円)<単価:約2.85円/割引率0.0%>
440ダイヤ(1,220円)<単価:約2.80円/割引率1.8%>
1240ダイヤ(3,420円)<単価:約2.76円/割引率3.2%>
2040ダイヤ(5,620円)<単価:約2.75円/割引率3.5%>
4000ダイヤ(11,000円)<単価2.75円/割引率3.5%>

 上記のほか、ダイヤとアイテムがセットになったパッケージについては、直接課金する仕様となっている。

  

【リリース後のゲーム内施策】

■期間限定パック「スターター パッケージ」
■期間限定パック「マスター スキル パッケージ」
■期間限定パック「レアのプレゼント パッケージ」
■期間限定パック「レアの光り輝く冒険箱」
※いずれも3月24日~終了日未定

 リリース直後から、さまざまなセールを実施。いずれも一定量のダイヤに加え、スタートダッシュに役立つアイテムがセットになって販売されている。「レアの光り輝く冒険箱」(毎週4回まで購入できる)に関しては、通常販売の2040ダイヤ(5,620円)と同じ値段でさまざまなアイテムと交換できるアイテムが付いてくるためお得感が高く、多くのプレイヤーが購入していると考えられる。

 

 また、1回のみ購入できる「レアのプレゼント パッケージ」や各種「スターター パッケージ」は、スタートダッシュを図るユーザーにとって魅力的なパッケージだ。例えば、「レアのプレゼント パッケージ」は1240ダイヤ(3,420円)が据え置きのままガチャチケット<高級クラス獲得券(刻印)x6と高級アガシオン獲得券(刻印)x6>が獲得できるため、普通にダイヤを買うよりもお得。

▲クリックで拡大

 

■新クラス「ブレムノン ナイト」と「セラフィム ナイト」が登場
■期間限定パック「成長のブレムノン クラス パッケージ」
※4月7日~ 4月14日

 新登場した「ブレムノン ナイト」と「セラフィム ナイト」は全ての武器種をサブ武器として装着することができる特徴を持つクラス。合成やショップ内でダイヤを必要とする「上級クラス召喚」などからは獲得することができないが、ダイヤで購入できる「成長のブレムノン ナイト クラス獲得券」や、ショップ内の「レアの聖所」で販売中のアデナを必要とする「一般級クラス召喚」「上級クラス召喚」から低確率で獲得することができる。

 

 また、1500ダイヤで購入できる「成長のブレムノン クラス パッケージ」は「成長のブレムノン ナイト クラス獲得券」とキャラクターの成長に役立つアイテムがセットになっている。

 

 さらに、初の新クラス追加となるこのタイミングで、俳優の金城武氏を起用したTVCMを放映開始。

 無料ダウンロードランキングも同時に伸びていることから、TVCMで新規も増え、「成長のブレムノン クラス パッケージ」を買うダイヤを課金したユーザーのほかに、前述の「レアのプレゼント パッケージ」のようなスタートダッシュの際にお得なパッケージを購入したユーザーが増えたものと考えられる。

 結果、初動が落ち着いてきた2週間後でのスパイク形成となった。

 

■期間限定パック「成長の加護パッケージ」
■期間限定パック「ドラゴンの翼パッケージ」
※4月14日~4月21日

 2度目のスパイクは、その1週間後のタイミングとなった。「成長の加護パッケージ」は、例によって2040ダイヤ(5,620円)の価格はそのままに、「アインハザードの加護」等がセットになっている。

 「アインハザードの加護」を使用すると、使用したキャラクターに専用バフ「アインハザードの加護」が30日間付与され、アインハザードの祝福が200以下の状態であっても、アインハザードの祝福を1~200保持している状態と同等の効果が発生するようになる。

 「アインハザードの祝福」には、モンスターを倒した際に獲得する経験値とアデナの量を増加させる効果があるため、「アインハザードの加護」を利用することでキャラクターの育成効率を上げることができる。

 一定期間育成効率を高く保てるため、キャラクターの育成に力を入れているユーザーに訴求するパッケージ内容となっている。

 


 

 ゲーム内の施策のほかに、著名人を起用したTVCMや公式Youtubeでの「リネ通M」配信など、プロモーション施策を多く打ち出している『リネージュ2M』。リリース1ヶ月に差し掛かるタイミングで、セールスランキングはTOP100圏内を維持し続けている。

 なお、本作は2017年8月にネットマーブルからリリースされた『リネージュ2 レボリューション(リネレボ)』とは異なる作品だ。『リネレボ』は、『リネージュ2』の世界観を題材に、スマホに最適化した画面UIやシステムを取り入れている一方で、『リネージュ2M』は原作にあたるPC版の内容を遜色なく遊べる、いわゆる移植作品という位置づけだ。

 そういう意味では、『リネージュ2M』はPC版を長く遊んでいた純粋なシリーズファンからの支持があったといえる。ただ『リネレボ』の功績は、スマートフォンでMMORPGを遊べるまでにゲーム仕様を最適化したことに加えて、MMORPGというニッチなジャンルを大衆に導いたことが挙げられる。『リネレボ』きっかけにMMORPGの魅力や、「リネージュ」シリーズの認知度向上につながったと考えれば、きちんとした土壌が出来上がっていたのだろう(無論、前作『リネージュM』のスマッシュヒットも要因)。

 15年以上も前のMMORPG『リネージュ2』をベースとしながらもスマートフォン向けに最適化された印象を受ける本作。人気の根強い「リネージュ」シリーズ最新作が打ち出す今後の運用施策に注目だ。

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モバイルゲームアプリを専門とする分析会社。モバイルゲーム内運用に関する調査・分析を行うリサーチ事業とコンサルティング事業を展開して、「LIVEOPSIS(ライブオプシス)」というサービス名称で各種ソリューションを提供。サービスに関するお問い合わせは info@spicemart.jp まで。

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