じわじわと人気拡大中の『パズル&サバイバル』、支持されるワケとは

 スマートフォン向けアプリゲームの日々の運用とその効果を調査し、ゲーム関連企業へ様々データを提供するSp!cemart(スパイスマート)。世界各国のゲーム事業者に利用されている同社のサービス「LIVEOPSIS (ライブオプシス)」では、ランキング推移とゲーム内施策を一覧で閲覧できる「イベントカレンダー」やTwitterトレンド情報、毎月発行の調査レポートなどが提供されている。
 
 本稿では、「LIVEOPSIS」で確認できるランキング上位タイトルのアプリから、日本で爆発的なヒットとはいかないが、2020年12月にリリースして半年経ったセールスランキングにおいてTOP100圏内に位置している『Puzzles & Survival~パズル&サバイバル』の運用施策を分析し、紹介する。

 

 

ゾンビ×ストラテジー×マッチ3=パズサバ

リリース日 : 2020年12月15日
配信:37GAMES

 『パズル&サバイバル』がじわりじわりとアプリストアのセールスランキングで順位を上げている。昨年末にリリースし、気づけばApp StoreのセールスランキングTOP30圏内を維持するまでのスマッシュヒットを記録していた。『パズル&ドラゴンズ』を彷彿とさせるタイトルであり、“パズサバ”の愛称でその人気が拡大している。

 本稿では、『パズル&サバイバル』ヒットの背景について、ゲーム内外の施策にフォーカスをあてて紐解いていきたいが、まずは本作を構成する3つのキーワード「ストラテジー」「ゾンビ」「マッチ3」について、それぞれ言及しておく。3つのキーワードは、一見アンバランスな要素にも思えるが、本作では上手く融合させながら独創性の高いゲームアプリを実現している。

 

ストラテジー

 国内ゲームアプリ市場において「ストラテジー」(RTS)は、コアなゲームユーザーが好む傾向がある。しかし、PvP/GvG要素が色濃い競争力をベースにしたゲーム仕様、ユーザー年齢層の高さなど、アクティブユーザー数は決して多くはないものの、ARPU(ユーザー1人あたりの平均売上金額)の高さが特徴だ。

 国内産のストラテジーゲームは『三國志 覇道』が台頭しているが、セールスランキング上位に位置するタイトルはまだまだ海外ディベロッパーのタイトルがほとんど。実際に本作も中国Eyugameが開発し、37GAMES傘下のG-MEIが提供する海外発のタイトルとなる。

 現在、セールスランキング上位に位置するストラテジーゲームには、先述の『三國志 覇道』(提供:コーエーテクモゲームス)に加えて『マフィア・シティ-極道風雲』(提供:YOTTA GAMES)や『Rise of Kingdoms ―万国覚醒―』(提供:LILITH TECHNOLOGY)、そして『Age of Z』(提供:Camel Games)といったタイトルが挙げられる。

 どのタイトルも国内における認知度は低いが、明らかにセールスランキングの上位をストラテジーゲームが占有率を高めている。過去、スマートフォン向けMMORPGが大衆向けに支持された経緯を考えれば、現在はストラテジーというジャンルの土壌が形成されはじめ、そのタイミングで本作がリリースされたことは後押しするきっかけにもなったことだろう。

 

ゾンビ

 ゲーム内の設定では、未来の世紀末に突然ゾンビウイルスが世界を蔓延し、生き残った人がほとんどいない世界が舞台となる。プレイヤーは避難所を設立し、英雄(キャラ)を集め、世界の存亡をかけてゾンビと戦う指揮官となって戦う。

 「ゾンビ」を題材にしたゲームもまた、人気を集める要素のひとつだ。たとえば、ランキング上位の他のタイトルには終末オープンワールドサバイバルゲーム『ライフアフター』(提供:Hong Kong Netease)や、ゾンビが登場するモードがある『Call of Duty®: Mobile』(提供:Activision Publishing)など、人気のゾンビゲームが市場に存在する。

 さらに先述のゾンビストラテジーMMO『Age of Z』はゾンビ×ストラテジーという点で類似性があり、本作の人気を分析するうえでもヒットの前例としてひとつの参考になる。

 ストラテジーといえば、その多くが資源を略奪するシステムがあることから、いわゆる“三國志系”のような歴史を題材にしたタイトルが多い。これは、資源を奪うという仕様上、三國志系のように争いの絶えない状況が設定としてマッチすることも一因にあると考えられる。

 一方で、本作や『Age of Z』は、共にゾンビが跋扈するポストアポカリプスの世界観で、完全に無法な状況である点がゲームシステムと親和性の高いところが挙げられる。三國志系と比べてまだ数の少ないゾンビ×ストラテジーという組み合わせは、新たな定番となる可能性があるのかもしれない。

 また、ポストアポカリプスの世界観だが、ゲームとしての文脈は他のストラテジーと同様なので、新鮮な気分ながらも同ジャンルをプレイしたことのあるユーザーであればすんなり遊ぶことができる。

▲施設を建て、強化して避難所を発展させていく。システムは建国を目的とする王道ストラテジーとなっている。

 逆にいえばストラテジーの要素に関しては他タイトルと「やることが変わらない」とも評せるが、『Age of Z』がタワーディフェンスを用意したように、本作にも独自の要素が他に存在する。それが本作のプロモーションでも全面に推し出されている「3マッチ」のパズルが楽しめる「探索」パートだ。

 

3マッチ
▲探索では、英雄を編成してパーティを作り、襲い来るゾンビと戦うステージクリア型のパズルゲームがプレイできる。

 パズルでは、ブロック(※)を消した列に対して、ブロックの属性(色)に対応した英雄が攻撃していく。消したブロックの列で攻撃場所が決まるというのは独特なシステム。仕様上、端の敵が残りやすくなるため、英雄の攻撃スキルを優先的に使うなど工夫が求められる。

※ゲーム内ではチェスと表記。ストア内のアプリ紹介画像ではジェムと表記されている。

 パズル自体はシンプルな3マッチパズルで、連鎖の技術介入度は低め。4マッチで上下のブロックを消すグレネード、5マッチで同じ色を消す閃光弾を出すことができる。

 なお、この手のパズルゲームで定番の属性相性も用意されている。英雄には5種類の属性が存在し、3すくみ(冷静・慎重・勇敢)と相互弱点(狂乱・衝動)の関係にある。

▲属性は“性格”と位置付けられ、全ての英雄とBOSSに設定されている。

 ただし、相性以上に英雄のレア度が重要な場合もある。公式Twitterでは、本作の攻略に役立つヒントを発信しているが、そこで「属性相性も大事だが、時にはレア度の高い英雄だけでパーティを組んでみよう」というアドバイスが投稿されたこともあった。

▲高レア英雄の入手を促すアドバイス。

 探索パート(3マッチ)の位置づけとして、メインコンテンツというよりはストラテジーパートの合間に遊ぶのにちょうど良いといった形。「隙間時間にちょっとだけやろう」と起動の動機にもなりうる。

 そして、ゾンビのいる世界観を生かして、カジュアルにパズルゲームがプレイできるのは本作ならでは。ステージをクリアすると、ブーストアイテム等が手に入るので、避難所の建設がよりスムーズに進められる。また、ステージが進むにつれて難度も高くなるため、ゆくゆくは英雄を揃えてから攻略する必要が出てくる。

 ゲームとしてはそれぞれの要素に特別なオリジナリティがあるわけではないが、過去に同様のジャンルを経験していれば迷わないようになっている(チュートリアルは少なめだが)。このように本作では、人気の要素を随所に詰め込んだタイトルとなる。

 一方で、他のストラテジーゲーム同様、ギルドに所属しないと新規ユーザーが狩られやすいという懸念点も存在する。Pay to Winの傾向が強いので、きちんと長く遊ぶためには、ある程度の課金が必要になると思われる。大きなギルドに所属すれば狩り問題は少なくなるので、他ユーザーとのコミュニケーション・協力が重要なのも他のストラテジー同様だ。

 

プロモ施策:フォロー&RTキャンペーンがメイン

 ここからは国内リリースまでの主な流れや、キャンペーン施策について言及していく。

【リリースまでの主な流れ】

2020年8月12日 欧州にてサービス開始
2020年11月13日 事前登録記念RTキャンペーン
2020年12月15日 国内でサービス開始

 リリースの1ヵ月前に事前登録キャンペーンを実施。事前登録したユーザーは、最大5,000円相当のサバイバルパックを手に入れることが可能で、日本限定の都市スキンと最大40連ガチャが可能な英雄召喚券が含まれていた。

▲事前登録特典「日本限定都市スキン」の外観。

●事前登録特典

・日本専用都市スキン
・ダイヤ×888
・英雄召喚券×20
・ブースト15分間×10
・選択型資源補給x2

 

●Twitterフォロー人数達成特典

1000人突破: ブースト5分間×10
3000人突破: 英雄召喚券×10
5000人突破: ブースト10分間×10、防衛シールド(8時間)×1
7000人突破:200ダイヤ、R1マニュアル×20
10000人突破:300ダイヤ、R2マニュアル×10、血清×3000
※4月1日にフォロワー1万人を突破し配布済み。

 

●Twitter予約人数突破特典

・ダイヤ×500
・ブースト5分間×15
・ブースト10分間×5
・進軍ブースト50%×2
・リコール×2
・R1マニュアル×20
・R2マニュアル×10

 

●Google play/iOS事前予約パック
・ダイヤ×400
・VIP英雄召喚券×10
・ブースト30分間×5

 

<アイテムの解説>
R1マニュアル:英雄(キャラ)の進化に必要なアイテム。
R2マニュアル:英雄(キャラ)の進化に必要なアイテム。
血清:レベルアップに必要な経験値アイテム。

 

RTキャンペーン

【事前登録記念RTイベント】

 11月13日からは、事前登録開始を記念したフォロー&RTキャンペーンを実施。iPhone12(2名)と合計100,000円分のAmazonギフト券がプレゼントとなった。

 また、事前登録者数が一定数を突破する度にAmazonギフト券2,000円分(5名)が当たるRTキャンペーンを実施。継続的にTwitter上でフォロー&RTキャンペーンを行った。なお、リリース3日前からはカウントダウン施策としてブーストアイテムなどをセットにしたゲームパックが毎日20名にあたるRTキャンペーンも実施していた。

 

【事前予約人数10万突破!記念RTキャンペーン】

【事前予約人数15万突破!記念RTキャンペーン】

【事前予約人数20万突破!記念RTキャンペーン】

 事前プロモーションとしては露出が少なめだったため、すでに配信されていた欧米では大人気ゲームとなっていたものの、初動はあまり大きくなかった。

 

主なマネタイズを調査

 本作の主なマネタイズは、ダイヤの販売となる。ダイヤは資源やブーストアイテム、軍備、リクルートコイン(ガチャ用アイテム)、VIPptなどに使用する。だが、基本的にダイヤ単体ではなく、抱き合わせの課金パックの方がお得なので、ダイヤのみで購入することは多くないと思われる。

【ダイヤのラインナップ】

200ダイヤ(120円)<単価:約0.6円/割引率0.0%>
1100ダイヤ(610円)<単価:約0.55円/割引率8.3%>
2400ダイヤ(1,220円)<単価:約0.51円/割引率15.0%>
3800ダイヤ(1,840円)<単価:約0.48円/割引率20.0%>
5200ダイヤ(2,440円)<単価:約0.46円/割引率23.3%>
8000ダイヤ(3,680円)<単価:0.46円/割引率23.3%>
11000ダイヤ(4,900円)<単価:約0.45円/割引率25.0%>
14000ダイヤ(6,100円)<単価:約0.44円/割引率26.7%>
30000ダイヤ(12,000円)<単価:0.4円/割引率33.3%>

 ガチャはリクルートコインが必要で、コインによって★2~3が排出される「一般募集」、★2~4が排出される「中級募集」、★3~5が排出される「上級募集」の3種類がある。各種ガチャはリクルートコインのほか、一定時間経つと無料で引くことができる。「一般募集」は1時間、「中級募集」は24時間、「上級募集」48時間ごとに1回無料となる。

 最高レアリティの★5英雄を手に入れるには「上級募集」を行う必要があるが、このガチャのリクルートコインはダイヤで交換することが不可能。なお、「一般募集」は1回150ダイヤ、「中級募集」は1回500ダイヤで交換できる。

 この仕様のため、そもそも★5英雄を手に入れようと思った場合は、課金なしでは入手機会がかなり限られる。

 課金する場合、★5英雄がセットになったパッケージがセールで610円から購入可能と、比較的安価な設定となっている。元値が23,790円と表示されているので額面通りに受け取れば、割引率は97.4%となる。

 そのほか、ダイヤ200個(120円)の価格据え置きで複数アイテムがセットになったパックが多数販売されており、課金のハードルは低めになっている。

 ゲームを始めてすぐのユーザーがスタートダッシュをする場合や、攻略目的で★5キャラクターが欲しいユーザーに訴求していると考えられる。

 

リリース後は広告出稿が多め

 しかし、リリース後の2021年1月11日に、AppStoreで「SLG無料ダウンロードランキング」第1位、およびGooglePlayで「RPG無料ダウンロードランキング」第1位を獲得している。

 調べてみると、本作はリリース後に積極的に広告出稿を行っていた。ストア内、Twitter、YouTubeといった多くのユーザーが閲覧する場所で目にする機会を増やしたことで、アプリのダウンロードにつながったと推測される。

 なお、本作の広告クリエイティブは近年のゲームアプリに増えてきた、実際のゲーム内ではそのようなシーンがない、もしくは出来ないようなことを見せるものが多くなっている。本作の場合、内容は世界観と著しく乖離しているわけではなかったが、「広告を見てインストールしたら想像と違った」というユーザーの感情が、その後プラスに作用するのかマイナスに作用するのか、定かではない。

▲公式サイトでも確認できるトレーラーだが、ゲーム内ではこういったシーンがないほか、随所に出てくるパズルの演出も、ゲームとは少し認識が違う。

 参考までに、公式が発表しているユーザー数については以下の通り。2021年2月時点のデータで大まかにだが、国内で約60万人、世界で約1,060万人という規模感となる。

 ここまで、『パズル&サバイバル』について紹介したが、世界的に人気の「ゾンビ」や「ストラテジー」というジャンルは、今後さらに注目を浴びる可能性がある。ゾンビ、もしくはポストアポカリプスといえば、有名なコラボ先が種々考えられるので、コラボ施策に向いたジャンルともいえる。本作では以前コラボアンケートを実施したこともあるので、運用施策についてはぜひチェックしたい。

 

 

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モバイルゲームアプリを専門とする分析会社。モバイルゲーム内運用に関する調査・分析を行うリサーチ事業とコンサルティング事業を展開して、「LIVEOPSIS(ライブオプシス)」というサービス名称で各種ソリューションを提供。サービスに関するお問い合わせは info@spicemart.jp まで。

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