動画広告で話題の『エバーテイル』、ヒットの経緯を辿ってみた

 スマートフォン向けアプリゲームの日々の運用とその効果を調査し、ゲーム関連企業へ様々データを提供するSp!cemart(スパイスマート)。世界各国のゲーム事業者に利用されている同社のサービス「LIVEOPSIS (ライブオプシス)」では、ランキング推移とゲーム内施策を一覧で閲覧できる「イベントカレンダー」やTwitterトレンド情報、毎月発行の調査レポートなどが提供されている。
 
 本稿では、「LIVEOPSIS」で確認できるランキング上位タイトルのアプリから、リリース後2年が経ってなおセールスランキングTOP30圏内に位置する『エバーテイル』の運用施策を分析し、紹介する。

 

戦略性に富んだバトルシステムが高く評価される

リリース日:2019年3月23日
提供:ZigZaGame

 『エバーテイル』は、2019年3月にリリースされたスマートフォン向けRPG。最近では、広告の内容とゲーム内容が異なるタイトルとして、各種SNSやカジュアルゲームアプリ、動画配信サイトなどで見かけたことのある方も多いのではないだろうか。

 実は、もともと本作はApp Storeで120円、Google Playで99円で購入できた有料アプリだった(2021年6月現在も無料)。ゲーム内ではガチャなど、マネタイズ要素もあるので、有料アプリではあるが、認識は運用型の基本無料アプリ(Free to Play)とあまり変わらない。なお、定期的に無料セールを行っている。

 本作の開発・運営を担当するのは、ZigZaGame(ジグザゲーム)。 2012年に『ドラゴンアイランドブルー』、2015年に『ネオモンスターズ』をリリースし世界的にヒットさせた実績を持つ。いずれもモンスターの育成を主題に置いたゲームで、戦略性の高いゲームシステムが特徴だった。

 最新作の『エバーテイル』では、目を引く美少女たちが登場しつつも、モンスター育成要素はエッセンスとして残され、戦略性の高いバトルが楽しめる作品となっている。まずはゲームの概要をおさらいしていこう。

 ゲーム開始直後にプレイできる第1幕は、実際にキャラクターをフィールドで動かしながら進める方式(オフラインストーリー)で、第2幕以降はスマートフォン向けアプリではおなじみのスタミナ制を採用している。

 ゲーム内容を確認すると、本作は「モンスター育成RPG」を謳っており、モンスターの捕獲、強化などの要素が楽しめる。草むらでモンスターに遭遇する点や、目の前を通過するとバトルを仕掛けてくるキャラクターの存在など、どこか「ポケットモンスター」シリーズを彷彿とさせるところがある。

 しかし、システムは全くの別物で、8体のモンスターを編成し、相手の戦術にあわせてコンボスキルを発動させる戦略性の高いチームバトルや、過去作から進化したグラフィックと共に描かれる王道ストーリーが多くのプレイヤーから好評を博している。

 実際にプレイすると、特に戦闘システムが優れていることがわかる。バトルはコマンド形式で、TU(タイムユニット)システムやスピリット、状態異常を利用したコンボなど戦略的な要素が多く、シンプルながらも奥の深さが見受けられる。

 また、なかなか倒せない強敵に関しても、仲間キャラの配置やスキルの発動タイミングなどを試行錯誤することで撃破できることもあり、往年のコンシューマRPGを彷彿とさせる手に汗握る緊張感と、自身の戦略が奏功したときの達成感を味わうことができる。

▲敵味方の行動順を決めるTUのシステムは、選択した行動によって次の行動までの待ち時間が決まるというもの。敵味方の行動順を考えつつ、どんなスキルで攻撃するかの作戦を組み立てていく。
▲ストーリーに関しても、剣と魔法の中世ファンタジー的な世界観で、王道ストーリーが展開される。

 本作ではモンスターを捕獲できるのがひとつの特徴だが、実は第1幕(オフラインストーリー)までしか利用できない。また、フィールドを動き回れるという、コンシューマライクのRPGに関しても、第2幕以降はマス目を移動していく従来のスマホ向けRPGに変更される。

 「モンスター育成RPG」を謳っていただけに、肩を落とすユーザーも多いことだろう。しかし、第2幕以降も戦略性の高いバトルシステムは健在で、ユーザーもそこに魅了されてゲームを続けていることが考えられる。第2幕以降もメインストーリーは存在し、さらには期間限定イベントもゲームに華を添えてくれており、ユーザーの継続率にも寄与していることだろう。

 また、ガチャからはかわいいイラストのキャラクターが多数登場。美麗イラストで描かれるキャラクターもまた、本作が人気の理由のひとつと考えられる。

 

セールスランキング上位を1ヵ月間維持

 現在、App StoreのセールスランキングTOP30圏内を長期間維持していることを考えるに、コアユーザーからの支持を集めていることが要因だろう。直近1ヵ月のApp Storeのセールスランキングを見てもらうとわかるように、2021年5月は一度もTOP50から落ちていない。

LIVEOPSISイベントカレンダーより(画像クリックで拡大)

 ゲーム内施策は、とくだん奇をてらっていることは行っておらず、約1ヵ月間の期間限定イベントを軸に、主に新キャラ・ピックアップガチャを段階的に実施、お得なパック商品や有償アイテムのセールを複数回実施しているだけ。

 なお、本作のマネタイズは、ソウルストーン(有償石)の販売となる。ソウルストーンは、主にガチャで使用する。ガチャからは期間限定を含む強力なキャラクターを入手できるため、ほかのFree to Playアプリと同様に主な課金先となっている。

【ソウルストーンのラインナップ】

25個(120円)<単価: 4.80円/割引率0.0%>
125個(490円)<単価:約3.92円/割引率18.3%>
450個(1,480円)<単価:約3.29円/割引率31.5%>
1025個(2,940円)<単価:約2.87円/割引率40.2%>
1900個(4,900円)<単価:約2.58円/割引率46.2%>
4175個(10,000円)<単価:約2.40円/割引率50.0%>

 4175個(10,000円)は25個(120円)と比べて約50%もお得なため、課金ユーザーは高額商品を購入している可能性が高い。また、初回のみボーナスでソウルストーンが2倍となっている。そのほか、お得なパッケージも販売。

【パッケージの一部】

■週間ギフト「ハッピーギフト」(120円)
 ・即時でもらえる25個(有償)のソウルストーン
 ・7日間毎日40個のソウルストーンと時の石(2時間)※が1個もらえる

■週間ギフト「スピードギフト」(370円)
 ・即時でもらえる100個(有償)のソウルストーン
 ・7日間毎日135個のソウルストーンと時の石(2時間)※が2個もらえる>

■月間ギフト(980円)
 ・プレイヤー経験値15%UP
 ・毎日の高速掃討(スキップ)2時間が+1回、探索+1回

■限定セール「ブーストパック」(1,840円)
 ・ソウルストーン(無償)1250
 ・ソウルストーン(有償)280個
 ・ブーストジェム(キャラ)※100個>

※時の石……いわゆるスキップチケット。
 ブーストジェム(キャラ)……ステータス上昇アイテム。

 上記のパッケージもお得感があり、人気の課金アイテムとなっている。特に「ハッピーギフト」などの週間ギフトは、120円で305個、370円で1045個のソウルストーンが獲得できるため魅力的。

 ガチャは1回100個(480円相当 – 単価4.80円で計算)、10連で1000個(4,800円相当)のソウルストーンが必要。キャラクターと武器が同じガチャから排出されるタイプで、キャラクターはSSR(1%)>SR(3%)>R(40%)、武器はSSR(4%)>SR(12%)>R(40%)の確率となる。

▲ガチャ画面

 基本的にひとつのガチャにつき目玉となるSSRピックアップキャラクターは1体で、そのため出現確率は0.7%。周年記念ガチャなど、SSRキャラクター確定のタイミングでは、ソウルストーン(有償)1000個が必要となる。

 第2幕以降は、メインストーリーの進行をはじめ、ほかのユーザーと競い合うコンテンツも導入され、レアリティの高いキャラ及び武器が必要な場面が増えてくる。また、同名のキャラ・武器によるいわゆる“限界突破系”のシステムも存在し、ほかのタイトル同様に本作におけるガチャの役割もそう変わらない。

 『エバーテイル』のバトルシステムが高く評価しているのであれば、そのバトルをよりスムーズかつ爽快感を味わうために、ガチャで強いキャラと武器を求めるのは自然だ。

 

個性が色濃く出たTwitterの中の人

 『エバーテイル』本編について軽く触れたが、ここからはゲーム内外の運用施策について確認していきたい。事前施策としては大きな動きがなかったため、リリース後の動きを中心におさらいしていく。

【トピック】
2019年3月23日 有料アプリとしてサービス開始
2019年3月25日 10万ダウンロード突破
2019年3月27日 米国App Storeのゲームトップページでフィーチャー
2019年10月4日 無料セールを実施
         App StoreのBest of 2019 有料ゲームで5位を獲得
2020年6月4日 累計ダウンロード数が500万を突破
2021年4月22日 累計ダウンロード数が900万を突破

 本作はリリース後、世界95カ国で有料ゲームランキングTOP3を獲得(公式Twitterソース)。また、海外ユーザーが7割を占めていることが公式Twitterで明かされた(2019年11月時点)。そのほかMAUについて触れるなど、興味深い情報を発信している。

 上記から察するに、公式Twitterアカウントはいわゆる“中の人”の個性が色濃く出た形で運用されている。個人へのリプライも行うフレンドリーなスタイルだ。参考までに、フォロワー数は約15万人となっている(調査時点)。

 2019年3月のリリース直後は、本作の戦略的なバトルシステムを各種ゲームメディアが発信。ユーザーからの評判も良く、120円の有料アプリとしては驚異のスピードでダウンロード数が伸びていた。下部は、実際にアプリストア内で掲載されているスクリーンショットだが、ゲームメディアが絶賛していることを全面に押し出している。

 

広告クリエイティブの変遷とこれから

 『エバーテイル』の知名度を著しく高めたのは、各サービスで頻繁に表示される本作の広告が大きく寄与していることは間違いない。クリエイティブの内容は海外産のアプリに多く見られる“実際のゲーム内ではそのようなシーンがない、もしくは出来ないようなことを見せるもの”が主になっている。

 正確な時期はあいまいだが、2019年後期の時点で、すでに「ポケットモンスター」シリーズを強く意識した、あるいは想起させることが目的の広告が出稿されるようになっている。結果、モンスター育成RPGと聞いて「ポケモン」のようなゲームを想像してインストールしたユーザーが、期待していた内容と違うとプレイして初めて知ることになる。

 2020年6月頃には、ゲーム内の美麗なイラストを活用したクリエイティブのほかに、やはり「ポケモン」風のドットを使った広告や、2D格闘ゲーム風のプレイ画面を表示した広告などが確認された。

 なかには「ガチャは渋いけど……超楽しい!」といった文言の広告もあり、多種多様なWEB広告が出稿。

 そして、2021年3月から4月現在は、ホラー風のクリエイティブが大量に制作され、WEB上で展開されている。膨大な種類のホラー風広告は、ゲームの内容とは一切関係ないものの、先が気になるストーリー仕立ての内容となっている。広告とゲーム内容との乖離は進むばかりだったが、日々新たなストーリーが広告上で進行していく様は、さながらひとつのコンテンツのようにも捉えることができる。

 なお、モチーフにしているのは、「ポケモン」シリーズをはじめ、カルト的な人気を誇るフリーゲーム『ゆめにっき』、世界的大ヒットを記録した『UNDERTALE』などが挙げられるだろう。

 暴力的な表現を含む広告なため不快に感じるユーザーも多いと思われるが、『エバーテイル』という名前の認知度が高まっているのは事実。実際に遊んでみれば、本作のゲームとしての面白さが刺さり、課金につながることもあると考えられる。

 なお、公式Twitterでは以下のような発言があり、現在展開されているクリエイティブへの意欲をのぞかせている。

 

 

© ZigZaGame Inc.

Spicemarthttps://liveopsis.com/
モバイルゲームアプリを専門とする分析会社。モバイルゲーム内運用に関する調査・分析を行うリサーチ事業とコンサルティング事業を展開して、「LIVEOPSIS(ライブオプシス)」というサービス名称で各種ソリューションを提供。サービスに関するお問い合わせは info@spicemart.jp まで。

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