デジタルを活用した「オンラインリアル脱出ゲーム」が1万人超の同時参加者を記録した理由とは【CEDEC2021】

 2021年8月24日(火)から26日(木)までの3日間、日本最大のコンピュータエンターテインメント開発者向けカンファレンス「CEDEC2021」(CEDEC=セデック:Computer  Entertainment Developers Conference 主催:一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会、略称CESA)が開催。昨年に引き続き、新型コロナウィルス感染拡大を防止する観点から本年もオンラインで開催された。

 本稿では、8月24日(火)に実施された講演「オンラインリアル脱出ゲームの作り方」の模様をレポートしていく。

【講演者】

加藤 隆生
「リアル脱出ゲーム」の企画制作運営を行うSCRAPの代表取締役。
イベントプロデュースを行うかたわら、「ロボピッチャー」というバンド活動も行っている。

 

 

「リアル脱出ゲーム」とデジタルの親和性とは

 マンションや学校、野球場など様々な舞台からの脱出を目的に、エリア内に仕掛けられた謎を解いていく体験型イベント「リアル脱出ゲーム」。

 ゲームの企画・運営を行うSCRAPは、オリジナルイベントだけではなく、アニメやマンガ、ゲーム作品とのコラボイベントを積極的に行っており、謎解きファンを中心に大きな注目を集めていた。

 その人気は長く続くものと思われていたが、2020年初頭、新型コロナウィルスの影響によってリアルイベントは自粛せざる得なくなり、SCRAPの興行は大きなダメージを受けてしまう。

 イベントが思うように開催できず会社が危機的状況に陥りつつあった中で、加藤氏は「デジタル技術を活用した脱出ゲーム“オンラインリアル脱出ゲーム”の製作を決断した」と、経緯について説明する。

 オンラインリアル脱出ゲームを製作するきっかけとなったのは、SCRAPの店舗スタッフが、スマートフォンを利用したオンラインゲームを開催したことにあるという。

 その内容は、参加者がスマートフォンを使ってスタッフに指示を与えながら謎を解いていくといった、脱出ゲームの疑似体験ができるというもの。この仕掛けがユーザーにとって好評だったことから、SCRAPは本格的にデジタルを活用した脱出ゲームの公演に乗り出していくことになったそうだ。

 2021年5月1日、前述したような、スタッフが参加者の“ゲームのコントローラー”の役割を担う作品をさらにアップデートさせた『エイリアン研究所からの脱出』をスタート。

 同日には、2つのキットを用いて謎を解き明かしていく2人専用ゲーム『ある2つの通信基地からの脱出』をリリース。プレイヤー2人で声だけの通信、映像だけの通信を使い分けながら謎を解いていく内容で、お笑い芸人・サバンナの高橋茂雄さんが共同制作したことでも話題を呼んでいた。

 2つの作品の売り上げが、普段のリアルイベントの売上とほとんど変わらなかったことから、加藤氏はオンラインでの謎解きゲームの実施に手ごたえを感じたという。当時は「オンライン飲み会」という言葉が出始めた頃で、多くのプレイヤーから「(コロナ禍でも)友人と話しながら楽しむことができた」という感謝のメッセージが多く寄せられたそうだ。

 6月25日には、9人の村人のうち誰が人狼なのか、Web会議サービス「ZOOM」を用いて話し合いを行う『封鎖された人狼村からの脱出』をリリース。コロナの影響でテレワークやWEB会議が広く普及した中ゲームにZOOMを取り入れることは、物語にリアリティを与えることに繋がったと加藤氏は振り返る。

 

物語への”没入感”が上がる設定とデジタル端末の存在

 リアル脱出ゲームのデジタル化に成功した要因について加藤氏は、「リアル(現実)の代わりに、PC(もしくはスマートフォンなどのデジタル端末)を扱う意味を持たせることで、物語に対する没入感が上がった」からだとしている。

 たとえば、2021年8月13日にスタートした『STEINS;GATE』(シュタインズ・ゲート)とのコラボ作品『繰り返す死の運命からの脱出』では、ヒロインの椎名まゆりと牧瀬紅莉栖それぞれと通信を行う設定から、プレイヤーがPCを扱う意味を持たせている。

 2021年1月16日に開催した『終わらない公開捜査からの脱出』は、プレイヤーは捜査員の一員であるという設定が与えられており、これもPCとの親和性が高い。没入感の高いストーリーが功を奏し、『終わらない公開捜査からの脱出』は同時参加者が1万人を超えるほどの大盛況となった。

 加藤氏は最後に、「今後はリアルタイムのWeb謎解きの規模を大きくし、10万人が同時に、世界中で謎解きができるようになれば、もっと色んなことができるような気がします。よりデジタルのノウハウを持った人たちと、共同で開発していきたいです」と話し、セッションの締めとした。

 

ユーザー導線で重要視されるのは「ゲームタイトル」

 講演の最後には、加藤氏が質問に応答する時間が設けられており、リアル脱出ゲームの製作における考えなどの質問が寄せられていた。

――オンラインリアル脱出ゲームにおけるユーザーの導線について、最も大切にしていることは何でしょう?

加藤隆生氏(以下、加藤氏):ゲームのタイトルですね。実際に商品を購入していただくためには、タイトルを聞いた時にストーリーや世界観、謎解きの種類など、ある程度把握できるような内容にすべきだと考えています。
 

――今後のリアル脱出ゲームについて、入力フォームなど、どのようなシステムを作りたいとお考えでしょうか。

加藤氏:今SCRAPが展開している『ミステリータワーからの脱出』というイベントでは、部屋にあるボタンの押し方や押すタイミング、順番によりストーリーが進行するという仕組みになっています。入力のインターフェース自体を謎にして、それが物語と連動するようにすると、素晴らしい作品になると考えています。

例えば、『ゴーストトリック』(2010年 – カプコン)という作品は、パズルと物語が完全に融合していて、パズルを解くことで物語も進行するような工夫がされています。『ゴーストトリック』のように、パズルのルール自体が物語に大きく関わっているみたいなゲームが作れると嬉しいですね。

――作品のアイディアはどのように閃くのでしょうか。

加藤氏:自分の心がどういう時に動いたかを記憶して、もう一度自分の心を動かすためにはどうすればいいのかを、ゲーム内で再現するようにしています。

 

――オンラインリアル脱出ゲームの公演内容は、どのように決めていますか?

加藤氏:クリエイターの意見を積極的に取り入れるようにしていますが、予算で決めることはほとんどないです。アイディアが素晴らしいものであれば、投資するのが基本的な考え方です。

 

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島中 一郎(Ichiro Shimanaka)https://www.foriio.com/16shimanaka
ライター。ゲーム・アニメ業界を中心にニュース記事の執筆、インタビュー、セミナー取材などマルチに担当。ボードゲームが趣味であり、作品のレビューや体験会のレポートを手掛けるほか、私生活で会を催すことも。無類のホラー好き。

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