コロナ禍で拡大したゲーム市場を支えた人々の正体とその特徴。付き合い方をクラスタで解明【CEDEC2021】

 2021年8月24日(火)から26日(木)までの3日間、日本最大のコンピュータエンターテインメント開発者向けカンファレンス「CEDEC2021」(CEDEC=セデック:Computer  Entertainment Developers Conference 主催:一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会、略称CESA)が開催。昨年に引き続き、新型コロナウィルス感染拡大を防止する観点から本年もオンラインで開催された。

 本稿では、8月26日(木)に開催されたセッション「コロナ禍で増加したゲーム市場を支える生活者動向研究」の模様をレポートしていく。

【講演者】

加島 直弥
株式会社博報堂 テクノロジー開発局 研究員。2020年に博報堂入社。前職ではゲーム会社でプロデューサーやディレクターとしてモバイルゲームやコンシューマーゲームの開発に従事。博報堂ではゲーム業界の経験を生かしたコンテンツビジネスの研究やARCloudなどXRに関わる研究開発に携わっている。
後 皓介
株式会社博報堂 テクノロジー開発局 上席研究員。2010年博報堂DYメディアパートナーズ入社。2016年よりマーケティング・テクノロジー・センターにてコンテンツファンマーケティング、位置情報データ、メディアログデータ、MMM、デジタルマーケティングなどの研究開発に従事。2013年からの3年間はメディアプラナーとして外資系クライアント、スタートアップクライアントのメディア戦略、メディア投資戦略のプラニングに従事。2010年から2013年はテレビタイムビジネス局にてテレビビジネスとテレビ×デジタルの施策開発に携わる。

 

 

 

コロナ禍で伸びたコンテンツ市場とそれを支えたクラスタ群

 コロナ禍を経てコンテンツ市場は大きく変化した。では、一体どのような市場が伸びる結果になったのだろうか。今回のセミナーは、まずそのトップ3の発表からスタートした。

 推定市場規模で見ると、第3位はアニメ・特撮の3,073億円で前年比は1,038億円。第2位はマンガ・ライトノベルの5,094億円で、前年比2,062億円。第1位はゲームの5,884億円で、前年比は2,613億円という調べが出ている。

 博報堂ではコンテンツビジネスラボというコンテンツヒット要因分析を行う専門チームが存在する。

 このチームが行う分析とは、まず「コンテンツの調査や企業とのアライアンスを行うデータ基盤構築」、そしてそれらのデータを元に「ヒットするエンタメを予測するエンタメヒット研究」「広告配信やレコメンドエンジンなどに繋げるためのソリューション開発」という3つを行っている。

 今回の講演では、データ基盤構築での分析結果を元に、コロナ禍での市場変化を解明していく。

 データ基盤構築で行われているのは、コンテンツファン消費行動調査という「消費者がどのような行動を取っているか」を探る調査だ。ここで、11カテゴリのジャンルに対する調査を行い、そのファンの層のボリューム、行動、利用環境などを調べていった。

 調査概要は全国5000サンプルで、年齢は15歳~69歳。性別、年代、地域の人口構成比にしたがって振り分けながら、インターネットによる調査を行った。調査時期は2021年2月19日から24日までだ。

 前述でトップ3を発表したコロナ禍で伸びた推定市場規模の全体はこの通り。この表を見ても、ゲームをはじめとするトップ3が目立つ伸びを見せており、オフラインを中心とするコンテンツは下がり、オンラインで楽しめるコンテンツが伸びている二極化の様子が伺える。

 一番の伸びを見せたゲームの内訳も調査が行われた。調査時期に最も利用推定人数が伸びたのは、新作発売時期の影響もあり『どうぶつの森』シリーズ。2021年はリアルの交流が限られている中で、その代替としてオンラインを通じての生活スタイルが生まれてきた。

 続いては、ゲーム市場内のカテゴリごとの成長グラフだ。特にアプリは2019年、2020年度で大きく成長しており、アプリとパッケージがゲーム市場を牽引していることがわかる。

 では、その2つのカテゴリに支出するようになった層は一体どの層なのか。調査では、パッケージを性年代で見ると、男性60代と女性20代が増加したという結果に。これらの層は今までのゲーム市場では規模が少ない層だったが、コロナ禍を境に増加傾向を見せている。

 アプリでも、シニア層の男性、若年層の女性が増加していることが伺える。ところが、アプリ市場全体の成長から見ると、ここで確認できるのは僅かな成長で、そこまで大きく人が増えたという印象を受けない。つまり、アプリ市場では人数の増加よりも、1人1人の支出も伸びた影響が大きいと予測される。

 ここで、ゲーム市場が伸びた仮説を立てる。パッケージ市場は新しい顧客層の増加による成長し、アプリ市場は平均支出金額が増加。この2つの要因が大きく影響していると考えたそうだ。

 とはいえ、シニア向けのゲームを作ればヒットに期待できる、というわけではない。これは生活者の一部側面でしかなく、同じ50代男性でも運動が好き、アニメが好き、高収入、低収入など、さまざまな属性を持っている。簡単に性年齢で見るライフスタイルだけでは、判断材料としては不十分なのだ。

 

プレイタイトルで分けるクラスタとその層の性質を解明

 そこで、調査対象の人々の理解を深めるために、ゲームタイトルによるクラスタ分析が行われた。利用したのは、階層型クラスタ分析という似た性質を持つ人たちが樹形図のように表現される手法だ。今回は各ゲームタイトルそれぞれのゲームをプレイしている人に分析を行い、その傾向が近しい人がクラスタとして集まるような工夫をした。

 クラスタは12個に分類され、まずはカジュアルゲーム、ミドルやコアゲームを遊ぶ2つに大きく分けられる。このようにプレイ傾向は、ゲームの性質によって分類されている。

 クラスタの規模は、友人と定番ゲームを遊ぶ層が一番多い。これはゲームを利用しているユーザー層の15%にまで上る。それ以下は、子供と家族でアクティビティゲームをプレイする層、スマホでカジュアルゲームを遊ぶ層、家族でファミリーゲームと続いていく。

 その後は、各クラスタの分析を進めていく。最も多い友人と定番ゲームをプレイする層では、『あつまれどうぶつの森』『ポケモンGO』『モンスターストライク』などがよく遊ばれていることがわかる。

 このクラスタの平均収入・資質は、平均世帯年収は約19万円増え、その他コンテンツへの支出も含むコンテンツ支出金額は約6万円増加、ゲームだけでも6,000円増加。ゲームを遊ぶ際の重視項目は、YouTuberによるゲーム実況となっている。

 これ以外にもクラスタごとに環境、趣味趣向がわかる分析となっており、その項目から別のクラスタ分けをしてもデータを取れる仕組みだ。

 続いては、どのクラスタが市場を支えているのかをバブルチャートで分析を行った。

 横軸がアプリへの支出金額、縦軸がコンテンツへの支出金額になっている。縦軸の数値が高いということは、ゲーム以外のコンテンツにも多く支出をしているということになる。今回注目するべきは、どちらにも多く支出をしているクラスタがどこにあるのかという点だ。

 これを見ると、友達と定番ゲームを遊ぶ層、ゲームで友人とコミュニケーションをする層、グッズも楽しむキャラ推し層の3つが影響していることがわかる。

 グッズを楽しむキャラ押しプレイ層は、10代~20代の若い男女が多い。タイトルは『ツイステッドワンダーランド』『あつまれどうぶつの森』『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』などをプレイしている。

 平均世帯年収は約33万円ダウンしているが、コンテンツ支出金額は増加傾向にあり、収入は少なくともコンテンツに対して支出する層であることがわかる。

▲世帯年収はあくまで世帯全体の年収で、個人であれば数値は下がる。だが、他の数値にも連動する要素なので、今回の分析は世帯を使用している。

 この層に関しては、もっと細かく学生などで区切ったとしても、全体平均よりも多くお金を使っている層とのこと。予想されるのは、子育てなどが始まるとゲームやエンタテイメントに使えるお金よりも、生活に優先してお金を使うようになるからではないかという傾向だ。逆に、収入の少ない10代、20代の方が使用するお金は多いということだ。

 利用しているインターネットサービスはpixivがトップで、キャラクターが好きという傾向が大きく表れている。ゲームの重視項目も声優がトップで、次点でキャラクターデザインと、こちらでもキャラクターに対する熱が数値として表れている。

 次に、ゲームで友人とコミュニケーションプレイ層。こちらは学生の男性、未婚男性が中心で、『世界のアソビ大全51』『あつまれどうぶつの森』『Minecraft』『荒野行動』など、友人とワイワイ遊べるコンテンツをプレイしている。

 このクラスタも、平均世帯年収は下がっているものの、コンテンツ支出金額は多いという傾向が見られる。利用しているインターネットサービスは、YouTubeが圧倒的に多く、YouTuberの実況を重視項目にしている。

 

該当クラスタが利用するコミュニケーションチャンネル

 では、コロナ禍の市場を支えたこれらのクラスタと、どのように付き合っていけばいいのだろうか。

 まずは、このクラスタが1時間以上接触しているメディアを見ていく。全クラスタ合計では1位がテレビ、2位がスマートフォン、3位がPCとなっているが、今回取り上げた3つクラスタ全てで1位はスマートフォンに置き換わっている。しかし、テレビも2位をキープしており、他は全体クラスタと同じ割合になっている。

 注力クラスタのコミュニケーションチャンネルは、連絡などで使用するLINEがトップだが、2位のTwitterは全体よりも大きく差をつける結果となった。他にも、数字を伸ばしてきているTikTokにも注目が集まる。

 見ているコミュニケーションチャンネルはYouTubeが1位。こちらも大きく全体と差をつける結果となり、この3つのクラスタが大きく注目していることが分かる。他にも、小さい数値だが、ニコニコ動画、pixivなどが全体よりも見ている傾向があることが伺える。この2つも、該当クラスタを狙い撃ちする際には使えるコミュニケーションチャンネルになるだろうと予測されている。

 ゲーム情報源において、TVCMは全体と同じ傾向で利用されているが、クラスタによってはTwitter、YouTubeの方が見られているという違いがある。トータルで見ても、Twitter、YouTubeはどのクラスタでも一定以上の数値があり、重要なコミュニケーションチャンネルであると言える。また、面白い点として数値は少ないがラジオも見られる傾向があり、Twitterのトレンドやradikoの普及などの影響を受けていることが伺えるそうだ。

 これを踏まえて、実際にクラスタの人々とコミュニケーションを取るにはどのような形を取ればいいのだろうか。

 

ゲームが娯楽の枠を超えたインターフェースへと成長

 結論としては、コミュニケーションプラットフォームとしてのゲーム、課金・正確者の支出の多層化、という部分が重要なポイントになるとのことだ。

 各クラスタのコンテンツの消費意識を調査した結果では、1年以内に利用したコンテンツを繰り返し利用する、過去利用したコンテンツを利用することが増えたといった回答が目立った。このように、ほぼ全てのクラスタで同じコンテンツの繰り返し利用がランクインしているという特徴が見えたそうだ。

 他には、友人・知人・家族と一緒に盛り上がることが好きという回答もランクインしており、コミュニケーション要素を重視していることが伺える。

▲赤が繰り返しコンテンツを利用するという回答。青がコミュニケーションを重視しているという回答だ。

 この分析から立てられる仮説は、インターネットと繋がっていないゲームが多かった頃と比べ、クリアして次のタイトルに移るのではなく、移行しつつも友人とのプレイをすることで、同じゲームで新しい体験を得ているということだ。ゲームを遊び終わるということ自体が少なくなってきている。

▲友人とプレイすることで、1回のプレイごとに違うドラマが生まれる。
▲赤枠で囲んでいるタイトルは友人とのコミュニケーション要素があるゲーム。多くのクラスタでプレイされていることがわかる。

 コミュニケーション目当てのユーザーがお金を使うのかという疑問点は、有料オンラインサービスの利用のために支出をしている人が多く、そこにお金を落とすことでコンテンツへの支出という形になっているとのこと。コミュニケーションのためにお金を使うのは、昨今の若い層では当たり前になってきているそうだ。

 昔の感覚で言うコミュニケーションは、用事がある際に電話をするなどが該当していたが、今では暇だからコミュニケーションを取るという若い層も多くなってきているという影響も大きな要因の1つだ。それがガチャを一緒に回す、一緒にプレイをするなど、ゲームでも行われている。

 有料オンラインサービスでは、投げ銭や優先券などにお金を使っているという回答も多く届いた。これは、コロナ禍でデジタルライブなどオンライン上での施策が一気に普及したことで、多種多様なリクープ方法が生まれたことを示しており、同じことがゲーム市場にも発生している。

 これらの結果からわかるのは、ゲームはオンラインで、なおかつ好きな時間で利用できることから、日常的にコミュニケーションをする場になっているということ。ビジネスサイドで見るところのインターフェースと化していると言えるそうだ。

 課金の多層化についても、インターフェースの中でもただゲームをするだけではなく、さまざまな課金方法があり、それをユーザーも望んでいるという傾向がある。これを踏まえて、さまざまなゲーム関連のエクスペリエンスの提供がビジネスに繋がる可能性があるとのこと。

 テクノロジーのおかげで多様なモノがインターネットの力でインターフェースとなり、生活者へのより良いエクスペリエンスの企画、施策として提供が可能になった。それをデータとして取得することもできるので、解析を重ねることでより良いサービスの提供が可能になるというサイクルが生まれているという。

▲ゲームでも同じことが起こっており、生活者のインターフェースとして成立している。

 プラットフォーム上で体験できることが増えていけば、ゲーム本編だけでなくゲーム空間でさまざまなことを体験することが一般的になる。そうなれば、余暇時間の使い方の内容などゲーム外の情報が追加されてきて、異なる業界の大手企業がゲームを介して取れるその情報を欲しがることが予想される。それほど、ゲームは重要なインターフェースになってきているという。

 ゲームIPと旅行プレイヤーを繋げる施策が立ち上がっていたり、教育とゲームを繋げる動きがあったり、既にゲームがゲーム外の世界と結びつくことは、実際に起き始めている。まだこの組み合わせの幅は未知数で、可能性を秘めている部分だとのことだ。

 博報堂では、こうした調査をはじめ、SNSやテレビ、インターネットのデータを集めているので、ゲームから生活者インターフェース市場に参入する際に、適切な情報を提供などの支援を行えるそう。

 ゲームの特色を理解して、それに適した企業のアライアンスのマッチング支援をクライアントリストから探すことも可能という。他にも、ユーザーがどういったエクスペリエンスを求めているのか、それをさらにフィードバックするためのサポートなども行えるそうだ。

 最後に後氏は「ゲームをインターフェース化することは、新しいビジネスとしての可能性はもちろん、今まで想定していないアライアンスや協業の可能性を秘めている」とまとめ、セミナーを終了した。

 

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原 肇(Hajime Hara)
WEBメディアで活動するライター。あらゆるゲームジャンルをプレイするゲーマーだが、中でも得意なジャンルは対戦ゲーム。長年のプレイや試合観戦で培った知識をeスポーツ関連の記事で活用している。

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