アカツキは、インドに子会社Akatsuki India Private Limitedを2021年7月に設立したことを発表した。子会社を戦略的事業拠点とし、日本発アニメおよびキャラクターのインド市場における事業を開始する形。
人口13億人超を抱え、かつその大半が30歳未満の若年層からなるインド市場は、インターネット産業の急速な成長とともに、コンテンツ、メディア分野での旺盛な需要で市場拡大が見込まれている。もともとインドにおいて人気を誇る日本IPとその関連市場はこの波に乗り、今後さらなる成長を見込まれている。
アカツキのエンターテインメント×テクノロジー特化型ファンド「AET Fund」は、2018年6月からインド国内のコンテンツおよびメディア領域のスタートアップに純投資を開始し、これまでに20社超への投資を実行。
【関連記事】
アカツキのエンターテインメント×テクノロジー特化型ファンド「AET Fund」がインド市場への投資活動を強化
同社によると、実際にインド現地で投資活動を推進する中で、インドにおけるコンテンツ領域に知見のある現地企業とのネットワークを構築し、またその過程で同領域における事業機会を特定することができたという。この機会をつかむため、日本IPをインドで事業展開することを目的に子会社Akatsuki Indiaを設立したという流れだ。
本事業では今後10年以上の長期的視点に立ち、日本IPのインド市場での普及を通じてIPホルダーや玩具メーカーを含めた日本のステークホルダーの利益拡大に寄与していくという。またインドに加え、将来的にはアフリカを含む他新興国市場での展開も視野に入れている。
【関連記事】
アカツキ、アフリカでのエンタメ市場拡大を睨み投資を実行
Akatsuki India役割および主なソリューション
Akatsuki Indiaは、インドにおけるアニメとキャラクターの認知獲得から最終的なマネタイズまでをワンストップで提供可能な点が強み。
同社の役割と提供する主なソリューションは以下の通り。なお、展開するIPに関しては、既存IPのライセンシングを当初の前提としている。
役割 | 主なソリューション |
1. IPのメディア展開 | ・現地主要複数言語※1へのローカライズ ・YouTubeでの配信およびチャンネル運用 ・SVOD(定額制動画配信サービス)への配信 ・劇場への配給 |
2. IPの認知最大化 | ・現地言語でのデジタルマーケティング ・現地言語でのソーシャルマーケティング |
3. マーチャンダイジング(商品化) | ・インド消費者向けの商品企画 ・インドにおける現地生産 ・eコマースによる現地消費者への直接販売 ・現地小売への卸し |
4. プロモーション | ・現地消費財企業等と連携した販促品展開やIPコラボレーション、企業広告の推進 ・現地モバイルゲームをはじめとしたデジタルおよびオンラインサービスとのIPコラボレーション |
インドでは4Gとスマートフォンが急速に普及し、モバイルでのコンテンツ消費が加速している。IP普及の観点では、従来の主要チャネルであったテレビからモバイルへの対応が各IPに求められており、Akatsuki Indiaではこのモバイルチャネルに注力して日本IPの露出および認知最大化を図っていくという。
マネタイズの観点では、インド市場においては玩具、文房具、アパレル等の従来型の商品がIP収益の大部分を占めており、それらを日本IPで実現する体制を構築。特に玩具は、昨今のインド政府による規制強化によってインド国内への輸入が困難となっており、同社では現地生産体制を整備することで今後インド進出を目指す日本の玩具メーカーの支援を目指す。現地の製造工場と連携することで、良質な玩具を低コストで製造する仕組み。
加えて、デジタルによる収益加速が見込まれる数年後のタイミングを見据え、現時点より関連領域での下地を整えていくとのこと。前述の通り、「AET Fund」を通じてアカツキはモバイルゲームをはじめとしたデジタルおよびオンラインメディアの企業群に出資しており、これら企業を交えたIPのデジタル展開を積極的に推進していく構えだ。
アカツキによると、インドでの玩具をはじめとした商品の製造においては、現地の製造工場との連携から開始し、より良質な製品を低コストで提供するために、今後はインドに独自の製造拠点を構えることも視野に入れて準備を進めるという。また、既存のアニメ、キャラクターのライセンシングにとどまらず、国内外のクリエイターと共創し、グローバル展開を前提にしたオリジナルIPの創出も準備中。さらに、関連した製作委員会への出資も加速させるようだ。
会社概要
会社名 | Akatsuki India Private Limited |
設立 | 2021年7月 |
リーダーシップ | 代表者取締役 Jaineel Aga 取締役 河村 悠生 |
所在地 | Quest Coworks, Technopolis Knowledge Park, 5th Floor,Mahakali Caves Road, Chakala, Andheri East, Mumbai, 400093 India |
事業内容 | IP事業 |
Akatsuki India(所在地:インド ムンバイ、代表:Jaineel Aga)は、インドにおける戦略的事業拠点であり、日本IPを用いて上述した事業展開を行う。近い将来、インド現地において数十名程度までチームを拡大する予定。日本側にもインド事業に特化したチームを編成しており、マルチリンガル、マルチカルチュラルかつクロスボーダーな体制で日本IPの展開を推進していくとのこと。
Akatsuki India代表・Jaineel Agaプロフィール
シリアルアントレプレナーかつインドにおけるコンテンツビジネスのスペシャリスト。インドにおけるキャラクターライセンス専門のD2C※2ブランドとして先駆者であるPlanet Superheroesの創業者。Planet Superheroesを、オフライン店舗、自社eコマースやAmazon等のマーケットプレイスを統合したオムニチャネルのブランドへと成長させた実績を持つ。IPライセンスや小売事業の経験に加え、インド大手PEファンドや戦略コンサルティングファームでの経験を有する。米国デューク大学大学院修了。
※2:Direct to Consumer
事業責任者 河村 悠生氏からのコメント
本事業を実現する上での協業パートナーとして、今回Jaineel Aga氏を現地代表に迎えられたことを大変うれしく思います。Planet SuperheroesにはAET Fundから出資をしており、Jaineelとは過去数年にわたる協業を通して強い信頼関係を築いてまいりました。彼のインドにおける専門的知見やネットワークと、アカツキがこれまで培ってきたコンテンツビジネスの経験をかけ合わせて、インド市場により多くの日本IPを展開していきたいと考えています。
インド市場への参入にご関心を持たれている企業様がいらっしゃいましたらお気軽にご連絡ください。今後拡大が見込まれるインド市場での収益最大化に向けて、皆様にソリューションを提供させていただきます。