「ゲーム業界における女性」に焦点をあてた講演を取材。女性ゲーマーの動向や働く環境について【TGS2021】

 2021年9月30日(木)から10月3日(日)までの4日間、ゲームイベント「東京ゲームショウ2021 オンライン」(以下、TGS2021)が開催。新型コロナウィルス感染拡大を防止する観点から、オンラインを中心に行われた。

 本稿では、9月30日(木)に実施されたTGSフォーラムセミナー「Women in Gaming」の模様をレポートしていく。

【講演者】

奥井 麻矢氏
LINE執行役員 兼 ゲーム事業本部事業本部長
根本 悠子氏
ミクシィ執行役員/モンスト事業本部 本部長
サンディア デバナサン 氏
フェイスブック シンガポールディレクター APACゲーミング
村木 沙耶氏
フェイスブック シンガポールクライアント・ソリューションズ・マネジャー 、グローバル・ゲーミング
豊井 みのり氏
フェイスブック ジャパンクライアントパートナー、コマース事業部 / Women@ Facebook Japan リード
陶 沙氏
フェイスブック ジャパンクライアントソリューションマネジャー、通信/製造業界
富永 久美氏
フェイスブック ジャパンクリエイティブショップ責任者・D&I カウンシル リード

 

 

ゲーマーの約半数は女性だが、ゲーム業界の女性割合は1/4

 本セミナーでは「ゲーム業界における女性」に焦点をあて、女性ゲーマーのトレンドやゲーム業界における女性の活躍について、パネルディスカッションが行われた。

 フェイスブック シンガポールディレクターのサンディア氏は「ゲーマーの約半数は女性だが、ゲーム業界での女性の割合は1/4である」というデータを挙げ、「雇用の多様性は全体のごく一部に過ぎず、偏見を減らすためにも多くの取り組みが必要になる。女性やマイノリティを経営幹部などのポストへと引き上げて行かなくてはならない」「ニーズに応えた要請に対応できる従業員を集めることは、ゲーム会社の責任である」と、今回のセミナー実施に至った経緯を説明。

 Facebook社内ではD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)が経営理念の根幹にあり、違いを持つ人を含め能力の高い少数派を積極的に雇うなど、自ら模範を示す責任を常に果たしてきたというサンディア氏。

 最後に、「今回のようなイベントは日本や世界の舞台で活躍している女性のリーダーを紹介する機会として、全員が平等な環境でこそ可能なアイディアを示す機会としても重要です。本プログラムでお届けするインサイトやアイデアが役に立つことを願ってやみません」と、オープニングのメッセージを送った。

 セミナーの前半では、女性ゲーマーのトレンドについてLINE執行役員奥井氏が紹介。日本では2018年~2021年にかけてゲームをする女性は10%近く増加しており、ゲームをプレイする女性のうち、9割近くがモバイルゲームをプレイしていることが分かっているという。

 2012年の11月に本格的にサービスを開始し、現在はグローバルで約30タイトルの展開をしているLINEゲーム。『LINEポコポコ』や『LINEバブル2』などのパズルゲーム、『LINEプレイ』のアバターゲーム、さらに『ジャンプチヒーローズ』といったコアゲームなど幅広く展開している。

 これまでにリリースしたタイトルの全世界累計ダウンロード数は8.8億を超え、特にLINEが普及しているタイ、台湾、インドネシアを中心にアジア地域でLINEゲームのタイトルがゲームランキングの主位を取ることも多くあるという。

 LINEゲームのユーザー層は女性の比率が高く、10代~30代以上の幅広い年齢層に遊ばれているとのこと。カジュアルゲームが多いため、女性が手軽にプレイしやすく、隙間時間に遊べるため、長く遊ぶユーザーが多いという状況になっていると奥井氏は説明する。

 女性ゲーマーのポテンシャルを最大化するための戦略について奥井氏は、「ゲームが趣味でもない一般の人たちに対して、楽しい体験を提供するというとこにこだわることが大切」だと話す。LINEゲームで提供されているゲームの多くが、幅広い層に楽しんでもらえるよう手軽で簡単なカジュアルゲームとして製作されており、女性をターゲットとしてゲームを準備することは実は少ないとのこと。

 たとえば『LINEポコポコ』と『LINE POP2』のプレイヤーの多くが女性で占めているが、「コツコツとステージをクリアしていくタイプのパズルゲームは女性に人気が高い印象もあり、遊んでくれている人たちの継続率も高い」と奥井氏は分析する。

 また、デザインやビジュアル面については、ゲームが好きな層や、一定の層だけが好むデザインには極力せず、「一般的な目線で考えることが大切」だと言う。女性のユーザーが多い状況ではあるが、女性だけが喜ぶクリエイティブにしているわけではなく、むしろ男女どちらにとっても遊びやすい色やキャラクターなどをどうやって表現するかを強く意識しているそうだ。

 マーケティング観点では、日常の隙間時間にいつでもどこでも気軽に遊べる施策を行い、ライトユーザーのコンタクトポイントを作り続けることを大切にしているとのこと。

 パズルジャンルゲームでは、可愛いらしさや懐かしさを感じられれるようなキャラクターが手に入るコラボレーションなどが人気が高く、そういったイベントをコンスタントに行うなどして、「どのタイミングでプレイしても楽しさが感じられるような世界観を心掛けている」と奥井氏はまとめた。

 

働きやすい環境を実現するために

 続いて、ゲーム業界で女性として働くにあたって大変だったことや、そこから得られた教訓についての話題に。

 ミクシィ執行役員の根本氏は「『働く女性』というカテゴライズではなく、『働く人間』としての意思を持つのが重要」だとコメント。“女性はゲームに向いてない”といったアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み,偏見)を含め、取り巻く社会と環境の影響による考え方や価値観が、特に日本は強い印象があると続ける。

 そういった環境の中で自分の思いや意見を伝えることについて根本氏は「ロジカルシンキングで理路整然と伝えるといった勇気のいることではなく、今よりも意思が言えるぐらいのレベルから(軽い気持ちから)意識を始めてもいい」とし、「それを意見として受け入れて議論出来たりする環境づくりや組織作り、企業であればカルチャー作りのようなものが必要で、そういった取り組みがダイバーシティの推進にも繋がる」とメッセージを送った。

 セミナーの後半では、Facebook Japanの豊井氏がダイバーシティとインクルージョンをサポートするグループのひとつとして活動している「Women@」について紹介した。

 豊井氏によると、Women@は女性だけのコミュニティではなく、共に職場環境で関わる男性“ALLY”とも深く関係しているという。Facebookが大切にしている考えに「ALLYSHIP」というものがあり、マイノリティグループと共感し、寄り添い、支援することを意味しているとのこと。

 豊井氏は「女性の働きやすい環境を実現するためには、ALLYの協力は必要不可欠であると考えており、ALLYSHIPの推進についても真剣に取り組んでいます」と続けた。

 Women@のコミュニティの活動について、「会社の枠組みを超えた、横の繋がりを意識した取り組みを実施している」とFacebook Japanの陶氏は紹介。

 たとえばGoogle、Twitter、メルカリ、Facebookと協力し、「Connected Women Tokyo」というコミュニティを実施。社員同士の横の繋がりを提供しながら、Women@の活動の認知向上や、お互いの取り組みの成功事例や課題などを共有できる場を設けているそうだ。

 最後にFacebook Japanの富永氏が、Facebookで取り組んでいる“DEI”の活動について紹介。DEIとは前述したD&Iにequity(公平さ)が加えられた言葉。

 富永氏はDEIについて「個人のニーズによって、その人が置かれた環境や、状況、人の属性など、何かしらの理由で組織的な障壁がある場合に、障壁を取り除いて“公平に”機会を与えるべきだ」と話し、具体例として以下の4つの取り組みを挙げた。

①Find
 多様性に富んだ優れた人材を見つけ、そして公平なプロセスを用いて雇用する。Facebook社では、面接を行う際、候補者に男女が含まれるようなプロセスになっている。

②Grow
 全ての社員が成長できるようなラーニングやトレーニングなどのサポートを提供。マネージャーは自分の居場所が見つけられるような、包括的な環境づくりが学ぶことができる。

③Keep
 自分の居場所を見つけてもらい、安心して自分らしく、のびのび働ける環境づくりに努めている。

④Apply
 ダイバーシティに富んだチームが多様な視点や意思決定を通じて、世界中の人に利用されるプロダクトやサービスを提供。多様なコミュニティ作りを応援し、人と人がより身近に繋がる世の中の実現を目指している。

 「ゲーム業界における女性」をテーマに、女性ゲーマーと女性のキャリアの2つの視点から、パネルディスカッションが行われた今回のセミナー。Women@の活動や、DEIといった取り組みが、いかに大切かが分かる講演となった。

 

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島中 一郎(Ichiro Shimanaka)
島中 一郎(Ichiro Shimanaka)https://www.foriio.com/16shimanaka
ライター。ゲーム・アニメ業界を中心にニュース記事の執筆、インタビュー、セミナー取材などマルチに担当。ボードゲームが趣味であり、作品のレビューや体験会のレポートを手掛けるほか、私生活で会を催すことも。無類のホラー好き。

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