Gzブレインが『アニメマーケティング白書 2018』を発刊

カドカワの子会社Gzブレインは、2016年10月から2017年9月までに放送されたアニメ番組200タイトル超について、視聴者に関する調査結果と分析をまとめた『アニメマーケティング白書2018』を発刊した。

Gzブレインは全国47都道府県在住の男女5~69歳を対象にアニメ視聴に関する調査を実施。性別、年齢別の視聴者数分布などの基礎データをはじめ、視聴形態別(リアルタイム、録画、オンデマンド)の視聴者数、視聴者の他ジャンルのエンターテインメントコンテンツへの接触状況、生活意識、消費選好といった豊富な資料が掲載されている。

なお、本記事では、一昨年に発行された同白書の2017年度版のダイジェスト資料の内容も併せて紹介する。

日本国内におけるアニメ視聴の概況

『アニメマーケティング白書2017』では、国内のアニメ視聴者数を約3,124万人と推定しており、アプリゲームユーザー、家庭用ゲームユーザーと同程度の人数としている。これは日本の人口の約32%に相当する。

世代別に見ると、若い世代ほどアニメを視聴する人が多く、キッズ層(5歳~9歳)の約70%がアニメを視聴していることが判った。

視聴形態に関する調査結果

アニメ視聴にはTV放送の時間に合わせて視聴する「リアルタイム視聴」と、録画やオンライン配信の視聴予約といった「タイムシフト視聴」があり、それぞれの視聴者数はほぼ五分五分だ。

タイムシフト視聴はその特性から、より「視聴したい」という意向が強いタイトルと考えられる。『アニメマーケティング白書2017』では、2015年10月~2016年3月の間に放送されたアニメ番組のうちタイムシフト視聴の割合が高かったタイトルを5つ挙げ、その内最も割合が高かったのは「バッテリー」の79.0%だった。「バッテリー」はフジテレビの深夜アニメ放送枠「ノイタミナ」で取り扱われた作品。

視聴者層ごとの動向

コア層は視聴者全体の約16%、特に20代に多い

『アニメマーケティング白書2017』では1週間に6本以上アニメを視聴するグループを「コア層」と定義している。コア層はアニメ視聴者全体の15.9%を占め、20代に限定すると25.4%まで上昇します。20代のコア層は他の年代に比べ、趣味・嗜好品の消費余力が大きい世代であることが推察されるが、一方でこの層をターゲットとしたアニメ作品がひしめきあっており、レッドオーシャン化が進んでいる。

キッズ層で最も視聴されているアニメは「妖怪ウォッチ」

2015年10月~2016年3月の間に放送されたアニメ番組のうち、キッズ層(5~9歳)で最も視聴者数が多かったのは「妖怪ウォッチ」だった。これまで子供向けの定番だった「ドラえもん」や「クレヨンしんちゃん」といったタイトルを抑え、世代交代を感じさせる結果だ。なお、「妖怪ウォッチ」は全年齢帯でオンデマンド視聴(動画配信サービスなど)が最も多いタイトルでもあり、キッズ向けのアニメタイトルはTVからスマートフォンへ視聴スタイルが変化しつつある。

アニメを視聴する人の割合が最も高かったキッズ層は、家庭用ゲームとも親和性が高かった。全年齢帯で家庭用ゲームを遊ぶ人は21%だが、キッズ層は40%と大きく割合が伸びている。しかし、スマートフォンなどで遊ぶゲームアプリについては、キッズ層でゲームアプリをプレイする人の割合は23%で、全体平均の28%よりやや低いという結果だった。また、TV番組(ドラマ、TVバラエティ、スポーツ、ニュース)への接触も全体平均を大きく下回っており、キッズ層はアニメ番組以外はあまりTVを視聴していない。

タイトル別分析

アニメ作品ごとに視聴者の属性、視聴スタイル、他ジャンルのエンターテインメントコンテンツへの接触状況等をまとめた「タイトル別分析」では、『アニメマーケティング白書2017』より「おそ松さん」、同白書2018年度版より「3月のライオン」に関する調査結果が公開されている。

「おそ松さん」視聴者分析

コア層と10代女性のライト層で特に人気だったことが判明

「おそ松さん」は女性ファンから絶大な支持を受け、一時は社会現象にまで発展したが、調査では男性視聴者が44%、女性視聴者は56%であることがわかった。これは同時期の「名探偵コナン」とほぼ同じ男女比であり、意外に男性視聴者も少なくなかったようだ。男女別年齢帯比率を見てみると、男性は10代から30代までほぼ均等に分布しているのに対し、女性はキッズ層と10代の視聴者で約60%を占めており、女性の中でも特に若い世代で視聴が盛んであった。

視聴本数によるクラス別を見ると、「おそ松さん」では毎週6本以上アニメを視聴する「コア層」が半数以上を占めている。しかし、女性視聴者におけるコア層の割合は半数程度で、番組視聴者全体を見てもライト層・ミドル層での女性比率が高くなっている。加えて、各クラスの年齢帯比率ではライト層の約60%が19歳以下であり、これらのデータをまとめると、「おそ松さん」は男性を含むコア層と、ライト層・ミドル層に属する19歳以下の若い女性から支持を受けていたと言えるだろう。

「おそ松さん」は毎週月曜日の深夜帯に放送されていたためか、リアルタイムで視聴する人は少なく、録画とオンデマンドでの視聴が80%以上だった。さらに、オンデマンドで視聴した人の約6割が女性であり、年齢別では19歳以下が60%超を占めた。「おそ松さん」はniconicoなどで配信が行われており、他の視聴者と共にハイテンションなギャグを面白がるという視聴スタイルが、同作と特に相性が良かったのかもしれない。


他ジャンルのエンターテインメントコンテンツへの接触状況では、「おそ松さん」視聴者の内、約45%の人が、ゲームアプリまたは家庭用ゲームを遊んでいることが判った。遊んだことのあるゲームアプリとしては、『ねこあつめ』『LINE:ディズニーツムツム』などのライトなタイトルが挙がる一方、『ラブライブ! スクールアイドルフェスティバル』『刀剣乱舞-ONLINE- Pocket』といったコアユーザー向けのタイトルをプレイしている人もいた。

「おそ松さん」の視聴者層はブームを生み出しやすい傾向?

『アニメマーケティング白書2017』では、アニメタイトルごとに視聴者の生活意識と消費選好についても調査が行われている。以下は、「おそ松さん」視聴者の調査結果だ。

「おそ松さん」視聴者はおしなべて、好奇心が旺盛で、家族より友人と一緒に行動することを重視し、物語を楽しみたいという強い志向が見て取れる。また、インターネットを使った情報収集が得意で、広告やTVCMにはあまり興味を示さないようだ。

彼らは好みのコンテンツには非常に高いエンゲージメント(愛着)を示す人が多く、日頃からSNSなどオンライン上で常に情報収集を行い、好奇心から次々とコンテンツを消費する実態が窺える。さらに、「友人や仲間と一緒に過ごすことが好きだ」という意識が高いことから、ファンイベントなどに仲間同士で積極的に参加するといったことも考えられるだろう。このように、オンラインでもオフラインでも活発に(消費)行動を起こす視聴者層の特性が、「おそ松さん」ブームを牽引したとも推察できる。

2期目放送中の「3月のライオン」視聴者分析

大人コア層にリーチ

NHK総合で現在2期目が放送中の「3月のライオン」は、最新版の『アニメマーケティング白書2018』で1期目放送を視聴した人についての調査結果が収録されている。

同作視聴者の男女比は48%:52%で大きな差はなかった。特徴的なのは、20代、30代、40代の視聴者が多い点で、「おそ松さん」と比べると、その傾向が顕著に見て取れる。

視聴本数によるクラス別分析ではコア層が47.3%を占めている。年齢別に各クラスの比率を見ると、20代~50代でコア層の割合が高くなっており、「大人コア層」とも呼ぶべき層で盛んに視聴されていた。

視聴形態は録画が多く、放送時間帯は同じでも、オンデマンド配信での視聴がメインだった「おそ松さん」とは視聴スタイルが異なっている。30代以上ではオンデマンドでアニメを視聴する習慣がまだ浸透していないのかもしれない。

他ジャンルのエンターテインメントコンテンツへの接触状況では、ゲームアプリまたは家庭用ゲームを遊んでいる人は視聴者の40%前後で、「おそ松さん」よりやや低い割合だ。一方、TVのニュース番組やドラマを視聴する人の割合が高くなっており、TVドラマを視聴している人は「3月のライオン」では視聴者の68.9%、「おそ松さん」では53.6%と差が開いた。

「3月のライオン」視聴者が他によく視聴するアニメとしては、「夏目友人帳 伍」「舟を編む」などの日常生活における人間関係の機微を描いた作品が多かった。また、「舟を編む」と「亜人」は実写映画化されており、よりリアルでドラマティックなコンテンツを好む傾向がある。

ゲームアプリではユーザー数の多いライトなゲームが選ばれる中、「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」が4位にランクインした。視聴者の年齢層が高めで経済的余裕があるためか、比較的高ARPPUなタイトルへの接触も見られた。

視聴者の生活意識、消費選好については、「おそ松さん」と比べ、「人生において、家族は非常に重要である」という家族志向が強くなっている。また、「自分らしさを表現できる商品・サービスを選ぶ」「他人と違った存在として見られたい」という意識が高く、消費選好においても「値段が高くても品質のよいものを買う」傾向が強かった。

さらに、『アニメマーケティング白書2018』より各アニメタイトルの満足度・ファン度の調査が開始された。「3月のライオン」の「ファンである」と回答した人の割合を年齢帯別に見ると、50代と10代で高くなっている。年齢がかなり離れていることから、親子で視聴するケースもあるだろう。

以上の調査結果から、「3月のライオン」の主な視聴者層である“大人コア層”は、家族志向が強く、録画したアニメを親子で視聴している可能性があり、ドラマのようにリアルで人間関係の機微や家族のあり方を問うメッセージ性の強いコンテンツを好むというペルソナが浮き彫りとなった。さらに、自分らしさを追求し、こだわりに沿うものであれば、多少高額でも意欲的に消費行動を起こしていることも明らかとなった。

このように、アニメ視聴のスタイルから消費者のペルソナを詳細に設定することもできる。本白書のデータは、コラボレーション先のIPの選択といったシーンでも大きな助けとなるだろう。

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