自分にとってお気に入りのゲーム作品について、「もっと理解を深めたい」と思う瞬間が多々ある。それはキャラクターやストーリー、あるいはマップ構成、難易度、ゲームコンセプトなど様々。作品について一度好きになってしまえば、どこまでも知りたいと思ってしまうのがゲーマーの性というものだろう。
制作者の意図について、ゲームプレイを通じてなんとなく実感できることもあれば、言われてみて初めて「そうだったのか!」と嬉しい気づきを得ることもある。
本記事では、「ゲームについてもっと詳しくなりたい」、「開発チームについて知りたい」、「制作当時の話を聞きたい」といった、ゲーマーの果てなき欲求に全力で応えてくれるYouTubeチャンネルの数々を紹介。ゲームタイトルについて新たな気づき、発見の一助になれば幸いだ。
①ゲームさんぽ /ライブドアニュース
SFや中世ヨーロッパ、ギリシア時代といった様々なテーマを扱うゲームタイトルについて、それぞれの分野のスペシャリストが出演。ゲーム内のマップを“お散歩”しながら、キャラクターやオブジェクト、シナリオ、エフェクトについて解説が行われる動画チャンネル「ゲームさんぽ」。
『Detroit: Become Human』のキャラクターについて精神科医・名越康文氏による分析や、古代ギリシャ研究家・藤村シシン氏による『アサシンクリードオデッセイ』の解説、作曲家・新垣隆氏が『オクトパストラベラー』の楽曲について紐解き、さらには即興演奏まで披露するなど、数多くの動画が配信されている。
ゲームについての理解が深められるともに、各分野について知識を付けることの楽しさに気づかされることが多い。何度もやり込んだはずのタイトルでも、また違った視点が与えられることで、再び手に取ってみたいと思えるような動画に仕上がっている。
ゲームさんぽは現在、YouTube実況者・なむ氏とライブドアニュース編集者・いいだ氏の2人が運営する2つのYouTubeチャンネルにて配信されている。
②世界の岡本吉起Ch|Yoshiki Okamoto
元カプコン専務取締役、ゲームリパブリック代表取締役社長、オカキチ代表取締役社長の岡本 吉起氏がYouTuberとして、ゲームに関する様々な内容を発信していくトーク番組。配信回ごとに決められたテーマについて、ゲームのプロデューサー目線から分かりやすく、マイルドな語り口で解説を行ってくれている。
扱うトピックについては、カプコンの『ストリートファイターⅡ』をはじめとする数々のヒットタイトルの開発秘話や、カプコンCEOの辻本憲三氏にまつわるエピソードなど、多種多様。さらには社会問題や歴史、経済など幅広いテーマについて毎日配信を行っている。
対談動画では、『ストリートファイター』『餓狼伝説』など多くの人気タイトルを手掛けた西山隆志氏や『ストリートファイターⅡ』生みの親・西谷亮氏、『シーマン』を制作した斎藤由多加氏など、そうそうたる顔ぶれが出演。
③Harada’s Bar・はらだのばぁー
バンダイナムコエンターテインメントの「鉄拳」シリーズのプロデューサーで知られる原田勝弘氏がホストを務める「Harada’s Bar・はらだのばぁー」。元々は2020年11月に週刊ファミ通&ファミ通.comによるゲーム系動画チャンネル「ファミ通TUBE」内で「はらだのゲームばぁー」として配信されていたが、2021年3月に「Harada’s Bar・はらだのばぁー」として新しく立ち上げが行われた。
ゲストとして“プレステの父”として知られる久夛良木健氏や“高橋名人”こと高橋利幸氏、「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズなどでおなじみの桜井政博氏など、名だたるメンバーが出演。 「Harada’s Bar」というタイトル通り、美味しいお酒や料理を楽しみながら、リラックスしたムードでトークが展開していくのが特徴だ。
10月3日の配信回では、『SILENT HILL』や「SIREN」シリーズ、「GRAVITY DAZE」シリーズなどを手掛けた外山圭一郎氏が出演。「ゲーム開発中に起きた怖い話」など、ホラーゲームの第一人者のゲスト回らしいトークで盛り上がっていた。
ちなみに、外山氏が率いるBokeh Game Studio(ボーカ ゲームスタジオ)のYouTubeチャンネルでは、メンバーのインタビュー動画が公開されている。
10月14日には、「SIREN」シリーズの屍人などのデザインで知られる髙橋美貴氏のインタビュー動画が公開。同社が開発中の初回作に関するエネミーデザインについても言及されていた。最新のホラー作品に興味があるという方は、忘れずにチャンネル登録をしておこう。
④CyberConnect2 OFFICIAL CHANNEL
『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』や『戦場のフーガ』、「.hack」シリーズといった数々のヒットタイトルを手掛けたゲーム開発会社・サイバーコネクトツーの公式チャンネル。配信されている動画では、同社の社長を務める松山洋氏が出演。
チャンネルでは、ヨコオタロウ氏や小高和剛氏、須田剛一氏などクリエイターをゲストにトークを繰り広げる「ぴろライブ」や、ユーザーから寄せられた質問に応える「ぴろしQ&A」などバラエティ豊かなコーナーを展開している。
会社説明会や技術講演などの動画も配信されており、専門学校向けのゲームクリエイターセミナーについては、かなりの頻度で配信が行われている。動画内ではゲーム業界の“攻略法”が語られるなど、ゲーム業界への就職希望者は必ず目を通しておくべきチャンネルと言っても過言ではないだろう。
松山洋氏は自身のチャンネルのほか、企業専門のインターネットTV局「TheCowtelevision」や元バンダイナムコゲームス副社長鵜之澤伸氏がホストを務める「うのちゃんねる」、前述した「ファミ通TUBE」など、様々なチャンネルにもインタビュイーやゲストとして精力的に出演されている。
松山氏が手掛けた著書『エンターテインメントという薬』と『熱狂する現場の作り方』、松山氏原作のコミック『チェイサーゲーム』もあわせて読めば、ゲーム業界についてグッと理解を深めることができるはずだ。
⑤Cutscenes
Webメディア「Game*Spark」と、日本のゲームクリエイターに迫るドキュメンタリー映像を制作する「Archipel」が共同で運営するYouTubeチャンネル「Cutscenes」。
『仁王2』のプロデューサー・ディレクターを務めるコーエーテクモゲームスの安田文彦氏や「ファイナルファンタジー」シリーズなど様々な作品のキャラクターデザインを手掛ける天野喜孝氏、コーエーテクモホールディングス代表取締役社長・襟川 陽一氏といったクリエイターの方々のドキュメンタリーが配信されている。
10月15日には、プラチナゲームズの神谷英樹氏のドキュメンタリー映像が公開。カプコン入社から『バイオハザード』立ち上げの話や、「デビルメイクライ」シリーズが誕生したきっかけなど、神谷氏のキャリアについて振り返る内容となっている。
また、「Archipel」のチャンネルにも、イシイジロウ氏や三上真司、名越稔洋氏といった数多くのゲームクリエイターについてのドキュメンタリーが配信されている。興味のある方は、こちらのチャンネルもあわせてチェックしておくと良いだろう。
⑥CREATORS SQUARE
スクウェア・エニックスのクリエイターが外部クリエイターを招待し、互いの作品やクリエイティブに対する考え方等について語り合う、対談形式の動画番組「CREATORS SQUARE」。
第1回目では、『すばらしきこのせかい』や『スクールガールストライカーズ』のキャラクターデザインを代表作とするデザイナーの小林元氏と、「ずっと真夜中でいいのに。」、「Eve」などのMVを手掛けるアニメーション作家Waboku氏との対談を配信している。
現在・過去・未来をテーマに、3本の動画が公開中。「STORY:NOW」(現在)では、お互いのキャラクター、世界観を作る上で一番大事にしていること、私生活とクリエイティブの関係性についてのトークを展開。新進気鋭のクリエイターの作品作りの姿勢についてうかがい知ることができる、貴重な映像となっている。
⑦TOKYO GAME SHOW/東京ゲームショウ
コンピュータエンターテインメント協会(CESA)主催のコンピューターエンタテイメントの総合展示会「東京ゲームショウ」(TGS)。「TGS2019」から始まったYouTube配信映像が、「TOKYO GAME SHOW/東京ゲームショウ」チャンネルにアーカイブとして蓄積されている。
「TGS2021」では、スクウェア・エニックスやコーエーテクモ、KONAMI、ユービーアイソフトといった様々な企業による特別番組や、日本ゲーム大賞2021「年間作品部門」発表など、イベントの模様について配信。
国内3社のゲームクリエイターが登壇した基調講演 「それでも、僕らにはゲームがある。」やミストウォーカー代表の坂口博信氏とスクウェア・エニックス取締役・吉田直樹氏の対談「RPGの魅力と可能性 ~坂口博信 × 吉田直樹/TGS2021 ONLINE 特別対談~」といった主催者番組についても、視聴が可能だ。
ちなみに、PickUPs!では、主催者番組とTGSフォーラムセミナーの模様についてレポートしている。内容について気になる方は、こちらの記事もぜひ活用していただきたい。
⑦CEDECチャンネルYouTube版
TGSと同じくCESAが主催する日本最大のコンピュータエンターテインメント開発者向けカンファレンス「CEDEC」。「CEDEC2014」から始まったYouTube配信映像についても、「CEDECチャンネルYouTube版」チャンネルにて視聴できる。
2021年8月24日~26日に開催された「CEDEC2021」については、基調講演としてドワンゴの顧問・川上量生が行った「VR・AI時代の新しい現実(リアル)」をはじめ、40本の講演が視聴可能となっている。
Pick UPs!では、YouTubeチャンネルで配信が行われていない講演についてもレポートを行っているので、内容について知りたい方は、あわせてチェックしてみてほしい。
11月27日(土)~11月28日(日)には、「CEDEC+KYUSHU 2021 ONLINE」のオンライン実施が決定している。基礎講演では「『テイルズ オブ アライズ』で挑戦する長寿シリーズの継承と進化」というタイトルで、『テイルズ オブ』シリーズIP総合プロデューサーの富澤祐介氏と、サイバーコネクトツー代表取締役の松山洋氏が登壇する予定だ。
紹介したチャンネルの中には動画をほぼ毎日更新しているコンテンツもあり、全部をチェックするというのはなかなかに大変。短時間にまとめられている動画もあれば、長時間じっくりと楽しめるように構成されている動画もある。「チャンネル登録」や「後で見る」機能を活用し、自分の合ったスタイルで視聴を続けるのが良いだろう。
今回紹介した以外のチャンネルにも、YouTubeには多くのゲーマー向けチャンネルが用意されている。どんなチャンネルがあるのか気になるという方は、ぜひご自身の手で動画を検索してみてほしい。様々な動画を通して、ゲームタイトルについて、もっと理解が深められることだろう。