『FF14』で「禁止事項」の変更が話題に。時代の変化に考慮したユーザーコミュニティ運営の背景を考察

 スクウェア・エニックスは10月27日(水)、『ファイナルファンタジーXIV』(『FF14』)の禁止事項、およびアカウントペナルティポリシーを変更した。

 禁止事項の主な変更点は、RMT業者への対策として、パーティ募集掲示板に関する禁止行為を2つ追加した点。また、禁止行為の内容に関しての具体例を含めた説明を大幅に追加した点である。

 併せて変更されたアカウントペナルティポリシーには、違反行為の重さによって設定されているペナルティポイントに関する記述や、経過日数によるペナルティポイントの減衰システムを導入したことについて説明が追加された。

 今年7月、有名なストリーマーの影響もあり、公式文「プレイヤーの増加傾向および、それに伴うワールド内の混雑やその対応状況について」が掲載されるほどに新規プレイヤーの流入が見られた『FF14』では、人口増加に比例してRMT業者による被害の増加も問題となっていた。そうした業者への迅速な対応を可能にすることを目的として、禁止事項の変更が行われている。

 そして、RMT業者への対策とは別に、コミュニケーションにより生じるトラブルについての具体例を含めた説明が大幅に追加されている。『FF14』では2019年2月から、「ゲームマスター(GM)の行動指針」を含め、禁止事項に関して基本方針レベルの大きな変更を行っていた。今回の具体例追加は、そうした方針をより詳細に説明することで、運営側の姿勢を示そうとしたもの。

 端的には、プレイヤー同士のコミュニケーションに関するトラブルに、GMが積極的に介入する方針だ。

 以前の『FF14』では、プレイヤー同士のコミュニケーション関して、差別や性的、攻撃的な表現など、一線を越えた発言以外には介入せず、プレイヤー側での対処(プレイヤー同士での解決・ブラックリスト登録などでの自衛)が促されていた。

 MMORPGにはプレイヤー同士のやり取りがプレイ体験の中に含まれている性質上、GMが介入してしまうと阻害されてしまうという懸念からだ。

 これが変化し、現在の方針に変わったのは、時代の変化を考慮したところが大きい。

世間一般でセクシャルハラスメントやパワーハラスメントなどの問題が大きく取りざたされるようになるなど時代は変わり、MMORPGとはいえ、「プレイヤー同士のコミュニケーションを阻害することを懸念する」よりも「他者の行動に我慢を強いられる状況を解消する」方が、コミュニティ全体にとって良いのではないかと考えるようになりました。

                     2019年2月12日のお知らせより 

 『FF14』のゲームデザイン自体、時代の変化を考慮した要素が多数うかがい知れる。

 メインストーリーを進めるだけでレベルがすぐに上がるためレベリングの必要性は薄く、コンテンツファインダー(パーティマッチングのシステム)を使えば、挨拶程度のチャットで成り立つくらいの気軽さでダンジョンに参加することができる。他プレイヤーの代わりに、NPCを同行させて攻略できるダンジョンなども存在し、オンライン専用タイトルとはいえソロプレイもかなりの割合で実現できる。

 昔よりも可処分時間が減少し、インターネット上ではマルチプレイへの忌避感の声が目立つこともある現代で、より多くのプレイヤーのニーズに合わせて間口を広げているという訳だ。

 そうした適応も前述のプレイヤー増加にも繋がっていると考えられる。そして、多くの新規参入ユーザーが『FF14』というMMORPGを始めるにあたって懸念を抱くのは、やはり対人コミュニケーションに関するものが大きいのではないだろうか。

 話は戻るが、今回の禁止行為に関する具体例が追加されることは、他のMMORPGと比べても珍しいことだといえる。

 プレイヤー人口が増え、最新拡張パッケージが追加される直前のこの時期に説明がなされたのは、今後増えるかもしれないコミュニケーショントラブルに備える意味もあるのだろう。

 禁止事項の中で挙げられた具体例は、ハラスメントや迷惑行為として、わいせつな表現や暴言はもちろんのこと、他者にアドバイスするときの表現方法にも踏み込んだ内容となっている。

 中には会話を想定したものもあり、

A「Bさん□□失敗してるよ」
B「はい、わかってます。頑張ります」
A「ギミック理解してます?教えましょうか?」
B「理解してます、大丈夫です。ありがとうございます。」
A「ほんとに理解できてます?もう何度も失敗してダメな感じですけど。□□を△△した方がいいですよ。」
B「はい大丈夫です。すみません。」
A「ほんとに大丈夫?わからないなら聞いてね?Bさんだけが何度もミスってるから、ちゃんとやってもらわないとクリアできないよ。」
B「すみません。」

 といった例が、禁止されている「過度な批判/非難」と判断される場合のあるものとなっている。

 「アドバイスを目的として問題点を伝えることは禁止行為には該当しない」と明文化されている通り、アドバイスそのものを取り締まるものではなく、あくまでも相手の意思を無視してアドバイスを押し付けるような状況になっていることが問題とされている。

 一連の具体例で重要なのは、一貫して「他者を慮る行動」が求められていることだ。

 顔の見えないインターネット上においては、その匿名性からしばしば礼節に欠けた言動を容易にしてしまうパターンが見られる。そして、時代の変化という観点ではプレイヤー側もまた、対面でないからといって横柄な態度を取れる時代ではなくなっている。

 『FF14』運営のスタイルとしては、ネット上においても他者に配慮することを忘れないユーザーを最大限に保護する構えだ。

ただし、コミュニケーションにおける表現は数多くあり、今回追加した具体例がすべてではありませんので、禁止行為の理解を深めようと思ったり、自身のプレイや発言をする際に迷うことがあったりした際の、ひとつの参考例としてご覧ください。 

                      2021年10月27日のお知らせより

 他プレイヤーとのコミュニケーションについて「どこまでがよくて、どこからがいけないのか」を明確に線引きすることは難しい。だが、今回GM側が例示をしたことで、各コミュニティ単位での議論は活発になっていくものと思われる。

 ゲーム内でも、トラブルの際にGMに委ねるという選択肢が簡単に取れるようになれば、各々の負担も減る。そういった意味でも、今回GM側の方針を再び提示したことはユーザーコミュニティにとって意義のあることと言えるだろう。

 この“GM(運営)の積極的な介入によって、より良いユーザーコミュニティの共創を目指す運営姿勢”は、今後のMMORPGにとってのモデルケースとなっていくかもしれない。

 なお、SNSなどでは「何もアドバイスできなくなるのでは」と不安に駆られるプレイヤーもいたが、これについてグローバルコミュニティプロデューサーの室内氏が自ら捕捉で説明(「ファイナルファンタジーXIV禁止事項」の更新に関する補足)するなど、ユーザーが抱く懸念点を解消させる動きもあった。

 現在、『FF14』は最新拡張パッケージ『暁月のフィナーレ』発売直前。リリースは2週間延びてしまったが、世界のトップを走る『FF14』の1度目の集大成は見逃せない。

【関連記事】
『FF14: 暁月のフィナーレ』発売日が2週間延期。2021年12月7日(火)に変更

 

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森口 拓海(Takumi Moriguchi)
森口 拓海(Takumi Moriguchi)
雑誌やWEBメディアを中心に記事を執筆。ゲームは雑食で多様なジャンルを好み、業務の延長でアプリ分析も得意。恩のあるゲーム業界に貢献すべく日々情報を発信。

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