『DQけしケシ!』を機に振り返るドラクエと文房具の意外な関係性。90年代にブームを起こした「バトルえんぴつ」を回顧

 スクウェア・エニックスは、12月1日(水)、スマートフォン向けパズルゲーム『ドラゴンクエストけしケシ!』をリリースする。

 本作では、「ドラゴンクエスト」シリーズの登場キャラクターやモンスターたちが、可愛くデフォルメされた消しゴム“ドラけし”として登場。ドラけしを縦・横に3つ以上そろえてモンスターたちを攻撃する、「ドラクエ」シリーズ初のパズルゲームとなっている。

 「ドラクエ」シリーズと文房具を組み合わせた作品としては、過去に「ドラゴンクエストバトルえんぴつ」(以下、バトエン)があり、90年代に大きなブームを巻き起こしている。ミニ四駆やたまごっちのヒットをはじめ昭和・平成レトロブームが巻き起こっている昨今、文房具をテーマとした本作にノスタルジックな魅力を感じてしまう方も多いのではないだろうか。

『ドラゴンクエストけしケシ!』リリースに先がけ、本稿ではバトエンについて紹介していく(なお、画像については筆者の所有物となる)。

 

90年代にブームを起こした「バトルえんぴつ」

 バトエンとは、1993年にエニックス(現スクウェア・エニックス)が発売した、鉛筆を活用したゲームのこと。鉛筆を転がして上向きになった面の効果を発揮しあい、相手のHPをゼロにしたプレイヤーが勝ちとなる商品だ。

 「ドラクエ」シリーズのIPを利用しているゲーム作品ながら、あくまで文房具という形をとっているため、学校に持ち込みやすく、休み時間に子どもたち同士で遊びやすいという利点がある。

 筆者の小学生時代には定規をペンで弾いて机から落とし合ったり、スーパーカー消しゴムをボールペンで弾くといった遊びが流行していたが、バトエンの登場から学校の休み時間の様相は一変。教室のあちこちから鉛筆を転がす音が聞こえてくるほど、大きなブームを巻き起こしていた。

 鉛筆にはそれぞれ★と●という2つの属性の振り分けが行われており、属性にあった攻撃しか与えられない仕組み。相手に少量ずつだが確実にダメージを与えていくスライムや、ミスが多いかわりに当たれば相手に大ダメージを与えるゴーレムなど、様々なモンスターが登場。

 キャラクターによって多少の強弱はあるものの、弱いキャラクターでも運次第では大逆転を起こせるといったドラマ性があり、繰り返し遊びたくなるような作品に仕上がっていた。

 勇者やその仲間キャラクターの鉛筆は相手にダメージを与える面が少ないが、強力な効果を発揮する武器を装備したり、魔法使いや戦士といった職業への転職が可能となっている。武器や転職は、それぞれ鉛筆にキャップを付けることで表現。鉛筆のどの向きにキャップを付けるべきか組み合わせを考えるなど、モンスター鉛筆とはまた違った戦略が楽しめるようになっていた。

▲画像をよく見ると、ダブりのあるバトエンが……。シリーズが多く出ているため、同じ鉛筆を間違えて買ってしまうことも当時はあるあるだった。
▲●の属性に90のダメージを与える組み合わせ。それぞれのキャラクターのHPの最大値は100に設定されているため、運が良ければほぼ一撃で相手を倒すことができる。
▲バブルスライムの毒攻撃は緑色のキャップで表現。

 バトエンのプレイ人数は特に制限が設けられておらず、1対1のタイマン勝負や三つ巴の戦いを楽しむも良し、2対2のタッグマッチを組んで戦うことも可能だ。1人で2つの鉛筆を転がして戦うソロプレイはもちろん、疑似的なCPU戦が楽しめるようなセットも用意されていた。

▲お家でのソロプレイが捗るバトエン下敷き。
▲戦闘中に一度だけ利用できるお助け消しゴム。

 

当時の小学生たちを驚愕させたキングバトルえんぴつ

 バトエンを語るうえで欠かせないのが、キングバトルえんぴつの存在だろう。キングバトルえんぴつは普通の鉛筆の4倍ほどの大きさで、当時は「さすがに学校に持って行くと怒られてしまうのでは……?」と心配してしまうほどのインパクトを小学生にもたらしていた。

 キングバトルえんぴつのモンスターはゾーマやデスピサロ、ミルドラースといった歴代のラスボスたちが登場。ゲーム内でさんざん苦しめられてきたラスボスたちを自分の手で操作できるというワクワク感はかなりのものがあった(歴代の魔王たちをパーティーにできる『ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランド』は、1998年に発売)。

▲キングバトルえんぴつと通常の鉛筆との比較。当時はキングバトルえんぴつを持っているだけで学校内で注目の的になった。

 キングバトルえんぴつのHPは、普通のキャラクターのなんと2倍。強力な攻撃を繰り出すばかりではなく、攻撃のたびに属性が変化するうえ、▲というボス専用の属性を持つなどチート級の強さを誇っている。

 そのため、キングバトルえんぴつを相手に戦う場合は、通常の鉛筆を3本使って良いというルールが設定されている。キングバトルえんぴつ登場後は▲への攻撃手段を多く持つキャラや、仲間のHPを回復するキャラが登場するなど、パーティーを編成して挑戦する楽しさが加わった。

▲ボスに対して強力なダメージを与えるモンスターや、味方全体の体力を回復できるモンスターもいた。

 バトエンはその後も「バトエンG」、「バトエンG HD 」、「バトエンGP」、「バトエンGX」とシリーズを重ね、発売20周年となる2013年には記念イベント「バトエン20周年記念展~バトエンバトルミュージアム~」を開催。2021年となった現在でも『鬼滅の刃』のIPを利用したバトエン「血風激闘えんぴつ」が発売されるなど、文房具を利用したゲームは、世代を超えて愛され続けている。

 

 12月1日にリリースされる『ドラゴンクエストけしケシ!』では、シリーズキャラクターたちが消しゴムになって登場することは前述した通り。登場するドラけしたちはいずれもカジュアルなキャッチーさがあり、その種類の多さからコレクター欲も刺激されてしまう。

 ゲームであるがゆえに消しゴムの収集も容易なうえ、それぞれの消しゴムを強化することもできるというのだから、かつて文房具ゲームを大いに楽しんだユーザーの1人として嬉しい限りだ。令和時代の新しい文房具ゲームの登場を、楽しみに待ちたい。

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島中 一郎(Ichiro Shimanaka)
島中 一郎(Ichiro Shimanaka)https://www.foriio.com/16shimanaka
ライター。ゲーム・アニメ業界を中心にニュース記事の執筆、インタビュー、セミナー取材などマルチに担当。ボードゲームが趣味であり、作品のレビューや体験会のレポートを手掛けるほか、私生活で会を催すことも。無類のホラー好き。

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