ミラ主演映画『バイオハザード』を振り返る。新作映画『ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』と対照にオリジナル要素を追求

▲画像は 『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』

 全世界のシリーズ累計売上本数が1億1,700万本を超える人気サバイバルホラーゲーム「バイオハザード」シリーズ。その映画版『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』が、2022年1月28日に公開となる。

 脚本・監督は、『海底47m』シリーズや『ストレンジャーズ 地獄からの訪問者』などの作品を手掛けたことで知られるヨハネス・ロバーツ監督。公開された予告映像では、クレアとクリスの会話シーンをはじめゾンビやケルベロス(ゾンビ犬)、リッカー、リサ・トレヴァーの登場シーンが収められているなど、原作に忠実な内容となっているようだ。

 一方で、『バイオ』を元にした映画作品といえば、俳優ミラ・ジョヴォヴィッチによる華麗なアクションシーンを連想する人も多いのではないだろうか。ポール・W・S・アンダーソン監督が手掛けた映画「バイオハザード」シリーズは、2002年に第1作が公開されて以降、2016年の『バイオハザード ザ・ファイナル』まで全6作が製作。全世界累計興行収入は1,200億円を突破し、日本での興行収入も200億円を超える好成績を記録した作品だ。

 本稿では『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』の公開を前に、ポール・W・S・アンダーソン監督版の「バイオハザード」シリーズを振り返っていく。新作映画視聴前の復習として役立てて頂きたい。

 

独自の世界観を確立することに成功したポール・W・S・アンダーソン版『バイオハザード』

 巨大企業「アンブレラ」や「T-ウイルス」といったゲームの設定や世界観はそのままに、多くのオリジナルの要素が盛り込まれた映画『バイオハザード』(2002)。

 主人公のアリス(演:ミラ・ジョヴォヴィッチ)をはじめアンブレラ特殊部隊員レイン、部隊長ワンなど、原作にはない数多くのキャラクターたちが登場。アンブレラ社が所有する巨大な地下研究施設「ハイブ」という閉鎖的空間を舞台に、ゾンビをはじめ様々な生物兵器との戦いと、施設からの脱出までの物語が描かれる。

 ストーリー冒頭では、アリスは記憶の一部を失っている設定。アンブレラの陰謀に理解が追い付かないまま巻き込まれていく様など、彼女の感情が視聴者自身に起こった出来事のように一体化していく。ほかの登場キャラクター達も一癖も二癖もある人物で、最後まで誰が生き残るか分からない、先の読めない展開に目が釘付けになってしまう。

 作品の看板クリーチャー・ゾンビの造形にもかなり力が入れられており、顔半分を喰いちぎられた者や片目をほじくり返された者など、それぞれの風貌が生前での結末を物語っている。ゾンビに襲われている人間からの視点にカメラが切り替わる場面があるなど、見ているこちらも身を固くしてしまうシーンが多い。

 クリーチャーだけでなく、ハイブの施設に仕掛けられたトラップの数々も印象的だ。神経ガスやスプリンクラーによる水攻め、エレベーターの急落下など、人間の根源的な恐怖心をあらゆる角度から突っついてくる。中でも有名なのが、人体をバラバラにせんと迫りくるレーザートラップだろう。

 部隊長・ワンがレーザーの犠牲になってしまうシーンは強烈で、『バイオハザード4』や『バイオハザード6』、『バイオハザード アンブレラ・クロニクルズ』に同じ仕掛けが登場するなど、シリーズ原作にも大きな影響を与えている。

 ちなみに、元カプコン専務取締役、オカキチ代表取締役社長の岡本吉起氏が自身のYouTubeチャンネルにて、映画『バイオハザード』について語る動画が公開されている。映画制作秘話やミラ・ジョヴォヴィッチ起用話など、映画についてもっと知りたい方は必見な内容だ。

 

シリーズを重ねるごとに加速していくアクション要素

 1作目のストーリー後半でTウィルスを細胞レベルで取り込むことに成功したアリスは、驚異的な身体能力が備わったほか、サイキックパワーが使えるように。以降、シリーズを重ねるごとにゲーム版と同様、アクション要素が強い作品になっていく。

 『バイオハザードII アポカリプス』(2004年)ではゾンビを素手で殴り倒し、『バイオハザードIII』(2007年)ではサイコキネシスで炎を操る(パイロキネシスではない)。『バイオハザード IV アフターライフ』(2010年)では自身のクローン軍団とともに、刀と手裏剣を器用に使い分けるテクニカルな忍者スタイルでアンブレラ社を奇襲した。

 主人公が超能力に目覚める設定は好みが分かれるかもしれないが、後に発売される『バイオハザード7 レジデント イービル』(2017年)では相手の精神を支配する能力を持つキャラが、『バイオハザード ヴィレッジ』(2021年)では磁力を操るキャラが登場している。キャラがサイコキネシスを扱うといったアクション全開な展開を、映画版はある意味先取りしていたとも言えるだろう。

 アンブレラの実験施設を舞台とした『バイオハザード V リトリビューション』(2012年)では、『バイオハザード』1作目の主要キャラクターであったレインやワン隊長が再び登場。シリーズの歴史の長さをしみじみと感じさせる展開を見せる。

 最終章となる『バイオハザード:ザ・ファイナル』(2016年)では、装甲車の上でバトルシーンなどアクションを残しつつ、サバイバルホラー展開へと原点回帰。宿敵アンブレラ社との最後の戦いを最高のスケールで描き、15年に渡る長期シリーズの幕を閉じた。

 

原作ファンに嬉しいオマージュ要素も

 『バイオハザードII アポカリプス』以降はジル・バレンタインやクレア・レッドフィールド、クリス・レッドフィールド、レオン・S・ケネディ、エイダ・ウォン、カルロス・オリヴェイラ、アルバート・ウェスカーなど、数多くの原作キャラクター達が登場している。

 特にシエンナ・ギロリー扮するジルはキャラクターの再現率が高く、髪型やスカイブルーのチューブトップ衣装など原作そのまま。ふとした仕草や立ち振舞い方についても徹底されており、本当にゲームの世界から飛び出してきたようなキャラクターに仕上がっている。

 クリス役を演じるのは、人気海外ドラマ『プリズン・ブレイク』の主役を務めたウェントワース・ミラー。『プリズン・ブレイク』で数々の刑務所からの脱獄に成功したミラーが、『バイオハザード IV』にてロス刑務所からの脱出を目指すクリス役として選ばれるのは、ユニークなキャスティングだ。

 また、『バイオハザード CODE:Veronica』(2000)では、ロックフォートの刑務所に収容された妹・クレアを救出するためにクリスが救出に向かうストーリーだったが、映画版では逆にクリスが牢屋に閉じ込められている設定になっているのも、ファンならニヤリとしてしまうポイントだろう。

 『バイオハザードIII』以降に登場するウェスカーは映画でもダークヒーローっぷりを発揮し、強大な敵としてアリス達の前に立ちはだかる。一方で、間抜けな最期を迎えたかのようにみせて実は生きていたという展開もあり、ゲーム内容を引用したジョークもふんだんに盛り込まれている。

 敵クリーチャーもゾンビだけでなく、ゾンビ犬やリッカー、クロウ(カラス)のほか、ネメシス、タイラントといった歴代のボスキャラクターも登場している。『バイオハザード V リトリビューション』ではマジニや処刑マジニを撃破した際にコインが散らばる演出など(実際には、散弾銃からコインを発射している)、ゲーム内演出がアクションに取り入れている点も見どころだ。

 登場キャラクターだけでなく、ゾンビの大群とラクーンシティの警官、アンブレラ社特殊部隊の隊員による市街戦や、ヘリコプターによる機銃掃射を猛ダッシュで駆け抜ける場面など、原作をオマージュしたシーンも多い。

 そのほか、劇中で使用されているノートPCが「VAIO」だったり、劇中キャラクターの名前がスペンサーやアシュフォードであったりと小ネタもたっぷり。あらゆる場面で原作に対するリスペクトが感じられる作品に仕上がっている。

 

 『バイオハザード』のディテールにこだわりつつ、単なる原作の振り返りにはとどまらない。ゲームファンと映画ファン、どちらの心にも響く作品となったポール・W・S・アンダーソン監督版の「バイオハザード」シリーズ。

 映画公開時にはアクション要素が強さから内容を受け付けられなかった方も、『バイオハザード5』~『バイオハザードヴィレッジ』プレイ後に視聴してみると、印象は変わったものになっているかもしれない。

 『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』公開前に、ポール・W・S・アンダーソン版『バイオハザード』をぜひチェックしてみてほしい。映像作品に求める『バイオ』らしさとは何か、物語の魅力について今一度理解を深めるきっかけになるはずだ。

 『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』は2022年1月28日公開予定。

・タイトル:『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』 
・原題:Resident Evil: Welcome To Raccoon City
・日本公開表記:2022年1月28日(金)全国ロードショー
・US公開日:2021年11月24日予定 
・脚本・監督:ヨハネス・ロバーツ
・出演:カヤ・スコデラリオ(クレア・レッドフィールド役)/ハナ・ジョン=カーメン(ジル・バレンタイン役)/ロビー・アメル(クリス・レッドフィールド役)/トム・ホッパー(アルバート・ウェスカー役)/アヴァン・ジョーギア(レオン・S・ケネディ役)/ドナル・ローグ(ブライアン・アイアンズ役)/ニール・マクドノー(ウィリアム・バーキン役)

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島中 一郎(Ichiro Shimanaka)
島中 一郎(Ichiro Shimanaka)https://www.foriio.com/16shimanaka
ライター。ゲーム・アニメ業界を中心にニュース記事の執筆、インタビュー、セミナー取材などマルチに担当。ボードゲームが趣味であり、作品のレビューや体験会のレポートを手掛けるほか、私生活で会を催すことも。無類のホラー好き。

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