『クワイエットプレイス』がホラーゲーム化に最適な理由。“音を立てたら即死”のフレーズがステルスプレイにマッチ

 2018年に公開され、累計興収3億4000万ドルを記録した大ヒットホラー映画『クワイエットプレイス』。地球外生命体が襲来した世界での生活を強いられた、とある家族の物語を描いた内容で、2021年6月には続編『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』が公開された。

 そんな本シリーズのゲーム版が、2022年にリリースされることが発表。開発を 「iLLOGIKA」、「EP1T0ME」、「Saber Interactive」の3社で進めている。本稿では、『クワイエットプレイス』のストーリーや設定について紹介しながら、ゲーム化に至った理由と乗り越えるべき課題について考察していく。

 

「絶対に音を立ててはいけない」というゲーム向きなルール

 まずは『クワイエットプレイス』について、簡単におさらいしておこう。本作は少しでも物音を立ててしまうと怪物に襲われてしまう極限状態の中での、4人の家族の生活を描いた物語だ。言葉を発することを決して許されず、コミュニケーションは手話によって行わなければならない。

 移動する際には裸足で、音が鳴らないよう砂を敷き詰めた部分を歩き、食事をする際にはスプーンやフォークを使わず手づかみでガブリと食べる。姉弟でボードゲームの『モノポリー』を遊ぶシーンがあるが、サイコロは布の上にそろりと転がし、コマにはふわふわのフェルトマスコットを使用するなど、静寂を保つための工夫があらゆる場面に散りばめられている。

 絶対に音を立ててはいけないという緊張感がある一方で、滝の水音など他に大きな音が出ている場所であれば会話をしても気づかれないという、ホッと一息つけるようなシーンも用意されている。この緊張と緩和のバランスが見事で、90分の家族の物語を疲れ過ぎずだらけ過ぎず、没頭して観続けてしまうのだ。

▲映像をよく見ると、家のコマの代わりに毛玉が使われていることが分かる。音を発しないようにフェルトマスコットを扱うようにしたのは母親のアイデアで、家族全員で『モノポリー』を楽しむ一時もあったのかもしれないと、物語に奥行きを感じさせてくれるシーン。であると同時に、しっかりと観客を驚かせる仕掛けも用意されている。

 ストーリー中には登場キャラクターの苦悩や葛藤、成長もしっかりと描かれており、深く感情移入できる。怪物を前にただ無策でいるというわけではなく、ランプの明かりによって周囲に危険を知らせたり、キッチンタイマーや花火の音で誘導したりといった戦略が用いられているなど、サバイバルホラーとしての面白さもある。

 続編『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』では出産したばかりの赤ん坊を抱えて行動するシーンがあるなど、サバイバルの難易度は格段に増している。泣き声を聞かれないよう酸素ボンベを付けて箱の中に入れて保護をするのだが、酸素切れが赤ん坊の死に直結してしまうため、ボンベの残量には常に気を配らなくてはならない。

 また、前作では家族以外のキャラクターはほとんど登場しなかったが、今作では他の生存者たちとの交流も描かれている。文明や秩序が崩壊した世界で、別のコミュニティと友好的な関係が築くことができるとは限らない。さらには、痛みで声を上げずにはいられなくなるようなトラップが仕掛けられているなど、切迫感はかなりなものとなっている。

 音を頼りに獲物を探すクリーチャーとの戦いは、ステルスアクションゲームとの親和性が非常に高い。キャラクター同士が織り成すドラマや、生き抜くために身の回りにあるものを全て活用するサバイバル要素もあり、ゲーム化する条件を十分に満たしている作品になっていると言えるだろう。

 

課題は他作品との差別化ができるかどうか

 音に反応するクリーチャーといえば、「バイオハザード」シリーズのリッカーや「The Last of Us」シリーズのクリッカーなどが挙げられる。ゾンビの突然変異であるリッカーは、視覚を失った代わりに聴覚が異常に発達しており、獲物の物音を聞きつけると鋭く長い舌を鞭のように伸ばして襲い掛かって来る。

 近くにリッカーがいる場合は足音を立てないよう慎重に進んでいく必要があるが、その緊張感はかなりのもの。リッカーとの遭遇ポイントは建物内の狭い通路であることが多く、近づきたくなくても近づかざるを得ないという、嫌らしいシチュエーションをプレイヤーに突きつけてくる場面も多々ある。

 2022年公開予定の『バイオハザード: ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』のPVでは、リッカーを目にした登場キャラクターが大声で叫んでしまうというシーンが用意されていた。リッカーの前では物音を立ててはいけないというルールを逆手に取り、観客にインパクトを与える捻りが加えられているというわけだ。

  「The Last of Us」シリーズ に登場するクリッカーは、頭部にグロテスクなキノコを生やしたような、見る者に強烈な生理的嫌悪感を抱かせる姿をしたクリーチャー。「ア゙ア゙ア゙」とクリック音のような鳴き声を発し、獲物の位置と周囲の地形を把握する。捕まると(基本的には)ゲームオーバーになってしまうため、クリッカーが出現するマップの移動では細心の注意が必要となる。

 対策として瓶やレンガを遠くに投げて誘導するほか、ナイフによるステルスキル、発射音が小さい弓やサイレンサー付きの重火器などの攻撃手段が用意されていた。また、対立するコミュニティーがいる場所に瓶を投げ込むなどわざと音を立て、クリッカーの群れを引き寄せるといった戦略もあった。

 そのほか、『零 zero』の目隠し鬼の霊や、映画『サイレントヒル:リベレーション』のナース(原作『サイレントヒル』では、光に反応する設定)なども該当する。音に反応するクリーチャーは、いずれの作品でもプレイヤーの緊張感を高める装置的な役割を持つが、作品全体を通して登場するシーンは限られている。

 一方で、『クワイエットプレイス』に登場するクリーチャーは、音に反応する性質を持つ者のみ。原作の設定をどのようにしてゲームに落とし込み、他作品と差別化を図るのかは、課題のひとつとなるだろう。

 『クワイエット・ プレイス』シリーズのゲーム版は、現在「iLLOGIKA」、「EP1T0ME」、「Saber Interactive」の3社により開発が進められている。

 Saber Interactiveは、過去に『WORLD WAR Z』のゲーム版をリリースしているほか、現在は『死霊のはらわた』のゲーム化作品である『Evil Dead: The Game』の開発にも携わっているなど、実績のあるディベロッパーだ。

 ちなみに、『WORLD WAR Z』の最新拡張パックである『Aftermath』日本語版の配信は、12月23日に決定している。

 『クワイエット・プレイス』のゲーム版は、2022年にリリース予定。映画版と同じ世界を舞台に、オリジナルのエピソードが展開していくとのこと。シリーズをまだ観てないという方は、ぜひ前2作をチェックして、ゲームのリリースに備えてみてはいかがだろうか。

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島中 一郎(Ichiro Shimanaka)
島中 一郎(Ichiro Shimanaka)https://www.foriio.com/16shimanaka
ライター。ゲーム・アニメ業界を中心にニュース記事の執筆、インタビュー、セミナー取材などマルチに担当。ボードゲームが趣味であり、作品のレビューや体験会のレポートを手掛けるほか、私生活で会を催すことも。無類のホラー好き。

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