『のびのびTRPG ソード』『のびのびTRPG マジック』レビュー。TRPG初心者に優しくランダム性の高いストーリー展開が魅力

 アークライトより12月23日(木)、『のびのびTRPG ソード』(以下、ソード)と『のびのびTRPG マジック』(以下、マジック)を発売した。本作は、シナリオブックやキャラクターシートといった一切の事前準備を不要で、TRPG(テーブルトーク・ロール・プレイング・ゲーム)の雰囲気をお手軽に楽しめる「のびのびTRPG」シリーズ最新作。

 プレイ人数は1~5人で、プレイ時間は30~60分ほど。『ソード』では戦士や侍といった剣や武器に関係する職業が、『マジック』では魔法使いや神官といった魔法に関係する職業のキャラクターが登場。中世ヨーロッパ風ファンタジー世界をテーマに、ランダム性の高い物語が展開していく。

 本稿では、そんな『のびのびTRPG ソード』と『のびのびTRPG マジック』の魅力について紹介していく。

 

ファンタジー世界の魅力がギュッと詰まったTRPG

 TRPGは、ゲームを主導するGM(ゲームマスター)によるシナリオをもとに、参加者が様々なシチュエーションについて協力(時には対立)しながら物事を解決していく過程を楽しむ作品だ。

 参加者はそれぞれの登場人物になりきったロールプレイ(演技)を行い、物語は基本的には会話主体で進んでいく。近年では殺人事件を題材にしたアナログゲーム「マーダーミステリー」がブームになっていることもあり、その流れからTRPGにも興味を持ったという方も多いのではないだろうか。

 今回紹介する「のびのびTRPG」シリーズの第1作目が発売されたのは、2016年のこと。個人サークル「辺境紳士社交場」よりリリースされた本シリーズは、2017年にアークライトよりホラーテイストが加えられた『のびのびTRPG ザ・ホラー』が商業版第1弾としてリリース。

 2018年にはビクトリア朝のスチームパンクをテーマにした『のびのび TRPG スチームパンク』が発売。シナリオやGMの準備が不要であり、TRPG初心者にピッタリな作品だと大きな話題を呼んだ作品だ。

 シリーズ最新作となる『ソード』と『マジック』の舞台は、前述した通り中世ヨーロッパ風ファンタジー世界。最近の流行である“なろう系”作品の世界観とも共通するものがあり、アニメやゲームが好きな層にとって、より親しみやすい作品となっていると言えるだろう。

▲画像は左から『のびのびTRPG ソード』、『のびのびTRPG マジック』

 11月20日と21日に行われたアナログゲームイベント「ゲームマーケット2021秋」のアークライトブースでは、『ソード』&『マジック』の展示スポットが設置。そのほか、人気YouTuberグループである「驚天動地倶楽部」による紹介動画など、発売前には様々なPRが行われていた。

 

 それでは、本作の遊び方について紹介していこう。

 プレイヤーはまず、自身の分身となる「PCカード」を選択する。職業は全14種類で、能力やスキルなどそれぞれ違う内容が割り当てられている。PCカードにはそれぞれ今野隼史氏による可愛らしいイラストが描かれており、キャラクターがどのような性格なのかイメージが湧きやすく、ロールプレイがしやすい作りとなっている。

▲剣士や魔法使いといったオーソドックスな職業なほか、パン屋や貴族、鍛冶屋、さらには魔王など、ユニークなキャラクターが用意されている。

 物語の冒頭は、「イントロダクションカード」により決定。カードには「試練の迷宮へ向かう」といった内容から、武闘大会への参加、キーアイテムを探す物語など、実に様々。カードに書かれたテキストを全員に聞こえるように読み上げ、いよいよゲームがスタートとなる。

▲イントロダクションカード

 ゲームはプレイヤーが順番に「場面カード」を引くことで進行していく。場面カードにはモンスターとの対峙や、強そうな魔物の集団に襲われている人を救うかどうかなど、様々なシチュエーションが記載。

 戦闘シーンだけでなく、ダンジョンの探索や村長からの依頼といったサブクエスト、仲間との会話、カジノなど、バラエティに富んだ数々のシナリオが用意されている。ランダムなシーンを組み合わせて1つの物語にしていく過程が楽しく、ゲームごとに新鮮なプレイフィールが楽しめるような仕組みになっているというわけだ。

▲場面カードにはそれぞれフレーバーテキストとシーンのイラストが書いてあるため、シーンの想像がしやすい。

 場面の判定は、基本的にはダイスの出目によって決定する。例えば、ダイスの出目とキャラクターのステータスを足して、場面カードごとに設定された目標値を上回っていたら成功という具合だ。

▲ダイスを振る際のドキドキ感が楽しい。ダイスを振る前に、職業によってはスキルを使用するといった戦略もある。

 判定について、ダイスではなくプレイヤーにロールプレイを要求する場面もある。例えば「大切なもの」という場面カードでは、プレイヤー達に立ちはだかるボスが、「この世界になんの価値がある?」と問いかける場面があり、プレイヤーの答えによって成否が決定する。

 面白い仕掛けだと感じる人もいる一方、TRPGが苦手な人はとっては敷居が高いように感じるかもしれない。しかし、カードには「一言でだいじょうぶ。本当の答えとはそういうものだ」といったメッセージが添えられており、プレイヤーの心理的なハードルをグッと下げてくれるような工夫が盛り込まれている。本作のタイトル通り、“のびのび”と緩く進められる雰囲気作りが徹底されているのだ。

 判定に成功すると魅力的な特徴が書かれた「光カード」が、失敗すると癖の強い特徴が書かれた「闇カード」がキャラクターの設定として付け加えられていく。得られた特徴によって場面カードの成功率が増減すると同時にキャラクター性の深掘りができるようになっており、物語への没入がしやすいようになっている。GMが手番ごとに交代するというシステムも、プレイヤー同士の連帯感に上手く繋がっているように感じた。

 プレイヤー全員が3回ずつGMを担当したところで、物語の最後のエピソードを決める、「クライマックスカード」を引くことになる。クライマックスカードには物語のラストに相応しく、冒険中に入手した光・闇カード、冒険中のエピソードをフルに活用する必要がある展開が用意されている。「まさかあのシーンが伏線になっているとは……!」と、思わず熱くなってしまうこと請け負いだ。

 プレイ時間も30~60分と短く、サックリ遊べてしまうのも嬉しいポイント。『ソード』を遊んだら『マジック』で、『マジック』を遊んだら2作品を混ぜてプレイするなど、ディープにやり込んでいく楽しみもある。

 前作『のびのび TRPG ザホラー』や『のびのび TRPG スチームパンク』を混ぜて、世界観や時代をごちゃまぜにしたカオスな楽しみ方もできるなど、ルールがシンプルが故に、遊ぶたびに違ったプレイフィールが楽しめるようになっている。

▲遊び方説明書もイラスト付きで、分かりやすくコンパクトにまとめられている。

 本作のお勧めのプレイ人数は3~5人となっているが、2人または1人で遊ぶことも可能だ。1人で遊ぶ場合はカードをもとに物語を書くという変則的なプレイが推奨されており、ノベルなどを執筆している方にとって役立つツールとなるかもしれない。

 ゲームの進行役が不要なうえルールがコンパクトにまとめられており、初心者から経験者まで誰もが楽しめる作品に仕上がっている『ソード』&『マジック』。ぜひ本作をプレイして、ファンタジー世界を自由自在に冒険する楽しさを味わってみてもらいたい。

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島中 一郎(Ichiro Shimanaka)
島中 一郎(Ichiro Shimanaka)https://www.foriio.com/16shimanaka
ライター。ゲーム・アニメ業界を中心にニュース記事の執筆、インタビュー、セミナー取材などマルチに担当。ボードゲームが趣味であり、作品のレビューや体験会のレポートを手掛けるほか、私生活で会を催すことも。無類のホラー好き。

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