本稿では、「LIVEOPSIS」で確認できるランキング上位タイトルのアプリから、リリース後好調なアプリ『白夜極光』の運用施策を分析し、紹介する。
一筆書きのパズル要素を取り入れたRPG
リリース日:2021年6月17日
配信:Tencent Games
『白夜極光』は、Tencent Gamesが配信、TourdogStudioが開発するスマートフォン向けアプリ。本作は“ラインストラテジーRPG”と銘打たれ、一筆書きの要領で同じ色のマスをつなぐことでキャラを動かして戦うのが特徴。パッと見で、システムの類似性があるタイトルは『ポコロンダンジョンズ』が挙げられるだろうか。
シンプルな操作ながら、マスをなぞって繋げる爽快なコンボと、キャラの個性的なスキルを組み合わせる編成が楽しく、奥深い戦略性を感じさせる。
また、光と闇の対立を描いた重厚なストーリーや、さまざまなキャラクターも魅力のひとつ。登場するキャラクターとは交流もでき、一人ひとりにアニメーションも用意されている。
本作には周回用にオート戦闘が実装されているものの、基本的には各ステージの初回クリアまでは手動で攻略する必要がある。オート操作に偏りがちなスマホアプリの中にあって、手軽さはありつつも“確かにプレイしている感覚”がある骨太な作品だ。
そんな本作はサービス開始3日でグローバル累計200万DLを達成。日本国内で事前登録者数が100万を超える注目度の高さで、実際のセールスランキングもTOP10前後に位置する好調さを見せていた。
世界最大規模のTencent Gamesが配信するタイトルだけあって、SNSや各種配信サービスでの露出も多い本作の運用施策を確認していきたい。
2ヵ月で事前登録者数100万人を達成
まずは、リリース前後のプロモーション施策をまとめた。広告出稿の数はもちろん、インスタントウィンの規模感の大きさ、リリース前にキャラクターを獲得できる「事前登録ガチャ」などの取り組みが印象的だ。
【リリース前後のトピック】
2020年10月12日:公式Twitterアカウント開設
2020年12月30日:「エアコミケ2」に出展
2021年3月18日:クローズドβテスト開催
2021年4月12日:事前登録受付開始
2021年5月28日:事前登録者数が100万人を突破
2021年6月1日:事前登録ガチャ開始
2021年6月16日:TVCM公開
2021年6月17日:サービス開始&無料ダウンロードランキング1位
2021年6月19日:屋外広告を出稿
Twitter上では、Amazonギフト券や公式グッズが当選するフォロー&RTキャンペーンを多数実施。
リリース直前期にはカウントダウン形式のキャンペーンも行い、注目を集めた。
全体的に、Amazonギフト券1万円分×25名や、1000円分×108名を10日間毎日など、キャンペーンの規模は大きめ。これらCBTキャンペーンやリリース直前期のキャンペーンでは、安定して1万前後のRT数を稼いでいた。
そのほか、担当声優の直筆サイン色紙のプレゼントキャンペーンも複数回実施。
結果、多くのユーザーに本作が認知され、事前登録者数は受付開始から10日で20万人、2ヵ月で100万人を達成した。
事前登録キャンペーンで配布される報酬を以下にまとめた。ゲーム内アイテムやゲーム内で使えるアイコン、家具などが用意された。
【事前登録キャンペーンの報酬】
「白夜コイン×3,500」(ゲーム内通貨)
「星標×2」(ガチャチケット)
「記念アイコン」(ゲーム内で設定できる)
「匿名ギフト袋×5」(好感度上昇アイテムがランダムで入手できる)
「匿名ギフトパック×5」(好感度上昇アイテムがランダムで入手できる)
「白夜コイン×8,000」
「記念家具」(ゲーム内の拠点に設置できる)
「光珀×600」(ガチャに使用する)
また、リリースの約2週間前となる2021年6月1日からは、公式サイトで「事前登録ガチャイベント」を開催した。これは、1日に3回トライできるガチャを引くと、サービス開始後に排出されたキャラクター1名を獲得できるというもの。TwitterもしくはFacebookにシェアすると追加で1回引くことができ、さらに★5キャラクターの排出率が2倍になる。
特筆すべきは、排出される20種のキャラクターのひとりである★5「ロビン」がサービス開始後180日間は入手不可の先行入手キャラクターだということ。サービス開始直後は事前登録ガチャでのみ獲得できるため、入手したユーザーにとってはかなり特別感のあるものとなる。
無料ストアランキング1位と、グローバルの数字だがリリース後3日間で200万ダウンロードを達成していることからも、少なからず「事前登録ガチャイベント」がコンバージョンに寄与していることはうかがえる。
リリース後は屋外広告や電車広告も掲載開始。オンライン、オフラインの両軸で認知度を高めていく動きだ。
Twitter上ではほかに、さまざまなイラストレーターと連携してPRイラストを拡散する動きも見られる。
マネタイズはシンプル。有償石周りがやや煩雑か
ゲーム内施策は特に変わったことはしておらず、リリース直後はスタートダッシュに有効な初心者向けのパック販売やキャラクターのピックアップイベント実施がメインだ。
本作の主なマネタイズはクリスタルの販売。クリスタルは召集(ガチャ)に必要な「光珀」と1:1で交換でき、実質的にガチャに使用するアイテムとなる。
【クリスタルのラインナップ】
90個(120円)<単価:約1.33円/割引率0.0%>
500個(610円)<単価1.22円/割引率8.3%>
1565個(1,840円)<単価:約1.18円/割引率11.3%>
3130個(3,680円)<単価:約1.18円/割引率11.3%>
5200個(6,100円)<単価:約1.17円/割引率12.0%>
10500個(12,000円)<単価:約1.14円/割引率14.3%>
割引率はそこまで高くないものの、いずれも初回チャージはクリスタルの量が2倍になっているため、その際はかなりお得。
そして、本作のガチャは「光珀」で「召集星標」(ガチャチケット)を購入して引く形となる。
そのため、クリスタルを購入する場合のガチャまでのフローは、クリスタル購入(ガチャ1回分:400円相当)「クリスタル」→(1:1交換)「光珀」→(300:1交換)「召集星標」→ガチャを引く(1回につき1枚)となる。2回も交換を挟むため、やや煩雑な仕様。
排出確率は★6(2.0%)>★5(9.5%)>★4(33.0%)>★3(55.5%)となる。50回連続して★6が排出されなかった場合、次以降のガチャで1回ごとに2.5%ずつ排出確率が上がる(51回目:4.5%→52回目:7%)。★6が確定するのは90回目(単純計算で36,000円相当)となり、★6が排出された時点で確率は2%に戻る。
リリース直後は★6「カレン」と★6「ウリエル」のピックアップガチャが開催された。
基本の仕様は通常のガチャと同じだが、ピックアップ対象の排出確率が★6の排出確率(初期2.0%)の中から50%の確率で登場する。
課金タイミングとしては、新しいキャラクターが欲しいときはもちろんだが、お気に入りのキャラクターを最大まで強化したい場合にも考えられる。
本作の強化要素「光霊突破」は、スキルの強化やパラメータの上昇が見込めるシステムなのだが、★4キャラクターを「突破」したい場合は同キャラの被りが必要になる。そのため、排出確率2%の★6キャラクターを最大まで強化しようとするとかなりの回数ガチャを引く必要があるため、課金動機になるだろう。
ちなみに、チュートリアルをクリアすると確定で★6キャラクターが1体入手できるほか、★5以下のキャラクターにも活躍の機会が多いので、肌感では序盤のステージを進めるだけならあまりガチャを引く必要はなかった。課金必須のバランスではないため、ユーザー目線だと好印象だ。
現在は、キャラクターの新スキンも実装するなどマネタイズに寄与する施策も展開。宣伝規模の大きさとゲームの完成度を含めて、『白夜極光』のリリース直後は好発進だった。
2D・アニメ的表現の代表作がこれまでにあまりなかったイメージの同社だが、今回「白夜極光」のヒットを受けて、今後の運営に関しても動向が気になるところである。
©Tencent Games