『終末のアーカーシャ』分析。世界の“名著”を擬人化させた独特の世界観が特徴

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 本稿では、2021年7月29日よりリリースを開始し、App Store人気無料ゲームアプリランキングとGoogle Play人気無料ゲームアプリランキング両方で1位を獲得した『終末のアーカーシャ』の運用施策を分析し、紹介していく。

 

世界の“名著”を擬人化させた独特の世界観

『終末のアーカーシャ』
リリース日:2021年7月29日
提供:NetEase Games

 本作のプレイに関してはまず、2つのサプライズが待ち受けている。1つは王道を裏切るようなストーリー展開で、これは作品に対する期待や没入感を高めることに成功している。きっと多くのプレイヤーが満足できるサプライズになっていることだろう。

 一方で、2つ目のサプライズは、人によっては好みが分かれてしまうかもしれない。何故なら、ファンタジー感溢れるキャラクターや舞台設定を前面に押し出していながら、ゾンビのようなクリーチャー(作品内では、怪物や不死者という記載)が溢れる終末世界を舞台としているからだ。

 物語の序盤では、スーパーを拠点にテントを立てて生活する生き残りの人々が身を寄せ合っている描写や、物資を補給するために外を探索する描写があるなど、ゾンビ作品を真正面から捉えたようなストーリーが展開していく。ホラーファンにとってはニンマリしてしまう流れだが、ファンタジックなストーリーを期待していたユーザーは、やや面食らってしまうことだろう。

 ただし、公式サイトには「異次元の世界を歩き回り、入り混じる幻想と現実を体験」するといった記載があり、最初のステージがたまたま、ゾンビはびこる終末世界だっただけのことかもしれない。ともあれ、ファンタジーな見た目を裏切るストーリー展開に、目が釘付けになってしまうプレイヤーも決して少なくはないはずだ。キャラクター同士の会話もテンポよく進み、読み心地の良さも好印象だ。

 主人公の冒険のお供となるのは、世界の“名著”を擬人化させたキャラクターたちというのが、本作の大きな特徴のひとつだ。2014年にSi-phonからリリースされた女性向け恋愛ADV『クローバー図書館の住人たち』にも本を擬人化したキャラクターが登場するが、こちらは専門書や純文学、料理本といった本のジャンルが擬人化するというストーリー。

 一方、本作では、『吾輩は猫である』や『蘭亭序』、『不思議の国のアリス』といった作品そのものを擬人化し、登場させている。例えば、『吾輩は猫である』ではネコ耳の美少女、『蘭亭序』では刀を持った美青年といった具合だ。

 ジャンル名ではなく作品名そのものを擬人化させるという設定は、世界観をより深堀できることに加え、より多くのキャラクターを登場させることにも繋がっており、スマホゲームにピッタリな設定だと言えるだろう。

 キャラクターそれぞれにはレベルや好感度といったステータスが設定されており、好感度に応じた会話イベントが発生するなど、キャラクターゲームとしてもしっかり楽しめる作りだ。レベルが上限に達したキャラは、新たなコスチュームをゲットできるといった要素もある。

 戦闘は、味方キャラクターと敵の位置関係を利用しながら戦う、戦略性の高いシステム。
敵のポジションが分散している場合はスキルの効果を使って1カ所にまとめ、範囲攻撃を仕掛けるなど、いかに効率よく戦うかがバトルのキモとなっている。

 フィールドについても、炎が燃え上がっている地形に敵を誘い込むことでダメージを与えることができたり、爆発して周囲に大ダメージを与えるオブジェクトが用意されていたりと、ギミックが豊富。敵ユニットに関しても、制限ターン内で倒さないと強力なスキルを発動するモンスターや、バフの効果を連発するモンスターが登場するなど、戦略について楽しく頭を悩ませてくれる。

 オートモードでは、キャラクターたちが付近の敵を優先して攻撃するようになるため、フィールドギミックの活用が不可欠な強敵を相手にするにはやや使いづらい。レベリングや素材集めといった要素のためのシステムだと割り切ったほうが良いだろう。また、バトル演出のスピードは2倍速まで設定ができるほか、ストーリーのスキップ機能があるなど、ゲームの遊びやすさの面でも、しっかりと力が入れられている。

 

季節に合わせたイラストの投稿なども

 続いて、本作の事前登録キャンペーンや、リリース後の運用施策について紹介していこう。

【リリース前の施策】

2021年1月21日:公式Twitter開設、CBTエントリー・フォロー&RTキャンペーンを開始
・2021年3月15日:CBT募集期間が、3月31に延長
・2021年4月15日:CBT開始、公式discordグループも開設
・2021年6月25日:事前登録キャンペーン開始
・2021年6月29日:事前登録者数5万人突破
・2021年7月4日:事前登録者数10万人突破
・2021年7月20日:事前登録者数20万人突破
・2021年7月22日:事前登録者数50万人突破
・2021年7月29日:リリース開始、App Store人気無料ゲームアプリランキング1位
・2021年8月2日:Google Play人気無料ゲームアプリランキング1位

 2021年1月21日にCBTエントリー・フォロー&RTキャンペーンを開始。内容は、抽選でアマゾンギフト券2000円分がプレゼントされるというもの。3月15日にはゲームの品質向上を理由に、CBT募集期間の延長を決定。実際には、4月15日からのCBTスタートとなった。

 CBTの開催と同時に、公式discordグループも開設。DMで好きなキャラクターとCBTユーザーIDについて送ったプレイヤーに、毎日抽選10名に召喚100回分のアイテムがプレゼントされるキャンペーンも行われた。

 6月25日より、本作の事前登録キャンペーンがスタート。フォロー&RTと事前登録を完了させることで、アマゾンギフト券やiPad8、iPhone12(256GB)が抽選でプレゼントされた。キャンペーンはリリースが始まるまで、6回に渡って実施。リリース5日前からは、「カウントダウンキャンペーン」と称し、毎日抽選でAmazonギフト券が当たる施策も行われていた。

 事前登録キャンペーンのほか、声優陣による直筆サイン色紙が抽選でプレゼントされる企画や、秋葉原駅の中央改札や電気街口エスカレーターでの広告掲載にも力を入れている。

 キャンペーン施策が奏功し、7月22日に事前登録者数は50万人を突破。7月29日のリリース開始日にはApp Store人気無料ゲームアプリランキング1位を獲得、8月2日にはGoogle Play人気無料ゲームアプリランキング1位を獲得する快挙を成し遂げた。

 また、本作の魅力のひとつとして美麗なキャラクタービジュアルが挙げられると思うが、公式Twitterでは時期に合わせた書き下ろしのイラストが、頻繁に投稿されている。新規のイラストが気になり、ついつい公式Twitterをチェックしてしまうユーザーも、少なくないだろう。

 バレンタインデーやホワイトデーといった定番のイベントだけでなく、「世界図書・著作権デー」や「猫の日 」など、本作の世界観やキャラクターにちなんだイベントを取り上げているのも、ユニークなポイントだ。

 

課金システムは少々複雑ながら、
ユーザーに対するサポートは充実

 本作のマネタイズは少々複雑で、ストアの商品を購入するためにまず、「金枝」と呼ばれる特殊なゲーム内通貨を購入する必要がある。金枝を利用することで、ガチャのために必要な玉葉やギフトパック、キャラクターのスキンが購入できるようになるという仕組みだ。

 玉葉は、一度に多くの枚数を購入するほどお得になるシステムになっているのだが、一番お得な玉葉のセット「6480枚(さらに、オマケとして1620枚がプレゼントされる)」、購入に必要な金枝が、648枚。金枝のまとめ買いができる枚数は6枚、30枚、98枚、148枚、300枚、518枚に設定されており、玉葉6480枚セットを購入するには、518枚+148枚(計666枚)の金枝を購入する必要がある。

 余った金枝は最安値のギフトパックや玉葉の購入に使用できるが、ストアアイテムの購入に必要な金枝は、最低6枚から。それ以下の金枝は、6の倍数になるよう再び金枝を買い増ししない限り、使い道を失ってしまうことになってしまう。そのため、玉葉や好みのキャラクターのスキンを効率よく購入するには、なかなか頭を悩ませてしまうようなシステムになっているように感じてしまった。

 ギフトパックの中には、金枝のまとめ買いができる最高枚数ピッタリで購入できる商品も用意されているため、金枝を余らせたくないのであれば、こちらのパックを購入するのが賢明だろう。特に、月間パスは飛び抜けて破格で、金枝30枚で合計6000枚もの玉葉を受け取ることができるシステムとなっている。金枝と玉葉の枚数について、悩む必要も一切ない。本作での課金を検討する際には、まず初めに月間パスを購入することが、最善の一手になっていると言えるだろう。

 そのほか、初回チャージによるボーナスや、課金金額の累計により期間限定のガチャに必要なアイテムやキャラの成長などに必要なコインなどが手に入るボーナスが用意されているなど、課金に対するサポートは手厚い印象だ。

 ここまですっかり前置きが長くなってしまったが、本作の具体的なマネタイズについて、以下にまとめていこう。

【金枝のラインナップ】

・金枝x6(120円)<単価:約20円/割引率0.0%>
・金枝x30(610円)<単価:約20.3円/割引率-1.5%>
・金枝x98(1960円)<単価:約20円/割引率0.0%>
・金枝x148(2940円)<単価:約19.86円/割引率0.7%>
・金枝x300(5980円)<単価:約19.93円/割引率0.4%>
・金枝x518(10000円)<単価:約19.3円/割引率3.5%>

【玉葉のラインナップ】

・玉葉60枚(玉葉60枚に加え、購入者に“おまけ”と称し6枚がプレゼント)/金枝6枚
・玉葉315枚(玉葉300枚、おまけ15枚)/金枝30枚
・玉葉1080枚(玉葉980枚、おまけ100枚/金枝98枚
・玉葉2280枚(玉葉1980枚、おまけ300枚)/金枝198枚
・玉葉3940枚(玉葉3280枚、おまけ660枚/金枝328枚
・玉葉8100枚(玉葉6480枚、おまけ1620枚/金枝648枚

・月間パス(1か月間統計で玉葉6000枚、スタミナ回復アイテム1500個がプレゼント)/金枝30枚

 10回召喚に必要な玉葉は2300枚で、最初の20回召喚のみ40%オフ(1380枚)のサービスとなっている。玉葉8100枚で、30回召喚が行える計算だ。

 ちなみに、召喚確率はSSRが1.5%、SRが15%、Rが83.5%。SSRは88回召喚すれば必ず1体出現する(総合確立2.04%)ほか、SRは10回召喚すれば必ず1体が出現する仕組み。

 ガチャは玉葉のほかに、真理の鍵というアイテムでも行うことができ、こちらは期間限定で特定のキャラクターの排出率がアップした内容となっている。期間限定のガチャも、通常のガチャの排出率と同じ設定だ。

 世界の名著がそのまま擬人化するというユニークな世界観と、先が見えないストーリー展開など、ユーザーをとにかく驚かせたい、楽しませたいという数々な施策が盛り込まれている本作。

 リリース後も特定のキャラクターの出現率のアップやキャラクターのスキンが手に入るといったゲーム内のイベントだけでなく、賞金総額200万円のイラストコンテストを開催するなど、リアルイベントにも力が入れられている。

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モバイルゲームアプリを専門とする分析会社。モバイルゲーム内運用に関する調査・分析を行うリサーチ事業とコンサルティング事業を展開して、「LIVEOPSIS(ライブオプシス)」というサービス名称で各種ソリューションを提供。サービスに関するお問い合わせは info@spicemart.jp まで。

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