『Hero Wars – Fantasy World』分析。動画広告でも話題の本作の実態は

 スマートフォン向けアプリゲームの日々の運用とその効果を調査し、ゲーム関連企業へ様々データを提供するSp!cemart(スパイスマート)。世界各国のゲーム事業者に利用されている同社のサービス「LIVEOPSIS (ライブオプシス)」では、ランキング推移とゲーム内施策を一覧で閲覧できる「イベントカレンダー」やTwitterトレンド情報、毎月発行の調査レポートなどが提供されている。

本稿では、「LIVEOPSIS」で確認できるアプリの中から、セールスランキングで上昇傾向を見せる『Hero Wars – Fantasy World』の運用施策を分析し、紹介する。

 

オーソドックスな自動戦闘型RPG

リリース日 : 2017年3月31日
配信:Nexters Global

 『Hero Wars – Fantasy World』と言えば、広告でよく目にする「栓を抜いてヒーローを助けるパズルゲーム」のイメージが強いだろう。最近では「敵を倒してタワーを登るパズルゲーム」といったイメージ広告も出稿されている。

 だが実際のゲーム内容は、ヒーロー(キャラクター)を集めて軍団を結成し、訓練と強化を重ねて敵を倒す自動戦闘型のRPG。

▲キャラクターをの装備を整えたり、スキルを強化したりしてパワー(戦闘力)を上げていく。
▲戦闘は基本的にオートバトルで進み、スキルの使用だけキャラクターのアイコンをタップして発動する(それもオートにすることが可能)。
▲海外タイトルゆえか、翻訳はやや機械的。

 

“お得感”で課金ハードルを下げる仕組み

 本作のマネタイズは主にエメラルドの販売となる。エメラルドは英雄の宝箱(ガチャ)やエナジー(スタミナ)の回復、各種アイテムの購入などさまざまな場面で必要になる。

【エメラルドのラインナップ】

・200個(250円)<単価:1.25円/割引率0.0%>
・550個(610円)<単価:約1.11円/割引率11.2%>
・1200個(1,220円)<単価:約1.01円/割引率19.2%>
・2600個(2,440円)<単価:約0.94円/割引率24.8%>
・6800個(6,100円)<単価:約0.90円/割引率28.0%>
・14000個(12,000円)<単価:約0.86円/割引率31.2%>

 上記のエメラルドは初回3倍ボーナス付き。それぞれ1回目の購入時は相当お得にエメラルドを買うことができるため、課金へのハードルが低くなっていることがわかる。

 とはいえ、さらにお得な4倍、6倍セールキャンペーンが定期的に行われたり、突発的に表示されたりするので、お得にエメラルドを買う際は主にそのタイミングを待つこととなる。

 エメラルドを使用して開けることができる“英雄の宝箱”は、1回につきエメラルドを200個、10連で1500個(25%割引)消費する。また、1日1回無料となる。排出確率は基本的に、(ゲーム内表記ママ)伝説のスーパーヒーロー「クリーバー」(0.01%)>宝箱限定ヒーロー(2.99%)>その他の最強キャラクター(8.96%)。なお、キャラクター毎の排出確率となる。

 そして、さらに課金ハードルを下げる仕組みが、VIPランクの存在だろう。最初に課金すると達成される「VIP1」になると、特典としてレイドバトルが無料になる(上がったVIPランクは下がらないので永続)。この“レイド”というのは「一度最高評価でクリアしたミッションをスキップして即クリアができる」ボタンであるため、ゲームをスムーズに進行させるうえ(特に育成)で非常に有用な特典となっている。

▲他タイトルで一般的な「レイドボスに挑む」的なニュアンスではなく、奇襲(Raid)でスキップするということのようだ。

 VIPランクはエメラルドの購入個数に応じて上昇していく。この値は、購入したエメラルドの基本値のみが加算され、x倍などのキャンペーンでボーナスされた個数分はカウントされない仕様。VIPランクが上がると購入するエメラルドの数にボーナスが付くほか、先述のものも含めたさまざまな特典が付与される。最大はVIP15で、必要エメラルド購入数は150,000個となる。

【VIPランク特典の一部を抜粋】

<VIP1:(必要個数)10個>
・レイド(戦闘のスキップ)が可能になる。

<VIP2:100個>
・アウトランド(巨大ボスと戦うコンテンツ)で1日1回追加のバトルできる。

<VIP5:1000個>
・無限レイド(戦闘の一括スキップ)が可能になる。
→1回のタップで複数回のスキップができるため非常に便利。など

 課金コンテンツの中でも人気だと思われるのは14日間の定額制コンテンツ「Valkyrie’s Favor」(610円)だろうか。購入すると、戦闘時のスピードアップや、キャラクターのステータスに大きく関与する“アーティファクト”を強化するためのアイテムが効率的に手に入るようになるなど、さまざまな恩恵を受けることができる。購入者限定の報酬も手に入ることがあるため、定期的に課金を行うプレイヤーが多いとみられる。

 本作はPvP、GvGが存在するタイトルのため、効率的に育成して周りと差を付けるためには、やはりある程度の課金が必要になってくる。対人戦に興味がない人は無課金でもゆっくり進めればヒーローを獲得できるし、ストレスフリーあるいは急ぎたい人ならVIPランク特典やエメラルドを使用して一気にブーストをかけることもできるバランスとなっている。

 

日本向けのプロモ施策は広告出稿のみか

 国内向けのSNS運用などは見られず、『Hero Wars – Fantasy World』を認知するきっかけはほとんどがアプリ内や動画投稿サイト等で表示される広告によるものだろう。ゲーム内容からかけ離れた広告クリエイティブを扱うアプリとしては、かなり早い段階から話題になり、追随する他アプリも多いことからその効果は高いことがうかがえる。

 実際、新しいパターンの広告(本作であればタワーを攻略する広告や日本語のメッセージが表示される広告など)が出稿されたタイミングで、無料アプリランキング、セールスランキングが上昇傾向になっているのが見て取れる。効果が高い限り、今後もそうした広告が増え続けるのだろう。

▲実際のゲームにはまったく関係ないが、タワーにいる敵を倒して自分のタワーを高く積み上げていく内容のバトルが展開される。

 もちろんそれだけではなく、2021年5月に開催されたエメラルド4倍セールなど、ゲーム内のお得なキャンペーン施策があわさった結果でセールスランキングが伸びているのは確かだ。

 『Hero Wars – Fantasy World』はゲームとしては非常にスタンダードながら、あるいはスタンダードだからこそ、印象的なクリエイティブでリーチを伸ばす方針なのかもしれない。だが、その効果の程とは別にユーザーから高い反感を買っているのも事実。

 一方で、本作は広告に登場した「栓を抜いてヒーローを助けるミニゲーム」を後からゲーム内に実装するというユニークな逆転現象も起きている。

 また、本作の広告内容を模したアプリがリリースされて、Google Playストア上で5,000万ダウンロードを突破するなど大きな反響を呼んだこともある。このことから、 “詐欺広告”と呼ばれるクリエイティブが他ジャンルのイメージCMと違い反発されている理由は、「広告の内容で遊んでみたかった」というユーザーの期待の裏返しであることがよくわかる。

▲今までは本作をDLすると、「広告と全然違うゲームだった……」とガッカリするユーザーが多数だったが、「この栓抜きパズルがメインじゃないんだ……」と、ちょっと軽減されたガッカリ(?)に変わっているのかもしれない。ちなみに、ゲーム冒頭とステージクリアボーナスを受け取る際にこのミニゲームが挿入される。

 ゲーム内容とかけ離れたクリエイティブでユーザーを集める手法を扱うアプリとしては、ある意味で先駆者である本作。今後も目にする機会が多いであろう広告の展開に注目だ。

この記事が気に入ったら
いいね ! お願いします

Twitter で
Spicemart
Spicemarthttps://liveopsis.com/
モバイルゲームアプリを専門とする分析会社。モバイルゲーム内運用に関する調査・分析を行うリサーチ事業とコンサルティング事業を展開して、「LIVEOPSIS(ライブオプシス)」というサービス名称で各種ソリューションを提供。サービスに関するお問い合わせは info@spicemart.jp まで。

PickUP !

急成長のNextNinjaが全職種積極採用! 代表・山岸氏が本気で求める人材像とは

[AD]飛躍の時を迎えつつあるNextNinjaは今、全力で新たなチャレンジャーを探している。「全職種積極採用」を掲げる組織戦略と、求める人材像とはいかなるものなのか。代表の山岸氏に直接話を聞いた。

Related Articles

Stay Connected

TOP STORIES