
本稿では、「LIVEOPSIS」で確認できるアプリの中から『フォーセイクンワールド:神魔転生』の運用施策を分析し、紹介する。
PCタイトルをスマホ向けに最適化
リリース日:2021年6月23日
配信:4399 NET
本作は、PC向けMMORPG『フォーセイクンワールド』(2016年にサービス終了済)の世界観を引き継いだ新作スマホアプリ。PC版の世界観を引き継ぎながらもスマホMMOに最適化された仕様で、同じく4399が配信する『魔剣伝説』ライクな遊び心地となっている。

スマホMMOの定番要素はほぼ備わっているため、同ジャンルをプレイしたことのあるユーザーはすんなりとシステムを理解することができるだろう。逆に言えば、クエスト目標のタブをタップしてオート進行を眺めるという、他のタイトルと全く同じ作業になりがちともいえる(本作に限ったことではない)。

他のスマホMMORPGと比べた際に特徴的なのは、まずキャラクターメイクだろうか。他タイトルと比べても、キャラクターメイクで設定できる部位が多く、自由度が高めとなっている。

また、キャラクターの育成要素の目玉として、「戦士」、「牧師」、「魔術師」、「暗殺者」、「銃士」、「血魔」、「遊侠」という7つの職業に加え、「神」と「魔」の2方向にクラスチェンジが可能。実質14種の職業が用意され、プレイヤーの好みによって多彩なカスタマイズが可能。「神」と「魔」の二次転職は自由なタイミングで何度も可能なため、気分で変えることができるのもうれしいポイント。
そのほか、スマホMMORPGにありがちな煩雑なUIはやはり欠点だが、そのUIを非表示にして記念撮影ができるフォト機能などは世界観に入り込める要素として魅力的。

事前登録者数は100万人を突破
続いてリリース前後の施策について。本作の事前登録者数は100万人を突破し、リリース直後にアプリストアの無料DLランキングで1位を獲得。セールスランキングも30位以内にランクインするなど、注目度の高さがうかがえる初速となった。
本作の推しポイントである「神」と「魔」の二次転職を表現したダレノガレ明美さん起用の広告など、インターネット上で目にすることの多かった本作の施策を振り返ってみよう。
【リリース前後のトピック】
2021年3月5日:公式Twitter開設
2021年5月20日:事前登録受付開始
2021年6月15日:CM公開
2021年6月20日:事前登録者数100万人を突破
2021年6月25日:サービス開始
リリース前のプロモーションとしては、1,000円分のAmazonギフト券×10名など小規模なTwitterキャンペーンを実施。おそらくプロモーションのメインは各種SNSや動画配信サイトへの広告出稿だと思われる。
また、キャラクターの声を担当した声優の直筆サイン入り色紙もプレゼント。
全体的にフォロワー数や施策の規模感に対してのRT比率が高めになっている模様。
2021年5月20日からは事前登録の受付が開始。ここからリリースまでの1か月間で100万人の登録者数を達成している。相当なハイペースだが、これはゲーム内報酬と同時にリアル報酬が抽選で手に入るキャンペーンを行ったことが功を奏したということだろうか。

【事前登録数達成報酬一覧】
1万人突破……
- 下級の翼精華×10
- 中級の翼精華×5
- 光明の羽×1
アイテムの説明:翼の強化に必要なアイテム。翼があると飛行ができるほか、経験値に応じてキャラクターのステータスがアップする。
10万人突破……
- 洗練石×10
- R1強化石×30
- 金貨×188888
アイテムの説明:装備の強化に使用するアイテム。
30万人突破……
- Lv.3攻撃宝石×1
- Lv.3HP宝石×1
- Lv.3致命宝石×1
アイテムの説明:各種宝石は、装備に装着することでステータスを上昇させることができる。
50万人突破……
- アイコン「アライグマ」
- フレーム「栄光の証」
- ふきだし「王者の栄光」
アイテムの説明:プレイヤーの装飾アイテム。装備するとステータスが上昇する。
100万人突破……
- 称号「クレイモンドの勇者」
- 騎獣「白狼」
- 騎獣の魂×66
アイテムの説明:騎獣はいわゆるマウントで、ステータスにも影響する。「騎獣の魂」は騎獣のランクアップに必要なアイテムで、ランクアップすると見た目などが追加される。
以上のように、事前登録者数ごとに報酬を用意。正式リリース直前に100万人を達成し、ゲーム内で報酬が配布された。また、事前登録者限定でMacBook Pro、iPhone12 ProとPS5が抽選で当たるキャンペーンをあわせて実施。
初回購入で強力な装備が手に入る
さて、本作の主なマネタイズはアニマの販売となる。アニマは装備やスキン、強化アイテムの購入などさまざまな場面で使用する。本作は後述の「サプライズガチャ」以外のガチャ要素が薄いタイトルで、アニマはキャラクターの育成の効率を高める側面が強い。
【アニマのラインナップ】
・60個(120円)
・300個(610円)
・680個(1,220円)
・980個(1,840円)
・1280個(2,440円)
・1980個(3,680円)
・3280個(6,100円)
・6480個(12,000円)
いずれも初回購入時はアニマ2倍ボーナス付きのため、非常にお得。

初回購入時には強力な装備と限定スキンがセットになった特典が手に入るため、最初の課金へのハードルが低くなっている。特典目的で少額課金(60アニマ)をしているユーザーは多く、コンバージョンに寄与していると見られる。

アニマの使い道として人気なのは、「神魔特権」だろうか。週間パスや月間パスでアニマが還元されるほか、モンスター討伐時の経験値上昇などの効果が追加されるため、キャラクターの育成を効率的に進めたいプレイヤーにとっては魅力的。

累計課金額に応じて特典がある貴族特権(VIP)も採用されている。貴族特権が上昇するとドロップ確率上昇、強化の成功確率上昇、一部ボスのダンジョン無料入場などの恩恵が受けられる。

本作はPvP要素もあるタイトルであることから、他のユーザーに差を付けるために課金をするという形になる。課金額の分だけ強くなるPay to Winの傾向が強いタイトルだけに、上位プレイヤーの単価がその分高くなっているのだろう。
「無料1000連ガチャ」というフレーズで訴求。ただし…

本作が注目を集めた理由として、広告で宣伝されていた「1000連無料の新規限定サプライズガチャ」というものがある。
サプライズガチャからはゲームの序盤から役立つアイテムが手に入るようになっているものの、1000連と言う割には特定レベルで30~50回を複数回に分けて引けるといった内容(1000回ガチャを引くには、プレイヤーのレベルを120ほどにまで上げないといけない模様)。
確認すると注釈として書かれているが、ゲームの最序盤にスタートダッシュとして1000連のガチャが引けることを期待したユーザーも少なくなかったと見られることから、「無料1000連」という訴求力のあるワードが独り歩きし、反感を買ってしまっている感じは否めない。
確認できた広告の内容も、ゲーム開始からすぐに強くなれるという意味合いでサプライズガチャが位置付けられていたため、実際の説明と食い違いが出ている形になってしまっている。
PC原作のタイトルをアプリのユーザー向けに快適なオート操作を用意して最適化し、自由度の高いキャラクター育成やフォトアルバムなど魅力的な面もあるだけに、マーケティングで悪印象を与えてしまうのはもったいないところ。
リリース後はフォト機能を生かした取り組みなどで盛り上げをはかっている『フォーセイクンワールド:神魔転生』。本作ならではのゲーム体験が生み出されることに期待だ。
