『二ノ国:Cross Worlds』分析。幻想的なオープンワールドを舞台にしたスマホ向けMMORPG

 スマートフォン向けアプリゲームの日々の運用とその効果を調査し、ゲーム関連企業へ様々データを提供するSp!cemart(スパイスマート)。世界各国のゲーム事業者に利用されている同社のサービス「LIVEOPSIS (ライブオプシス)」では、ランキング推移とゲーム内施策を一覧で閲覧できる「イベントカレンダー」やTwitterトレンド情報、毎月発行の調査レポートなどが提供されている。

本稿では、「LIVEOPSIS」で確認できるアプリの中から『二ノ国:Cross Worlds』の運用施策を分析し、紹介する。

 

リリース直後からセールスランキングで上位に

リリース日:2021年6月10日
配信:Netmarble(ネットマーブル)

 「二ノ国」シリーズは、企画/制作「レベルファイブ」、アニメーション作画「スタジオジブリ」、音楽「久石譲」の豪華スタッフによって生み出された、この世界とは別の場所に存在するもう一つの世界「二ノ国」を舞台とするファンタジー作品。まるでアニメの世界を冒険しているような、臨場感あふれるグラフィックで描かれる壮大な世界が特徴。

 そしてシリーズ最新作の『二ノ国:Cross Worlds』は、ネットマーブルとレベルファイブがタッグを組んで開発したスマートフォン向けMMORPGだ。ネットマーブルといえば、『リネージュ2 レボリューション』や『ブレイドアンドソウル レボリューション』といった大規模なMMORPGを手掛けたゲーム会社。

 特筆するべきは「二ノ国」らしいアニメ調の美麗なグラフィックが目を引く作品になっており、導入から世界観に惹き込まれること請け合い。「世界観紹介ムービー」でのアニメーションの雰囲気が、高いクオリティでゲームに落とし込まれている。

▲実際のゲーム画面。

 ゲーム内容はスマホ向けMMORPGでおなじみの要素を一通りそろえた形となり、他のMMORPGタイトルを遊んだことのあるユーザーであれば特に迷うことなくプレイできるようになっている。

 移動、バトルを含めて基本的にオートで進行させることができ、会話や一部のアクションで手動操作が求められる仕様。PvEのほかにPvP、GvE、GvG要素もあるなど、多人数で遊ぶコンテンツが多数用意されている。

▲片手間にプレイできるオート機能を搭載。一部の手動操作しなければいけない場面では自分のキャラクターの頭上に吹き出しが表示され、教えてくれる。

 全体的に目新しさを感じる要素は少なく、これまでのお手軽に遊べるスマホ向けMMORPGをしっかり踏襲したという印象。

▲かっこいい、かわいいキャラクターが戦闘で動いている姿を眺めるだけでも楽しい。

 そんな『二ノ国:Cross Worlds』は、2021年6月のリリース直後にセールスランキングにおいて最高5位まで浮上し、その後も10位圏内でキープ。もともとのIPタイトルとしての注目度が高かったことも考えられるが、いちど運用施策を振り返ってみたい。

▲アプリ分析ツール「LIVEOPSIS」より

 

アンバサダーキャンペーンで熱量維持か

【リリース前後のトピック】

・2020年8月28日:公式サイトオープン
・2020年9月26日:東京ゲームショウ2020で特別生放送を配信
・2020年9月22日:一般からアンバサダー募集を開始
・2021年4月14日:事前登録開始
・2021年4月16日:TVCM放映開始
・2021年6月9日:事前ダウンロード開始
・2021年6月10日:サービス開始

 Twitter上のキャンペーンでは、Amazonギフト券の抽選プレゼントを実施。ビデオ通話風のクリエイティブが印象的で、ハッシュタグと共にクイズに答える形式のものだった。

 「TGS2020」の特別生放送では三森すずこさんや千葉翔也さんが登場し、さらにゲストとして神谷浩史さん、花澤香菜さんが出演。本作の豪華声優陣をアピールし、注目を集めた。

 特筆すべき試みとしては、スペシャルグッズがリターンとなるアンバサダーキャンペーンを実施していたこと。アンバサダーに登録(メールアドレスが必要)すると、二ノ国オリジナルデザインの「パスポート」を発行することができ、ニュースレターによって最新情報がいち早く確認できた。

 ニュースレターの閲覧やアンケートへの参加といった行動で「アンバサダーポイント」が溜まり、アンバサダー限定グッズへの応募や専用アイテムの購入もできた。また、「TGS2020」の開催にあわせて、アンバサダー登録者限定でTGSオリジナルグッズがプレゼントされる機会があるなどさまざまな特典が用意。

▲アンバサダー専用のパスポートをインターネット上で生成できる。

 さらにTwitter上でもAmazonギフト券が当たる「パスポート共有キャンペーン」を展開。

 「TGS2020」の特別生放送が行われた2020年9月から、事前登録・TVCM放映開始の翌年4月までは大きな動きがなかったものの、アンバサダー登録をしたユーザーにニュースレターを定期的に届けることで、熱量を維持したと考えられる。

▲特別感のあるクリエイティブでユーザーの熱量を維持。

 以下にニュースレターの公開時期をまとめた。「vol. 2」からは隔週で火曜日に必ず更新し、定期的に新情報を供給していたことがわかる。

【ニュースレターの公開時期一覧】

・2020年9月23日 vol. 1
・2020年10月6日 vol. 2
・2020年10月20日 vol. 3
・2020年11月3日 vol.4
・2020年11月17日 vol.5
・2020年12月1日 vol.6
・2020年12月15日 vol.7
・2020年12月29日 vol.8
・2021年1月12日 vol.9

 そして、リリース後もニュースレターは「シーズン2」として継続。毎月第2週目/第4週目の水曜日に更新される予定で、初回は「vol.1」~「vol.5」が公開され、各クラスの解説や担当声優のスペシャルインタビューが掲載。

 以下のリンクからシーズン1を含めた全ての「ニュースレター」が閲覧可能なので、実際の記事を確認してほしい。雑誌風の非常に凝ったクリエイティブとなっていて、読んでいて非常に楽しい。


 そのほか、豪華声優陣の直筆サイン色紙プレゼントキャンペーンも実施。

 なお、新情報が少ない2~3月上旬は大喜利やルーレットイベント等、ユニークなキャンペーンを行っていた。

 4月の事前登録開始以降は、電動自転車やスペシャルグッズなどのリアル報酬を用意したフォロー&RTキャンペーンを実施。

 さらに事前登録とあわせて、本作の音楽を担当している久石譲氏を起用したTVCMを放映。リリースに向けて露出を増やしていた。

https://www.youtube.com/watch?v=lbk-p5SGkH4

 そして、リリース直前期にはAmazonギフト券の総額も大幅にブースト。1000円分×10~50名のパターンが主だったところが、2000円分×296名に増加し、RT数も5.5万と相当の盛り上がりを見せた。

 なお、リリース時点での『二ノ国:Cross Worlds』公式Twitter(@NinoKuniCW)のフォロワー数は約32万。このことからも、本作の認知度、注目度の高さがうかがえる。

    

さまざまなパッケージを販売

 本作では、ショップに遷移するとユーザーのプレイスタイルを診断する簡単なアンケートに回答できる。質問に答えると、選んだ選択肢によっておすすめ商品が表示されるという導線が敷かれている。

 さて、そんな本作のマネタイズは主にダイヤの販売となる。ダイヤは装備・イマージェン(ペット)・コスチュームが排出される各ガチャなどで使用する。ダイヤが無料で手に入る頻度は少なめで、各ガチャを引く際は課金が必要になる場面が多い。

【ダイヤのラインナップ】

・40個(120円)<単価:3円/割引率0.0%>
・210個(610円)<単価:約2.90円/割引率3.3%>
・435個(1,220円)<単価:約2.80円/割引率6.7%>
・905個(2,440円)<単価:約2.70円/割引率10.0%>
・1150個(3,060円)<単価:約2.66円/割引率11.3%>
・1850個(4,900円)<単価:約2.65円/割引率11.7%>
・3780個(10,000円)<単価:約2.65円/割引率11.7%>

 以上のように、ダイヤ単体の販売はあるが割引率は低めの設定。かわりに本作のショップにはお得なパッケージ商品が多くラインナップしているため、そちらを購入するユーザーが多いと見られる。

 サービス開始直後の現在は、召喚(ガチャ)チケットとゲーム内通貨がセットになった「ルーキーパック」(490円)や「スターターパック」(490円)、ダイヤと「やみつきカスタード(バフアイテム)」等がセットになった「ウェルカムパック」(250円)といった商品が人気だと考えられる。詳細は画像を参照。

※購入はアカウントにつき1回限り
※購入はアカウントにつき1回限り
※購入はアカウントにつき1回限り
▲ゲームスタート直後には、定番の時限付きセールパックも販売。召喚チケットと、バフアイテムのセットがお得に購入できるため、最初の課金先として利用されることも多いだろう。

 また、ゲームの進行によってアイテムが還元される「レベル達成パック」「エリア達成パック」も販売。ほとんどのユーザーが育成序盤の現在は、「レベル達成パックvol.1」(3,060円/レベル1~25のキャラクター向け)のような商品が人気だろうか。

 「レベル達成パックvol.1」を購入すると900ダイヤ(約2,400円相当)と「やみつきカスタード」「ピーチミルク」(共にバフアイテム)が即時でもらえ、その後合計で「イマージェン召喚チケット」×30、「装備召喚チケット」×15、600ダイヤ、「魔法書:ファントムシューター」(スキルを習得できる)が入手可能。コスパが非常に良いため、多くのユーザーに訴求していると思われる。

 そして、ダイヤや召喚チケットで引けるガチャは4種類(実質的には3種類)。タブとしては「イベント」、「装備」、「イマージェン」、「コスチューム」に分かれている。

 「装備召喚」はキャラに装備できる武器・防具が排出されるガチャ。1回につきダイヤ100個(300円相当)もしくはチケット、10連でダイヤ1000個(3,000円相当)が必要となる。

 装備は最も戦力に直結するため、最もガチャを引く機会が多くなると考えられる。ガチャで排出されるレアリティは★2~★4で、排出確率は上から順に★4(4%)>★3(36%)>★2(60%)となっている。100回引くとひとつ★4装備が確定する。ちなみに、装備は武器3種、防具4種を設定する仕様。

 「イマージェン召喚」は、冒険のお供としてサポートしてくれるペットシステムに準ずる「イマージェン」が排出されるガチャ。「装備召喚」と同じく、1回につきダイヤ100個(300円相当)もしくはチケット、10連でダイヤ1000個(3,000円相当)が必要となる。

 「イマージェン」にはそれぞれ異なったスキルが備わっていて、冒険を進めるうえで強力なパートナーとなるため重要な存在。ガチャで排出されるレアリティは★2~★4で、排出確率は上から順に★4(4%)>★3(36%)>★2(60%)となっている。100回引くとひとつ★4が確定する。なお、「イマージェン」は最大3体まで編成できる。

 「コスチューム召喚」はキャラクターの見た目を変える「コスチューム」、そして「衣装素材」「染色薬」が排出されるガチャ。内容は髪型、衣装、メイク、それらの色を変えるアイテムなどさまざまだが、ゲームの攻略には直接かかわらない要素となる。

 本作はアニメ調のキャラクターが魅力的で、自キャラ愛の強いプレイヤーも多くいると考えられることから、周りと見た目の差別化を図るといった理由が課金動機にもなるだろう。ガチャには1回につきダイヤ70個(210円相当)、10回で700個(2,100円相当)が必要となる。

 排出確率は、コスチューム(5%)>染色薬・衣装素材(95%)。衣装素材を集めることで、コスチュームの製作をすることが可能となっている。

 「イベント」のガチャはおそらく開催されるイベントに合わせて「装備」、「イマージェン」、「コスチューム」のいずれかがピックアップされるタブになっているのだろう。リリース直後のイベント「★4 スイ」のイマージェンが登場するガチャとなっていた。

    

アクシデントが評判には少し向かい風か

 本作は遊びやすく調整されたスマホ向けMMORPGといった印象だが、ゲームの内容に関係ない出来事として、リリース直後にはプライバシーポリシーに関する記載で行き違いがあり、ユーザーから不安視されるというアクシデントが発生していた。

 とはいえ、「二ノ国」が作り出す世界観は確実にユーザーに訴求し、証拠としてセールスランキングも好調。カジュアルに楽しめるスマホ向けMMORPGはアプリ市場で人気が高いジャンルのひとつのため、今後も上位を維持できるかもしれない。

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モバイルゲームアプリを専門とする分析会社。モバイルゲーム内運用に関する調査・分析を行うリサーチ事業とコンサルティング事業を展開して、「LIVEOPSIS(ライブオプシス)」というサービス名称で各種ソリューションを提供。サービスに関するお問い合わせは info@spicemart.jp まで。

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