『商人放浪記』分析。いわゆる“成り上がり系”だが、水墨画風のグラフィックやクリッカーゲーム要素で差別化図る

 スマートフォン向けアプリゲームの日々の運用とその効果を調査し、ゲーム関連企業へ様々データを提供するSp!cemart(スパイスマート)。世界各国のゲーム事業者に利用されている同社のサービス「LIVEOPSIS (ライブオプシス)」では、ランキング推移とゲーム内施策を一覧で閲覧できる「イベントカレンダー」やTwitterトレンド情報、毎月発行の調査レポートなどが提供されている。

本稿では、「LIVEOPSIS」で確認できるランキング上位タイトルのアプリから、リリース後10ヶ月が経過し、ジワ売れを続けている『商人放浪記』の運用施策を分析し、紹介する。

  

古代中国で商人として成り上がる

リリース日:2021年2月25日
配信:37GAMES

 『商人放浪記』は、古代の中国で商売に挑み、大富豪を目指す経営RPG。プレイ感覚は『Cookie Clicker』のような、いわゆるクリッカーゲームと呼ばれるものになる。また、同じく37GAMESが配信する『日替わり内室』とは、美女、跡継ぎといった部分を含めて大方のシステムは似た形の成り上がり系。

 水墨画風の表現で古代都市の街並みが再現されているのが特徴で、独特かつ美麗なイラストが本作特有の雰囲気を作り出している。

 ゲーム内では「両替屋」、「書物屋」、「米屋」などの施設を経営し、さまざまな手段で「銀両」(通貨)を増やしていく。

▲最も基本的な施設「両替屋」は、施設を直接タップすると収益が発生する。施設のレベルを上げることで収益が上がるほか、自動タップで時間毎の収益を伸ばすこともできる。

 獲得した「銀両」はさらに施設の建築に費やして、収入速度を上げることができる。はじめは緩やかな上昇だった収入速度が、ゲームを進めていくことで爆発的にインフレしていくのが気持ちいいところ。

 また、「家来」の育成も収入速度を上げるうえで重要。家来は施設に派遣して売り上げにバフがつけられるほか、銀両を消費して行う「貿易」などで戦闘力のような役割を果たす。

▲家来売上が高ければ、「貿易」で登場する頭目とのバトルで勝利することができる。

 さらに本作には「美女」との交流や「跡継ぎ」、「珍獣」の育成要素も。いずれも育てることで収入速度を上げることができるので、ゲームの進行上で欠かせない要素となっている。

▲迎えられる美女も多種多様。

 

▲なお、「美女」に対して「男友達」(美男)も存在する。

 本作ではプレイヤーの性別で男女が選択でき、選んだ性別で導入のストーリーが変化するという仕様もある。男女どちらでもストーリーが変わらないタイトルが多いだけに、作り込みの細かさも感じられる。

    

プロモ施策はアプリ内広告メインか

 さて、そんな本作はリリース後10ヵ月経過した現在もApp Storeセールスランキングで100位内に位置し続けている。後発の成り上がり系タイトルとしてどんな施策を運用しているのか、確認していきたい。

 まず、リリース前後で確認できたトピックは以下の通り。

【トピック】

・2021年1月19日:公式Twitterアカウント開設
・2021年1月28日:事前登録受付開始
・2021年2月3日:事前登録者数10万人突破
・2021年2月8日:事前登録者数20万人突破
・2021年2月15日:事前登録者数30万人突破
・2021年2月17日:事前登録者数40万人突破
・2021年2月22日:事前登録者数50万人突破
・2021年2月25日:サービス開始

 リリース前には事前登録キャンペーンを実施。ゲーム内で使用できるさまざまなアイテムが報酬として用意された。報酬はすべて合計すると22,000円相当となる。なおリリース直前の2月22日に事前登録者数50万人を達成し、ユーザーに報酬が配布された。

【事前登録キャンペーンの報酬一覧】

■10万人(2,000円相当)

  • 抽選券×5
  • 活力薬×30
  • 精力薬×5
  • 経歴箱(小)×3
  • 店舗の図面×5
  • 珍宝箱×10

■20万人(2,000円相当)

  • 抽選券×5
  • 人参×3
  • 精力薬×2
  • 祈願石×1
  • 店舗の図面×10
  • 珍宝箱×20

■30万人(3,000円相当)

  • 抽選券×6
  • ランダム書籍×50
  • 人参×3
  • 祈願石×2
  • 調教の実×3
  • 店舗の図面×10
  • 分間札×30
  • 珍宝箱×25

■40万人(5,000円相当)

  • 抽選券×8
  • 金の募集札×15
  • 人参×5
  • 祈願石×3
  • 調教の実×5
  • 精力薬×5
  • 挑戦券×3
  • 分間札×50
  • 珍宝箱×30
  • 予約フレーム×1  

■50万人(10,000円相当)

  • 抽選券×10
  • 金の募集札×20
  • 人参×5
  • 祈願石×3
  • 調教の実×6
  • 経歴箱(大)×2
  • 珍獣宝箱×1
  • 挑戦券×3
  • 分間札×60
  • 珍宝箱×30
  • 影絵人×1

 以上のアイテムで目玉となるのは「抽選券」(ガチャチケット)である。抽選券では家来や珍獣を手に入れることができるガチャ「幸運大賞」を回すことができる。

 そのほか、さまざまな強化素材やスタミナ回復アイテム、経験値アイテムに加え、即時で収入が手に入る「分間札」や家来「影絵人」などが手に入り、ゲームの進行をスムーズにできる豪華な報酬となっていた。

 また、公式Twitter上ではフォロー&RTキャンペーンを実施。ゲーム内で使用できるアイテムパックのほか、Amazonギフト券などがプレゼント。

 リリース後はゲームパックのプレゼントキャンペーンを定期的に行っているが、全体的にプロモ施策としては小規模となっている。

 おそらく、本作のプロモーションはおそらく各種SNSやアプリ、動画配信サイト等への広告出稿がメインになっていると思われる。

 

家来・美女・珍獣が課金要素に

 続いて、マネタイズを確認していく。本作の主なマネタイズは元宝の販売となる。元宝は商店で「抽選券」(ガチャチケット)などさまざまなアイテムと交換できる。

【元宝のラインナップ】

・60個(120円)<単価:2円/割引率0.0%>
・330個(610円)<単価:約1.85円/割引率7.5%>
・640個(1,220円)<単価:約1.91円/割引率4.5%>
・1940個(3,680円)<単価:約1.90円/割引率5.0%>
・3340個(6,100円)<単価:約1.83円/割引率8.5%>
・6560個(12,000円)<単価:約1.83円/割引率8.5%>

 いずれも初回購入時は2倍のボーナスが付くため非常にお得。本作にも定番となる初購入ボーナスやVIPシステムが導入されているため、少しでもスタートダッシュを決めたいユーザーにとっては課金へのハードルが低くなっている。

 初購入ボーナスは美女「焼き芋少女」と珍獣(ペット)3種、ガチャチケット10枚に加えて「分間札」や強化素材、経験値アイテムと盛りだくさん。

 またVIPレベルがあがることでも家来・珍獣・美女が新しく獲得できる。

 本作のガチャ「幸運大賞」は、「抽選券」で回すことができ、ランダムでアイテムを入手できる。ガチャは1回につき抽選券1枚(元宝50個と交換)で、10連は抽選券9枚で回せる。

【アイテムの排出確率】

  • 家来状(0.1%)…希少な家来、美女と交換できる
  • 珍獣宝箱(0.4%)…高レアの珍獣を獲得できる
  • 百年人参(0.7%)…家来の育成アイテム
  • 両替屋の図面(1.8%)…両替屋の拡張に使う
  • 家来状の欠片(2.1%)…20枚集めて合成すると家来状になる
  • 精力薬(5.4%)…美女の「奉仕」で消費する精力を回復する
  • 活力薬×5(9.1%)…跡継ぎの育成で消費するスタミナを回復する
  • 調教の実(9.1%)…珍獣の育成アイテム
  • 算盤×3(12.7%)…家来の育成アイテム
  • 人参(16.4%)…家来の育成アイテム
  • 店舗の図面×2(21.1%)…店舗の拡張に使う
  • 分間札×10(21.1%)…即時で収入を得られる

 目玉のアイテム「家来状」は、2個で「交換商店」にラインナップされている家来、美女と交換できる。確率が非常に低く設定されていて、天井は500連(単純計算で1個につき5万円相当。最高レアリティとの交換には2個必要なので計10万円相当)となっている。

▲「交換商店」では家来状2個で最高レアリティの家来や美女と交換できる。

 そのほか、お得なパッケージ商品も販売。

 中でも人気なのは施設の拡張アイテム「両替屋の図面」、「店舗の図面」と「分間札」、「活力薬」がセットになった青銅パック(120円)だろう。安価ながら、序盤から施設を強化することができるので、スタートダッシュに最適。また、初回購入ボーナスの存在からも、元宝60個(120円)と並んで最初の課金先として選ばれていると考えられる。同じ内容物で個数が増えた「白金パック」(610円)、「金剛パック」(1,220円)なども販売されている。

 ガチャや課金報酬で美女や家来などのキャラクターが手に入るので、性能はもちろん、好みのイラストがあった場合は課金動機になる。特に美女は「奉仕」の際に刺激的な立ち絵が挿入されるので、なかなかの訴求力があると考えられる。

    

 また、本作のイベントは期間内にどれだけ売上を成長させたかを競う「売上番付」や、どれだけ行商進度を進めたかを競う「行商番付」などが開催されている。イベント上位にランクインしたユーザーだけが手に入れられるフレームや称号(プロフィールで設定する)が報酬のひとつ。短期間で収入を上げる必要があるため、上位に入りたいユーザーは自然と課金が必須になってくるため、前述のパックや元宝の購入につながる。

 お手軽で長めに遊べるクリッカーゲーム単体では課金要素が薄いところに、キャラクター訴求やイベントランキングなどで課金への導線を用意しているのだろう。

 総括すると、『商人放浪記』はクリッカーゲームの楽しさの基本が詰まっているタイトルと言える。中国産のアプリで定番の要素となっている美女やペットなどに目新しさはないが、水墨画風の表現が本作独自の世界観を形成している。類似アプリが多い中、ゲーム内の雰囲気で差別化ができているため、後発の本作が埋もれずに売れているのかもしれない。

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