『ウォーキング・デッド:サバイバー』分析。原作ファンの作品愛を増幅させる数々の仕掛けが秀逸

 スマートフォン向けアプリゲームの日々の運用とその効果を調査し、ゲーム関連企業へ様々データを提供するSp!cemart(スパイスマート)。世界各国のゲーム事業者に利用されている同社のサービス「LIVEOPSIS (ライブオプシス)」では、ランキング推移とゲーム内施策を一覧で閲覧できる「イベントカレンダー」やTwitterトレンド情報、毎月発行の調査レポートなどが提供されている。
 
 本稿では、2021年6月23日よりAndroid版が、7月3日よりiOS版が配信された『ウォーキング・デッド:サバイバー』(配信:Elex)の運用施策を分析し、紹介していく。

 

シミュレーション×タワーディフェンスの良サイクル

 コミックスから始まり、ドラマやコンシューマーゲームなど幅広く展開している『ウォーキング・デッド』(以下、TWD)。

 アメリカで2010年より放送を開始した本作のドラマ版は、現在シーズン10を迎えるほどの長寿番組となっているほか、本編の前日譚を描く『フィアー・ザ・ウォーキング・デッド』やウォーカー(本作に登場する、ゾンビのような存在)出現後の世界の若者たちに焦点を当てた『ウォーキング・デッド: ワールド・ビヨンド』といった、スピンオフ作品も製作されるほどの人気ぶりを見せている。

 2021年6月23日よりAndroid版が、7月3日よりiOS版が配信された『ウォーキング・デッド:サバイバー』(以下、ウォーサバ)は、そんな『TWD』の世界を舞台に、本格的な戦略RPGが楽しめる作品となっている。

 ゲーム内では『TWD』の主人公・リックをはじめ、その息子・カール、日本刀を用いた戦闘を得意とするミショーンなど、数々の人気キャラクターたちが登場。ゲーム内で描かれるストーリーはオリジナルとなっているため、シリーズ初心者の方もプレイしやすい。

 ただし、キャラクター同士の掛け合いは少ないほか、シナリオのボリュームが控めな点など気になる点も多々あり、ストーリー面に期待をし過ぎてしまうと、若干の肩透かしを喰らうことになるだろう。

 とはいえ、父親をウォーカーに殺された少女が戦闘訓練に励むといった場面や、拠点を巡る人間同士の争いなど、ゾンビ・アポカリプスとしてのエッセンスがしっかりと散りばめられた作品となっており、物語の結末について最後まで見届けたくなるような内容に仕上がっていることは確かだ。

▲キャラクターのグラフィックは呼吸に合わせて肩を上下させたり、髪をなびかせたりするなど、リッチな作りだ。句読点が2行目の始まりにあったり、「!」マークが半角だったりと、テキストのローカライズについて気になる点は少なくないが、作品自体の魅力を損なうほどではない。

 本作は、基地の拡大・強化を行うシミュレーションと、ウォーカーたちを撃退するタワーディフェンスの、大きく2つのパートに分かれている。

 シミュレーションのパートでは、農作物を育てたり、木材を拾い集めたりして素材を獲得し、その素材を使って施設を拡充、兵士たちの強化を行っていく。キャラクターが増えれば増えるほど、一度に行えるコマンド回数も増加していくので、より多くのキャラを手に入れたくなるといった訴求にも繋がっている。

▲時間経過によって様々な素材が手に入る施設もあり、放置ゲームとしても楽しめる。

 タワーディフェンスのパートでは、キャラクターを特定のポイントに派遣し、ウォーカーの侵入を防ぐことを目的とする。前述したシミュレーションのパートで拡大・強化を行ったプレイヤーの基地がそのまま戦闘エリアとなるため、被害をいかに最小限に食い止められるかが、攻略の肝となっている。

 戦闘に参加するキャラクターは、遠距離から重火器で応戦したり、爆弾や火炎瓶で範囲攻撃を行ったりとバリエーションに富んでおり、ウォーカーの進行など状況に応じた使い分けが必要となっている。ウォーカーの撃退に成功すると大量の素材が獲得できるため、再び基地の拡大・強化が捗るというわけだ。

▲派手なエフェクトも相まって、爽快感のあるゲームプレイが得られるようになっている。ゲームが進むとより強力なウォーカーが出現するため計略が重要となっていき、そのぶん、やりがいも大きなものになっていく。

 ゲームプレイ中は10分ごとにキャラクター育成に役立つ報酬がもらえるほか、施設建設までに必要な待機時間、兵士たちの強化、探索にかかる時間など、画面上のあちこちに用意されたタイマーがせわしなく進行していく。

 時間経過によって次々と基地が発展していく様を眺めるのが楽しく、一度プレイを始めると、なかなか手を休めるタイミングが見つからなくなっていまうような設計だ。

▲拠点内では、キャラクターたちが木を伐採したり、農作物を採取したりと、忙しく仕事をしている様を目にすることができる。さらには、拠点の防壁の外では大量のウォーカーたちがうごめいている姿が確認できるなど、画面は常に動きがあり、ただ眺めているだけでも楽しさを感じさせてくれる。

 

ファン参加型の様々な施策を実施

 続いて、本作の事前登録キャンペーンや、リリース後の運用施策について紹介していこう。

【トピック】

2021年5月24日:公式サイト、アプリストア等で事前登録受付を開始(キャンペーンも実施)
2021年5月28日:事前登録者数1万人突破
2021年6月2日:事前登録者数5万人突破
2021年6月9日:事前登録者数10万人突破
2021年6月16日:事前登録者数30万人突破
2021年6月21日:事前登録者数50万人突破
2021年6月23日:Android版先行リリース開始
2021年7月3日:iOS版リリース開始

 2021年5月28日より開始された事前登録キャンペーンは、公式Twitterアカウントをフォロー・リツイートしたユーザーに対して、ルビーとキャラクターの強化アイテム、10,000円分のアマゾンギフト券が、抽選でプレゼントされるという内容だった。

 その後も事前登録者が一定数を超えるたびに、抽選で10,000円分のアマゾンギフト券をプレゼントするキャンペーンを継続的に実施。最終的には、事前登録者数50万人を突破する、好スタートを切ることに成功した。

・事前登録キャンペーン

・事前登録者数〇万人突破キャンペーン

 iOS版のリリースの審査が遅延したことにより、Android版のみ2021年6月23日に先行リリースを行うことに。7月3日のiOS版リリースの際には、遅延したお詫びとして、iOSユーザーに対して11,000個のダイヤ(有償石)の配布が行われた。

 

 そのほか、公式Twitterでは『TWD』におけるリックやグレン、ミショーンといったメインキャラクターを紹介するツイートを投稿。『TWD』に関する思い出話が語りやすい環境を定期的に提供しており、実際にTwitterの返信欄は、ユーザーからの原作の感想や作品愛に関するメッセージで溢れていた。

 また、抽選でゲーム内アイテムがプレゼントされるクイズや、『ウォーサバ』の世界観をもとに作られたショートムービーを配信するなど、ユーザーを楽しませる様々な施策が行われていた。

 

お得感満載のパッケージやサブスク特典が光る

 本作のマネタイズは、ルビーだけでなく、ゲーム内時間を加速させるためのアイテムや素材が大量に獲得できるお得なパッケージ、レアリティの高いキャラクターや装飾アイテム、月額課金(サブスクリプション)システムなど、多岐に渡る。詳細について、以下にまとめていこう。

【ルビーのラインナップ】

・1000ルビー(610円)<単価:約0.61円/割引率0.0%>
・2000ルビー(1,220円)<単価:約0.61円/割引率0.0%>
・4000ルビー(2,440円)<単価:約0.61円/割引率0.0%>
・5000ルビー(3,060円)<単価:約0.612円/割引率-0.3%>
・10000ルビー(6,100円)<単価:約0.61円/割引率0.0%>
・20000ルビー(1,2000円)<単価:約0.6円/割引率1.6%>

 ルビーはゲーム内時間の加速や新キャラクター・素材の獲得など様々な用途に利用できるアイテム。まとめ買いによる割引は微々たるものだが、初回購入時には、入手できるルビーの数が2倍となる仕組みとなっている。

 

【パッケージのラインナップ】

 上記のルビー200個に加え、施設の強化や兵士の訓練に必要な素材と、施設の建築と兵士の訓練に必要な時間を短縮するアイテムのパッケージが、それぞれ120円~610円の値段で販売。

 1日1回の購入回数制限が設けられてはいるものの、ゲームスピードを加速させることができるため、ランキング上位を目指したいプレイヤーにとって、魅力的なラインナップとなっている。

 

【装飾アイテムのラインナップ】

 施設の外観を「大阪城」や韓国の「光化門」、台湾の「安平古堡」に変更するアイテムに加え、20000個のルビーや大量の素材がセットになったパッケージ。

 それぞれ12,000円と高額なものの、20000ルビー購入時と金額は変わらないため、大量のルビーを購入する予定があるプレイヤーにとっては、お得なパッケージだと言える。

 施設の外観を豪華なビジュアルに変更することによって、作品愛を他のプレイヤーにアピールでき、ゲームプレイに特別感を与えてくれるポイントにも繋がっている。

 

【高レアリティキャラクター】

 レアリティの高いキャラクターについては、定期的にタイムセールが行われている。

 最高レアリティキャラの1人であるミショーンは、200個のルビーや育成に必要な経験値などとセットになったパッケージが、120円で販売中(調査時)。元値は30,720円と表示されており、割引率は驚異の99.6%を誇る(実際のところ総合的な価値は不明)。

 さらには、様々な素材の生産効率や建造スピードを上昇させるといった、月額課金システムが2,440円。また、ルビーや各種素材が大量にゲットできる週間パスが用意されている。

 

 基地の拡大・強化や素材集め、ウォーカー・人間同士の戦闘など、ゾンビ・アポカリプスものとして欲しい要素が過不足なくそろっている印象の本作。

 ゲーム内イベントやSNSを通じたキャンペーンも多く実施されており、『TWD』ファンと一緒に作品を盛り上げていきたいという運営側の気概を存分に感じさせてくれるタイトルだ。今後も、『ウォーキング・デッド:サバイバー』の運用施策について、注目していきたい。

 

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モバイルゲームアプリを専門とする分析会社。モバイルゲーム内運用に関する調査・分析を行うリサーチ事業とコンサルティング事業を展開して、「LIVEOPSIS(ライブオプシス)」というサービス名称で各種ソリューションを提供。サービスに関するお問い合わせは info@spicemart.jp まで。

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