アメリカの調査会社Sensor Towerは同社のブログにおいて、2021年のハイパーカジュアルゲーム市場に関する調査データを公開した。なお、本記事の数字は同社の推計によるものである。
Sensor Towerによると2021年はコロナ禍の影響が少し弱まり、世界のモバイルゲーム全体のダウンロード(DL)数は2020年をやや下回ったという。しかし、世界のハイパーカジュアルゲームの年間DL数は、前年比15%増の137億に増加。年間総プレイ時間は581億時間を超え、ハイパーカジュアルゲームに対するユーザーのニーズは減少するどころか、むしろ増加傾向となっている。
ハイパーカジュアルゲームのDL数は前年比15%増

ハイパーカジュアルゲームの最大の市場はアジアで、DL数の36%を占めており、次いでヨーロッパ、ラテンアメリカとなっている。ブラジルとメキシコに代表される中南米は、年間DL数が27%増加し、最も急速に成長している市場。また、アジア市場も大きく成長し、主にインド、インドネシアなど東南アジア諸国からのダウンロードが増加した。

年間DL数トップはVoodoo
ゲーム内課金はPlaygendaryが首位
企業別で見ると、2021年には23のカジュアルゲームパブリッシャーが全世界で1億DL以上を記録。ランキングではVoodooがトップとなり、2位にはAppLovin、3位にはSupersonic Studiosがランクインした。
特にSupersonic Studiosは、『Join Clash 3D』を始めとしたラン系のゲームをリリースしたことにより、大きくDL数を伸ばした(関連記事)。
ハイパーカジュアルゲームのゲーム内課金での収益は2億3,000万ドル(約265億円)に達し、前年比22%増となった。
ドイツのPlaygendaryは、『Kick the Buddy』と『Bowmasters』という2つのスタータイトルが牽引し、同カテゴリーのゲーム内課金セールスでNo.1の座を不動のものにしている。Playgendaryのほか、Giant(巨人网络)とPoseidon Gamesが2,000万ドル以上のゲーム内課金による収益を生み出した。

Kick the Buddy
Bowmasters
ジャンル別ではラン系のタイトルが優勢

ハイパーカジュアルゲームをジャンル別に確認すると、Sensor Towerが定義するサブカテゴリーにおける「障害物競走(いわゆるラン系)」が2021年に最もダウンロードされた。前述の『Join Clash 3D』もこのカテゴリーに位置し、 定番とされる「パズル」を抜いて最も勢いのあるジャンルとなっている。
「障害物競走」が年間DL数に占める割合は、2020年の17%から、2021年には22%に上昇。ゲームプレイのシンプルさ、難易度の調整しやすさ、短い時間消費、多様なテーマへの適合性から、Voodoo、Supersonic Studios、Zyngaなど多くの有名パブリッシャーが新作を開発、配信している。
一方、Netflixで配信されたドラマ「イカゲーム」が世界的に人気を博したことにより、「アーケード」カテゴリーには、Idil Morgulの『Candy Challenge 3D』、Azurの『Cookie Carver』(クッキー彫刻家: 人生の試練)、Abi Game Studioの『456』など、ドラマを模したハイパーカジュアルゲームが多く登場。同カテゴリーの累計DL数は2020年比で2%増となっている。


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TikTokがハイパーカジュアルゲームの
広告出稿シェアNo.1のプラットフォームに

現在、ゲームアプリ全体の広告費シェアでは、Adcolongy、Vungle、Chartboostが広告プラットフォームとして最も高く、90%以上を占める割合になっているという。
だが、ハイパーカジュアルゲーム市場においては、少し状況が異なる結果に。 広告プラットフォームとしての役割を持つSNS「TikTok」は、その膨大なユーザーベースとハイパーカジュアルゲームとの親和性の高さから、ハイパーカジュアルゲームのパブリッシャーに急速に普及。
Cloudflareによれば、TikTok は2021年後期にGoogleを超えて最も勢いのあったWebサイトとなり、ソーシャルメディアとしてもFacebookを抜いた(関連記事)。そうした背景もあり、広告プラットフォームとしての側面には益々注目が集まる状況だが、一方で運営会社によるステルスマーケティング疑惑なども取り沙汰され、大きな懸念となっている。
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ほか、Vungle、Unity、FacebookやInstagramなどのプラットフォームでも、ハイパーカジュアルゲームのSoV広告が好調に推移している。