英・オックスフォード大学は7月27日、「ゲームプレイと幸福(well-being)の因果関係」について調査した論文「Time spent playing video games is unlikely to impact well-being」(ビデオゲームのプレイ時間が幸福に影響を与える可能性は低い)を公開した。
オックスフォード大学のAndrew Przybylski(アンドリュー・シュビルスキー)教授は、WHOが国際疾病に認定した「ゲーム障害」についてなど、以前からゲームに関する研究論文に携わってきた人物。今回の論文も、Matti Vuorre氏、Niklas Johannes氏、Kristoffer Magnusson氏と共に発表している。
公開された論文では、ゲームがしばしば、主要な保健機関や各国政府によってエビデンスも不確かなまま「精神に悪影響を及ぼす」と懸念されることを背景として、ゲームが与える「well-being」(ウェル・ビーイング)への影響を調査。
ウェル・ビーイングとは、個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念(厚生労働省の説明より)。以下では、便宜的に「幸福」と訳している。
オックスフォード大学は、ゲームメーカー7社から提供されたアクティブプレイヤー38,935人の6週間分の客観的ゲーム行動データとアンケート結果から、ゲームと幸福度の関連性について分析。プレイヤーは英語圏の一般的な層で、うち77%が男性、21%が女性、年齢の中央値は34歳となった。
対象となったゲームは『あつまれ どうぶつの森』(提供元:Nintendo of America)、『Apex Legends』(Electronic Arts)、『EVE Online』(CCP Games)、『Forza Horizon 4』(Microsoft)『グランツーリスモSPORT』(SIE)『OUTRIDERS』(Square Enix)『The Crew 2』(Ubisoft)の7タイトル。スローライフを楽しむ静的なものから、対人メインの競争的なタイトルまで、幅広いジャンルのタイトルが集まっている。
調査の結果、ゲームのプレイ時間が幸福度に大きな影響を与えるとは考えにくいことが明らかとなった。ゲームはプレイヤーの幸福に対してポジティブまたはネガティブな影響を与えず、またプレイ時間が幸福度に影響するという証拠は得られなかったという。
一方で、ゲームの動機付けは幸福度に直接影響することが示唆された。即ち、ゲームを自発的にプレイする場合(内発的動機づけ)は幸福度にポジティブに、強制されてプレイする場合(外発的動機づけ)ではマイナスに作用するという。
これらの結果から、プレイヤーにとって主観的な動機づけなどの「質」が、プレイの「量」よりも幸福度に重要であるとの可能性が示されている。
なお、アンドリュー・シュビルスキー氏は自身のTwitterで、「ゲームプレイとウェル・ビーイングに関して、より深い理解を得るためには更に多くのプラットフォームからのプレイヤーデータが必要である」として、各ゲームメーカーにプレイヤーデータの提供を呼び掛けている。