アニプレックスが『FGO』等のディライトワークスのゲーム開発事業を買収。その狙いとは

 アニプレックスは、スマートフォン向けRPG『Fate/Grand Order(以下、FGO)』を中心としたディライトワークスのゲーム開発事業を買収することを発表した。取引の完了は2022年春の予定。

 この買収によって『FGO』の製作委員会はアニプレックスを筆頭に、原作の有限会社ノーツ(TYPE-MOON)、そしてアニプレックスが事業承継の受け皿として設立する新会社(社名未発表)の三社で構成されることとなる。

 『FGO』はTYPE-MOONの「fate」シリーズの中で最大のヒットタイトルだ。ディライトワークスが開発を担当し、2015年のリリース以来、世界のモバイルゲーム売上高トップ10にたびたびランクインするほどの人気を誇る(関連記事)。中国など海外での評価も高く、モバイルゲーム時代の代表作と言えるだろう。運営7年目となる現在は、全盛期ほどではないにしろ、依然として多くのファンに愛されている。

 アニプレックスは「fate」シリーズのパブリッシャーとして関わってきた。『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』や『Fate/Zero』といったアニメーション作品を手掛け、グローバルで成功を重ねている。今回の買収は「fate」シリーズの版権を一本化するとともに、パブリッシャーとしての立場を強化する狙いがあったと見られる。

 『FGO』のファンにとって今回の買収は“寝耳に水”であり、今後の運営に不安を覚える人もいるかもしれない。しかし、心配には及ばない。『FGO』の運営チームは現在の体制を維持したまま新会社に移行すると明言されているからだ。

 このような事例は少なくない。たとえば『共闘ことばRPG コトダマン』の運営移管のケースでも、運営チームはそのままセガからミクシィへと引き渡された。アニプレックスはIPビジネスの雄だ。成功パターンを熟知している運営チームを無理に解体するようなマネはしないだろう。

 それどころか、アニプレックスが本当に手に入れたかったのは、『FGO』の利益や版権よりも、ディライトワークス社内で培われた開発技術と運営ノウハウだとも考えられる。

 アニプレックスが配信するモバイルゲームの中では『ツイステッドワンダーランド』(2020年, 開発元:f4samurai)が直近の成功例として挙げられるが、その一方で、『東方キャノンボール』(2019年, 開発元Quatro A)はほとんど業績に貢献できなかった(2020年9月にサービス終了)。

 『東方キャノンボール』と同じ開発元の『鬼滅の刃 血風剣戟ロワイアル』(公式サイト)に至っては2020年のリリース予定がずっと延期のままだ。目処すら明らかにされていないため、開発は暗礁に乗り上げていると見ていいだろう。

 つまり、ここ2〜3年でアニプレックスは「東方Project」と「鬼滅の刃」という超人気IPのモバイルゲーム化に失敗しているのだ。大作に続けて失敗したアニプレックスから見れば、ディライトワークスのゲーム事業部が持つ開発力と運営力は、喉から手が出るほど欲しいものだったに違いない。相当の買収額だったと思われるが、それでもアニプレックスにとっては“お買い得”だったのだ。

 では買収後のディライトワークスはどうなるのだろうか。主力のゲーム事業部をまるごと失ったとはいえ、同社社長でCOOの小野義徳氏は元カプコンで「ストリートファイター」シリーズのプロデュースを務めた人物であり、さらに元スクウェア・エニックスのデザイナーである直良有祐氏も在籍している。ディライトワークスには買収後もレジェンド級の人材が健在なのだ。

 同社の人材採用ページには、「ハイエンドモバイル端末向け新規3Dゲームプロジェクト」に関する募集要項が明記されている。決定的な証拠とは言い切れないが、ディライトワークス社内で何らかの新作タイトルの開発が続けられているのではないだろうか。Anime Japan 2019で明らかにされた新プロジェクトは今どうなっているのかも気になるところだ。

【2021年12月20日(月)18:00追記】
12月20日付けのディライトワークスの社長ブログ記事「小野義徳の『社長の机』第1回【Inscryption】」にて、小野義徳氏は新会社に異動する旨に触れている。

【2021年12月28日(火)10:15追記】
新会社「ラセングル」設立を発表。関連記事はこちら

▲「AnimeJapan2019」で発表された新ゲームプロジェクトのバナー。

 なお、ゲーム以外の事業であるスポーツ事業(ゴルフトレーニング施設の運営など)への直接の影響は無いものと思われる。

 今回の買収はモバイルゲーム市場の構造を変えるだろう。アニプレックスならびにディライトワークスの動向は今後も目が離せない。

 

■ディライトワークス 代表取締役社長COO 小野義徳 氏のコメント

この取引の完了によって、今後新たなるゲーム創りへのチャレンジの機会が増え、これまでにない感動と興奮を届けることができるようになると確信しています。

ディライトワークスの企業理念である「ただ純粋に、面白いゲームを創ろう。」という想いとともに、これからも世界中の人々に向けて幸せを届けたいと思っています。

私たちといま感動を創造しているクリエイターの皆さん、これから新たに出会うことになるクリエイターの皆さんたちとともに、新しいフロンティアへ出航できることに対して大きな希望と夢を膨らませています。

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原 孝則(Takanori Hara)https://pickups.jp/
PIckUPs! 編集長。出版社で雑誌とWebメディアの編集を経験した後、大手ゲーム会社で多数のマーケティングプロジェクトに携わる。2015年にSocial Game Infoの副編集長に就任。2017年に起業し、独自のニュースサイト「PickUPs!」を立ち上げ、現職。

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