米国の連邦取引委員会(FTC)は12月9日、マイクロソフトとActivision Blizzardの買収計画に関して、市場の競争を妨げるおそれがあるとして、差し止めを求め提訴した。
マイクロソフトは今年1月、世界的人気シリーズ「Call of Duty」などを保有する米ゲーム開発大手Activision Blizzardを687億ドルで買収することを発表(関連記事)。
ゲーム市場では世界最大規模のM&Aとなる提案だけに、反トラスト法(独占禁止法)にまつわる懸念から、各国の規制当局が調査を実施。サウジアラビア、ブラジルなど比較的影響の小さい地域ではすでに承認を得ているものの、欧州委員会など主要市場ではより厳格な調査に移行しており、承認への動きは鈍い状況となっている。
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マイクロソフト側も、買収完了後に「Call of Duty」フランチャイズを任天堂に今後少なくとも10年間提供する契約を締結するなど、市場への公平性を強調する、譲歩の動きを見せていた。
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しかし、かねてより提訴する公算が大きいとされていたFTCを納得させる材料とはならず、今回の提訴に至ったようだ。
これに対して、マイクロソフトの社長兼副会長のBrad Smith氏は自身のTwitterで「当社は、Activision Blizzardの買収が、ゲーマーやゲーム開発者にとって競争を拡大し、より多くの機会を創出するものと引き続き考えています」とコメント。「訴訟に対しても絶対の自信がある」として、裁判にも前向きな姿勢を示した。
なお、全米通信労働組合(CWA)は訴訟を提起したFTCに対して、「合併による労働者への影響を真剣に考慮する機会を逸した」と非難の声明を発表している。「FTCは再び、消費者の不利益、そしてこの場合、ゲーム機市場のリーダーであるソニーの競争激化に対する懸念のみに分析を絞った」とした。
そして、CWAがマイクロソフトと法的拘束力のある協定を結んだ点を挙げ、「合併が成功すればActivision Blizzardの労働者が組合を通じて賃金、手当、労働条件を改善する機会をようやく手に入れることができるだろう」との見解を示している。