PS5は何が凄いのか。SIEの技術者が語る4つの特徴と、開発者・ユーザー双方のメリット【CEDEC2021】

 2021年8月24日(火)から26日(木)までの3日間、日本最大のコンピュータエンターテインメント開発者向けカンファレンス「CEDEC2021」(CEDEC=セデック:Computer  Entertainment Developers Conference 主催:一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会、略称CESA)が開催。昨年に引き続き、新型コロナウィルス感染拡大を防止する観点から本年もオンラインで開催された。

 本稿では、8月26日(水)に開催されたセッション「PlayStation®5 Overview」の模様をレポートしていく。

【講演者】

秋山 賢成
株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントグローバルデベロッパーテクノロジーグループ担当部長。ソニー・インタラクティブエンタテインメントにて、PlayStation® のゲーム・コンテンツ開発のコンサルティング及び技術サポートに従事。

 

 

PS5の機能がもたらす開発とユーザー双方のメリット

 このセミナーでは、PlayStation®5(以下、PS5)でゲーム開発をしている、または今後に検討している開発者向けて、本ハードが持つ作品の魅力を引き上げる特徴の紹介が行われた。

 PS5は、全世界での発売累計台数が2021年7月28日時点で1000万台を突破。SIEの歴代プレイステーションのコンソール史上、最速のペースで普及している。多くのユーザーに支持されているPS5だが、開発者の視点でもゲームの体験をさらに強調できる特徴が備わっているとのこと。

 その特徴とは「スピード&イミーディアシー」「ディープイマーション&コントロール」「ダイレクトアクセス」「コミュニケーション」の4つだ。

 これらはあくまでゲームデザインの体験を拡張する要素であり、必ずしも抑える必要はないが、秋山氏いわく「開発者にはぜひ活用してほしい要素」とのこと。今回はそれぞれの要素に沿って説明が行われた。

 

常識を超える処理性能でストレス軽減&没入感の向上

 PS4の開発を体験した方にとって、最も変化を感じられる要素がこの「スピード&イミーディアシー」。PS5では、ハイスピードな処理速度を利用することで、これまで作れなかった新しいゲームデザインを生み出せるようになった。

 PS5の読み込み高速化は、単純にSSD搭載による影響だけではない。PS5に搭載されているSSDは独自のカスタマイズが施され、加えて統合されたカスタムI/Oによって、毎秒5.5GBという業界最先端の読み込み速度を実現している。

 これはロード時間を短縮することで、開発者が素早くゲームデータにアクセスできるようにとの想いで開発された要素とのことだ。

 発売中のソフトを例にした紹介も行われた。

 『デモンズソウル』では、ゲームオーバー後すぐのリトライが可能になり、快適なプレイが可能になった。他にも『ラチェット&クランク パラレル・トラブル』『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales』などでも、高速SSDのローディングを活用した演出が用いられている。

 リソースの読み込時間が無くなることは、ゲームデザインにおいて大きな影響を与える。読み込み時間が減ることによりユーザーのストレスが軽減され、さらにゲームへの没入感と感動を味わるようになり、最終的にユーザーエンゲージメントを高めることに繋がってくのだ。

▲プレイしなくなったゲームの一部のデータを削除して、空き容量の有効活用を行うことも可能とのこと。速度だけでなく利便性も上昇している。

 ストリーミングロードについても、この高速SDDが一役買っている。ロード待ちを回避するためにアセットデータの量と質を落としていたケースはこれまでに多くあったが、高速ロードが行えるPS5はその必要がなくなるため、ゲームのクオリティを追求できるようになるとのこと。

 Blu-ray自体の容量も増えてきているので、そもそものゲームの容量も大きくできる。加えて、PS5には「選べるインストール」という機能があり、ゲームのどの部分をインストールするのか、ユーザー個人で選択してSSDの空き容量の使い道を最適化することも可能だ。

 さらに、モバイルアプリの『PlayStation🄬App』を活用すれば、ストレージの容量をモバイルデバイスからも管理できる。外出先で遠隔ダウンロードをする際、その場で空き容量の調整を行える。

 これらの機能により、PS5ではユーザーのストレスフリーなゲーム体験だけでなく、開発者も柔軟にゲームの容量を活用できるようになり、両者がその恩恵を大いに受けられるようになっている。

 

「コントローラーを持っている感覚を無くす」

 DualSenseワイヤレスコントローラーには、ハプティクフィードバック(触覚に訴える技術)、アダプティブトリガー(アクションに応じてトリガーの抵抗力を変化させる)、人間工学に基づいたデザイン、振動など、PS4よりもゲームと一体化した体験ができる工夫が施されている。

 設計のコンセプトは「ゲーム中にコントローラーを持っている感覚を無くす」というもの。RPGであれば、そのキャラクターになりきって武器を本当に持っているかのような気分を味わえることを目指したそうだ。

 『ASTRO’s PLAYROOM』では、ゲーム内の地面の感触がハプティクフィードバックで表現されていたり、ジャンプするときに力を貯める感覚がアダプティブトリガーで味わえたり、新機能をわかりやすい形で採用している。

 綱を引っ張る感覚、氷の上を歩く感覚、砂漠の砂の上を歩く感覚など、この機能を活用すれば、手元からゲームの世界に没入できるというわけだ。

 深い没入感の演出は、3Dオーディオも大きく影響している。目標としたのは、ハイエンドオーディオ機器を持つユーザーだけでなく、全てのユーザーが素晴らしいオーディオ体験を味わえることだそう。

 その実現のために、パワフルさと効率さを兼ねたオーディオカスタムエンジンが搭載されている。その結果、ゲーム中サウンドでは、今まで以上に実在感と定位感を音で表現することに成功している。

 さらに目玉の機能が、光の当たり方、反射の仕方を調整して映像のリアリティを高める「レイトレーシング」だ。PS5では、物体をより正確かつリアルにレンダリングできるようになった。

 ほかにも、4K、120Hz、HDRなど、ゲームの体験を高めるための機能が備わっている。

▲SIEは、映像はもちろんのこと、音もゲーム体験において欠かせない重要な要素だと考えているそうだ。

 

ユーザーの有限なプレイ時間を最大限楽しむためのサポート

 PS5では、ユーザーのアクティビティやゲームヘルプなど、直接ゲームに関する情報を受け取ることができる。

 アクティビティでは、ユーザーが現在利用できるアクティビティカードが表示される。これはゲームとダイレクトに繋がっており、プレイの達成率、クリアまでの想定時間などの情報を受け取れる。これにより、ユーザーのプレイをサポートしつつ、これから何をするのかという選択肢をわかりやすい形で与えることが可能になった。

 ほかにも、開発者側がゲーム上の特定の場所を指定しておくことで、タイトル画面などを経由する面倒な操作を必要とせずに、ゲーム内のその場所まで誘導できるシステムにもなっている。

 これは開発者がゲームに直接繋げられる段階に応じて該当するカードを作成する仕組み。うまく活用すれば、ユーザーのゲームプレイへのモチベーションを掻き立てるきっかけになるとのことだ。

 たとえば、RPGでクエストを進める際に、メインとサブどちらをプレイすればいいのかを判断する材料として、アクティビティでクリアまでの必要時間の表示が役立つ。そして、アクティビティを選べば、それをプレイできる状態まで瞬時に移動できる。こうして、ユーザーの有限なプレイ時間を最大限楽しむためのサポートが、PS5の中で完結した形で用意されている。

 ゲームベースは、ゲームから離れず時間を減らし、ユーザーにさらに没頭してもらうためにつくられた機能だ。ユーザー同士のコミュニケーションを、コントローラーを手放すことなく、円滑に進められる。PS5だけでなく、スマートフォンやPS4でもアクセスが可能で利便性も十分だ。

 ゲームベースでは、チャットによるやり取りだけでなく、空きのあるパーティへの参加、ゲームプレイ画面の共有、クリップの共有など、さまざまなコミュニケーションを楽しめる。加えて、ゲームを閉じることなく、ボタン1つでパーティーメニューを表示できるので、操作に対するストレスも少ない設計になっている。

 「PlayStation🄬Plus」に加入していれば、PSボタンを押すことでプレイ中の場面に対応するヘルプを表示可能。コントローラーを手放すことなく、攻略に役立つ情報を手に入れられる。ただ見るだけでなく、画面に残してお手本の動画を見ながら操作することも可能だ。

 このヘルプはユーザー間によるものではなく、開発者側でテキストと画像を事前に用意しておく必要があるが、作成のためのツールなどは用意があるため、実装のハードルは引くいとこと。

▲攻略情報を調べるためにスマートフォンとコントローラーを持ち換えて苦労する必要もない。開発者によるヘルプのため信頼性という面でも安心できる要素だろう。

 

より濃密なユーザー間のコミュニケーション

 PS5では、ユーザー同士が簡単にオンラインで繋がれたり、ユーザーと開発者が繋がれたり、ゲームのネットワークを利用したコミュニケーションを活発化させる仕組みを取り入れている。

 各ゲームには、その作品の情報がまとまった「HUB」が存在する。ここでは、アクティビティや新しいコンテンツの情報が掲載され、そのゲームが続く限り情報が更新される場所となっており、開発者からの情報発信の場として重宝するとのことだ。

 追加コンテンツに関しても、ユーザーがストアで検索する必要がなく、ここから直接購入画面に移行できる。スムーズなプレイとしても便利な機能というわけだ。

 また、ユーザー間のコミュニケーションに着目した機能として、チャレンジスコアを共有することも可能。非同期でもフレンドとコミュニケーションを取りながらゲームを楽しめる。ほかのユーザーとのマルチプレイをした際には、称賛として「拍手」を送ることもでき、より濃密なユーザー間のコミュニケーションが行えるとのことだ。

 チャットチャンネルを複数同時利用できるのもPS5の特徴。用意されたチャットルームは3種類があり、プレイが開始されるまで待機ができる場所、実際のプレイ中専用の場所、ゲームリソースを使った独自のチャットルームがある。これらは、同時に参加可能なうえ、システムUI上で簡単に切り替えることが可能だ。

 

 以上が、ゲーム開発において活用できるPS5の機能だ。

 SIEでは、現在次世代のVRコントローラーも開発しており、VR体験の進化にも精力的に取り組んでいる。このコントローラーは、前述の「DualSense ワイヤレスコントローラー」の特徴がVRと組み合わさることで、次世代のVRゲーム体験を味わえるデバイスとなっているようだ。

 このVRコントローラーの詳細は既にWEBで公開されているので、下記の関連記事から確認してほしい。

【関連記事】PS5向け次世代VRコントローラーが発表

 また、急激に需要が高まっているリモートワークに関しても、PS5の開発上でリモートによる作業がしやすくなるサポートが行われている。

 こちらは既に運用が進んでいるうえ、リモート用のツールの開発など、現在も更新を続けているとのこと。既にプレイステーションのSDKを持っており、開発環境のサポートを求めている場合は、ぜひ相談して欲しいとのことだ。

▲接続の一例として、入力と映像を分離することで遅延問題を解消する方法が紹介された。応用として、オートテストなどにも対応できる仕組みも準備しているとのこと。

 PS5の特徴的な機能はユーザーにより長くゲームを遊んでもらうための仕組みであり、開発者もユーザーエンゲージメントを高めるために有効活用できるものとなっている。

 秋山氏は、「開発者の方々には、まだまだ秘められたPlayStation®5のポテンシャルを引き出して、より新しいゲームデザインの制作に挑戦してほしい」という言葉でセミナーを終えた。

 

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原 肇(Hajime Hara)
原 肇(Hajime Hara)
WEBメディアで活動するライター。あらゆるゲームジャンルをプレイするゲーマーだが、中でも得意なジャンルは対戦ゲーム。長年のプレイや試合観戦で培った知識をeスポーツ関連の記事で活用している。

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