「ブロックチェーン技術の導入は避けられない波に」…オタクコイン発足の中心人物がNFTの現状と展望を語る【CEDEC2021】

▲画像はYouTubeの「Otaku Coin」チャンネル動画をスクショしたもの。

 2021年8月24日(火)から26日(木)までの3日間、日本最大のコンピュータエンターテインメント開発者向けカンファレンス「CEDEC2021」(CEDEC=セデック:Computer  Entertainment Developers Conference 主催:一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会、略称CESA)が開催。昨年に引き続き、新型コロナウィルス感染拡大を防止する観点から本年もオンラインで開催された。

 本稿では、8月26日(木)に実施された講演「事業者視点から語るNFTの現状と展望について」の模様をレポートしていく。

【講演者】

安宅 基
日本のアニメオタク文化を世界に発信するTokyo Otaku Mode共同創業者。Facebookで海外2,000万人のファンメディア、自社一気通貫で越境EC、翻訳、広告、配送代行など手掛けている。コミュニティ通貨「オタクコイン」立ち上げの中心的役割を果たす。
酒井 俊祐
金融業や旅行系スタートアップ等にてマーケティング・プロダクトマネジメント・事業開発に従事する傍ら、2017年よりオタクコインの立ち上げに参画。

 

 

 

「Tokyo Otaku Mode」がオタクコインを立ち上げた経緯は

 日本のアニメやマンガ、ゲームなどエンタメコンテンツを発信しながら、さまざまな作品とコラボレートしたオリジナル商品の販売・開発を行う「Tokyo Otaku Mode」。

 同社の共同創業者である安宅氏は、「世界中から日本の“オタクカルチャー”が注目されている中で、共通のコミュニティ通貨を作りたい」という考えから、2018年にコミュニティ通貨「オタクコイン」を立ち上げたという。

 安宅氏がブロックチェーン技術やNFT(非代替性トークン)に興味を抱いたきっかけは、Dapper Labs(ダッパーラボ)によるブロックチェーンゲーム『クリプトキティーズ』(CryptoKitties)のリリースである。

 ブロックチェーンゲームとは、作品内に登場するキャラクターやアイテムはNFTとしてゲットでき、ユーザー間で自由に取引ができるというもの。「ブロックチェーンの技術を用いて、アニメやゲームのデジタルグッズを作成したい」という考えから、プロジェクトがスタートしたそうだ。

 オタクコインのロゴデザインを用いたファングッズやアイテムを販売したところ、売れ行きは上々という結果に。NFTは現実のアイテムと同じように一点ものとして販売できるほか、ネット上で取引が行えるため特定の販売場所を必要とせず、時間に縛られることも無いという点に、安宅氏はヒットの可能性を感じたそうだ。

 ただし、NFTの取引を行うには、事前に「MetaMask」というウォレットを導入する必要があり、取引を始めるまでのハードルは低くはない。オタクコインではNFT取引の敷居を少しでも下げるために、東北きりたん(読み上げ用音声合成ソフト「VOCALOID」シリーズのキャラクター)をPR親善大使として起用し、取引所の口座開設からNFT購入までの流れを解説する動画を公開するなど、様々な施策を行っている。

 

オークションで75億円もの値段が付けられたNFT作品

 アイテムが一点物であることをデジタルデータとして証明できるNFTは、アートワークの領域とも相性が良いと安宅氏は言う。

 2021年3月には、デジタルアーティスト・Beeple(本名、マイク・ウィンケルマン)氏が数年間かけて毎日スケッチを描いたものを集めたデジタル作品が、オークションにて6900万ドル(約75億円)で落札。同じく3月には、ツイッターの創業者であるジャック・ドーシー氏が2006年3月21日に投稿した初ツイートのNFTが291万ドル(約3億1千万円)で落札され、話題となった。

 また、NBAが前述したDapper Labsとタッグを組んで2020年にローンチしたデジタルカード「NBA Top Shot」は、売上高が1年も絶たないうちに7億ドル(約760億円)を超えたことを、同社CEOのロハム・ガレゴズロウ(Roham Gharegozlou)氏が明らかにしている。

 時代背景や歴史的転換のイメージを持つことで、NFTの価値が爆発的に高まることも多いそうだ。2017年にはエアドロップ(無償配布)された「CryptoPunks」は、NFTの歴史の中でも早いタイミングで行われたプロジェクトということもあり、2021年に価値が急上昇している。

 中でも印象的だったNFTの取り組みについて、安宅氏は2021年にデジタルアートのプロジェクトとしてスタートした「Hashmasks」(ハッシュマスクス)を挙げる。Hashmasksは、70名のクリエイターによる、約16,000種類ほどのデジタルアート。

▲画像は、「Hashmasks」公式サイトより

 それぞれの絵にはマスクの仮面をかぶったミステリアスなキャラクターが描かれており、特定の絵と絵を組み合わせると謎が解けるなど、コミュニティを盛り上げる施策が盛り込まれている。安宅氏は「ある種の謎解きゲームのようで、新しいIPの目指し方」だと、Hashmasksを紹介した。

 

ブロックチェーン技術の導入は、もはや避けられない段階に

 オタクコインは企画・プロデュースを主に行っており、NFTの実際の販売については、パートナー会社と業務委託契約を結んでいるそうだ。NFTは専門性が高い分野であり、ルールが流動的なため、ブロックチェーン技術に詳しい弁護士との相談が必須だと、安宅氏は強調する。

 また、今後のNFT市場成長について、重要な鍵を握るのは、ヴィタリック・ブテリン氏が開発したプラットフォーム「イーサリアム」だと安宅氏は言う。NFTの生成・移転に必要なイーサリアムの手数料は現状高めだが、この手数料が下がることで、NFTの普及が加速するだろうと予測した。

 最後に、「NFTはこの先絶対に避けられない分野になる」として、実際にサービスやアイテムをリリースする必要があるとは言わないまでも、今後のビジネス展開に活かすために、「常日頃からブロックチェーンに関する知識を蓄えていた方が良い」と、アドバイスを送った。

 今回の講演に登壇した安宅氏は、YouTubeの「パジちゃんねる」にて、ブロックチェーン技術やNFTについて情報をまとめた動画を公開している。NFTについてもっと知りたいという方は、下記のチャンネルの動画をチェックしてみてはいかがだろうか。

【関連サイト】
YouTube「パジちゃんねる」

 

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島中 一郎(Ichiro Shimanaka)
島中 一郎(Ichiro Shimanaka)https://www.foriio.com/16shimanaka
ライター。ゲーム・アニメ業界を中心にニュース記事の執筆、インタビュー、セミナー取材などマルチに担当。ボードゲームが趣味であり、作品のレビューや体験会のレポートを手掛けるほか、私生活で会を催すことも。無類のホラー好き。

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