
2021年9月30日(木)から10月3日(日)までの4日間、ゲームイベント「東京ゲームショウ2021 オンライン」(以下、TGS2021)が開催。新型コロナウィルス感染拡大を防止する観点から、オンラインを中心に行われた。
本稿では、9月30日(木)に実施されたTGSフォーラムセミナー「企業をつなぐ社会人eスポーツの可能性」の模様をレポートしていく。
【講演者】

NTTe-Sports代表取締役副社長。1979年、東京都生まれ。2004年に筑波大学大学院理工学研究科を修了し、NTT東日本に入社。20年以上格闘ゲームを中心としたイベント企画などを手掛けてきた実績が買われ、2020年、株式会社NTTe-Sports代表取締役副社長に就任。

アイ・オー・データ機器事業本部 販売促進部 副部長。

プロゲーマー。ストリートファイター5のJeSU公認プロゲーマー。一般企業で働きながらゲームの大会等にも出場する、兼業プロゲーマーとして活動中。
新たな社内イベントとして注目度が高まるeスポーツ
新型コロナウィルスの影響で多くのイベントが中止や延期、オンライン配信となり、持ち直しの動きが足踏みしてしまっているeスポーツ。リアルイベントが停滞している一方で、大きな注目を集めているのが、今回のセミナーのテーマとなる「社会人eスポーツ」だ。
影澤氏によると、ICT(情報通信技術)とeスポーツを通じて新たな体験や新しい文化、地域社会の貢献を目標としている「NTTe-Sports」では、実際にeスポーツを取り入れたいという企業から多くの相談が寄せられているという。
コロナ禍で会社内での飲み会や社員旅行といったレクリエーションができなくなり、社員間でのコミュニケーションの機会が減少してしまったことから、新たな社内イベントとしてeスポーツの注目が高くなっているそうだ。

eスポーツ部の立ち上げについて、影澤氏は「社内でゲームが好きな社員の人数について聞き取りを行い、ゲーム好きの社員を軸に社内レクレーションを実施し、好評であればリーダーを中心に部を作っていくという流れが良い」と勧める。
聞き取りを行う際にはeスポーツゲームのやり込み度合いや強さだけを聞くのではなく、ゲームに対しての情熱がどれほどあるかを確認しておくのが重要だという。
あくまでもeスポーツへの強制をしないことが大切で、部の発足後は会社としてどのようにチームを支えていくかが重要だと話す。実際に会社にeスポーツ部を導入するとゲームに対して好印象を持つ社員が多く、従来の社内レクリエーションより参加者が増加したというケースもあったそうだ。
また、 NTTe-Sportsでは、企業だけでなく、全社会人競技者を対象としたリーグ「B2eLeague」も開催している。社会人eスポーツ競技者にとっての甲子園となるようなリーグを作り、その上でeスポーツの持つ可能性である“ダイバーシティ&インクルージョンへの対応”を通じて、企業内外交流の新たな常識・接点をつくることが目標だという。
大人が真剣にゲームに打ち込む人を応援する社会を目指し、ゲームを競技として楽しむことが当たり前の未来を通じて、日本国内のゲーム・eスポーツ産業振興に貢献していきたいと影澤氏は続けた。


社会人eスポーツが異業種との連携や知名度アップに大きく貢献
アイ・オー・データ社内でのeスポーツ部の発足は、2018年の東京ゲームショウの企業対抗戦に有志で出場したメンバーが好成績を残したことがきっかけとなったと西田谷氏は言う。現在は企業対抗戦に出場するグループと、ゲームを楽しむことを目的としたグループと2つあり、eスポーツゲームに対して幅広い楽しみ方が用意されているとのこと。
eスポーツというと日々の練習が大変そうなイメージがあるが、カジュアルに楽しむことができるグループが用意されているというのは、少しでも興味を持った方にとって嬉しいポイントだろう。

大会の出場だけでなく、アイ・オー・データの公式YouTubeチャンネルにてゲーム配信を行うなど、活動はeスポーツに留まらない。eスポーツ部内には機材開発に携わるメンバーも多く在席しており、動画配信に自社の機材に活かすことができるなど、社員同士で連携がしやすい環境になっているそうだ。
社内イベントやスポーツ対抗戦の出場以外にも、他企業との練習試合や交流イベントについて、SNSを活用しながらコミュニケーションが頻繁に行われているとのこと。eスポーツ部があったからこそ異業種との連携に繋がり、知名度アップにも大きく貢献することができたと西田谷氏は振り返った。
兼業プロゲーマーとして活動中の田邊氏は、今後のeスポーツの展開について、「eスポーツ市場が大きくなり、選手が企業の代表として認められるようになってもらえれば」と期待を語る。
田邊氏は会社での仕事をこなしつつeスポーツの練習を1日2~3時間行っているが、eスポーツのプロプレイヤーは7~8時間はプレイしており、どうしても練習量の差が開いてしまうという。田邊氏は最後に「雇用形態が見直され毎日しっかりと練習時間が確保できるようになれば、新たなプロeスポーツプレイヤーが生まれる可能性もある」とまとめた。

社会人eスポーツを上手く活用ができれば、会社内でのコミュニケーションツールやワーク・ライフ・バランスなど、企業にもたらす効果が大きい。社会人eスポーツをサポートするサービスも増えており、eスポーツ参入へのハードルは低いものとなっている。
コロナの影響でリアルイベントを自粛せざるを得ない一方、社会人eスポーツは存在感を高めていくチャンスの時期でもある。社会人eスポーツの進展について、今後も目が離せなくなりそうだ。