人気ゲーム実況者の舞台裏。チャンネル成長背景の自己分析など3者3様のトークを展開【TGS2021】

 コンピュータエンターテインメント協会(CESA)は、ゲームイベント「東京ゲームショウ2021 オンライン(TGS2021 ONLINE)」を9月30日~10月3日の期間で開催した。

 本稿では、10月3日(日)に行われた主催者番組 「なりたい職業“ゲーム実況者” ってホントは大変? その日常や制作舞台裏とは」の内容をレポートする。

 Z世代(1990年代中盤以降に生まれた世代)に大きな影響力を持つ“ゲーム実況者”。好きなことを仕事にする職業だけに、憧れの的にもなりやすい存在である。

 番組では、eスポーツキャスターの田口尚平さんをMCに、人気ゲーム実況者であるのばまんさんCLAYさん、そしてコアラさんが出演。動画を作る難しさや、面白さ、やりがいなどについての内容が、クロストーク形式で展開された。

【出演者】

のばまんゲームス
シミュレーションゲームを中心に、独自の観点で気になったことなどを検証していくゲーム実況クリエイター。ゲーム実況だけに留まらず、実写動画やガジェット紹介など幅広く活動中。
CLAY
プロスピAをはじめとする野球ゲームのスペシャリスト。他にもさまざまなゲームの実況動画、野球などの実写動画を毎日投稿しています。これからも幅広くいろんなことに挑戦していきます! 目指せ、野球系マルチのトップクリエイター! 抜群のビジュアルだけでなく、高い編集技術とトーク力にもぜひ注目してください。
コアラ’s GAME SHOW 
V系ゲーム実況YouTuber。ゲーム業界に現れた新生異端児。鋭い突っ込みによるトーク、テンポの良い編集に定評があり、笑い驚きを視聴者に提供するゲーム実況者!またゲームコレクターとしての顔も持ち、主にゲームソフトやゲーム関連グッズを集めている。

 

 

ゲーム実況者になったきっかけ        

 最初のテーマは、“ゲーム実況者になったきっかけ”。

 物心ついたころからゲームをずっと遊んでいたというのばまんさんは、ミュンヘンに在住していた2018年当時、暇つぶしでYoutubeを視聴。そのときに出会った配信者であるRTGame(現在のチャンネル登録者数:265万人)が自分に近いプレイスタイルで動画を出しており、かつ再生回数も稼げていたことから、「自分もやってみるか」と思い立ったそうだ。

⇒YouTubeチャンネル「のばまんゲームス

▲のばまんさん

 CLAYさんは、もともとは音楽業界の出身だった。しかし、自身の業界と対照的に伸びていく動画業界を見て、「このまま動画業界に参入しないのはもったいない」と感じたという。

 そこで、かねてより大ファンである野球ゲームの武器として実況をスタート。前職では主にイベント制作など裏方の仕事がメインだったそうで、動画制作に関しては撮影・編集の技術をイチから独学で学んだとのことだった。

⇒YouTubeチャンネル「CLAY

▲CLAYさん

 レトロゲームのコレクションが趣味だったコアラさんは、ゲームバラエティ番組「ゲームセンターCX」に影響を受けたのがきっかけで、レトロゲームの実況を開始。今でこそチャンネル登録者数27.5万人に及ぶコアラさんだが、初めてから半年の間に得られた登録者の数は50人だったのだとか。

 また、ゲーム実況者として高みを目指したきっかけのひとつに、20年以上にわたってグッズを集めるほど大好きなRPG『MOTHER』の存在があったという。「作品を手掛けた糸井重里さんにいつか会いたい」という夢をかなえるため、それが実現できるほどの知名度が手に入るよう努力したそうだ。そして、その夢は2020年9月24日に行われた対談によって実現。

⇒YouTubeチャンネル「コアラ’s GAME SHOW

▲コアラさんの夢が実現したころには、チャンネル登録者数が20万人を超えていたそうだ。

 

ゲーム実況者の自己分析

 続くテーマは“ゲーム実況者としての自分を自己分析”に。

 のばまんさんは自身の動画に関して「ゲームを間違った方向にプレイする(バグを積極的に発生させるなど)スタイルに需要があること自体は、海外の配信者から知った。ニッチなジャンルなので、国内では自分が草分けになったとは思う」とコメント。

 自身のチャンネルが成長した理由は「正直わからない」としつつも、「海外には似たスタイルの動画が多く存在するが、国内には競争相手があまりいなかったことで、視聴者の獲得に成功したのではないか」と分析した。

 CLAYさんは、『プロ野球スピリッツA』の動画を例に、常に需要がある攻略や解説に重きを置いてコンテンツを作っていると説明。また、ターゲット層であるゲーム初心者にむけて、制作の際には編集の見やすさ、聞きやすさ、情報量を意識しているそうだ。

 曰く「ダーティーなスタイル」で実況を行うコアラさんは、メインコンテンツが「どうぶつの森」シリーズなどのほのぼの系タイトルなのだが、登場するキャラクターに対する歯に衣着せぬ物言いが売りだという。

 しかし、毒舌でありつつも本当にやってはいけないことの線引きをきっちりと行っているそう。続けて「キャラクター愛を示すことで、視聴者に信頼して見てもらえているのではないか」と分析した。

 

ゲーム実況者としての思い出

 3つ目のテーマとなったのは“ゲーム実況者としての思い出”だ。

 ゲーム実況者になるにあたって、いくつかのマイルストーンを置いたというのばまんさん。その中のひとつが「Youtuberプロダクションの“UUUM(ウーム)”に所属する」というもので、実際にオファーが来たことで達成感を得られたようだ。

 また、エッセイ漫画家の福満しげゆきさんのファンだったことから、そのお子さんが「のばまんゲームス」を観ているという連絡が入ったときに「これは大したもんだ」と喜んだという。

 CLAYさんは『パズル&ドラゴンズ』の配信を行った際に、以前プレイしていたアカウントの引継ぎ画面が出てしまい、視聴者に本名がバレてしまったエピソードを披露。

 Twitterのトレンドにもあがるなど、ある意味で「良いバレかただった」と振り返った。そのほか、自身のコミュニティで開催した大会で同時接続者数が最大3万人にのぼったことも思い出に残っているという。

▲なお、本名バレによる弊害はなかったそうだ。

 コアラさんは、『MOTHER』関連のイベントに携わるようになり、自身のコレクションを展示した経験を明かした。活動を続けてきたことが身を結び、「やってきたことは全てつながっていて、無駄にはならないんだな」と実感したそうだ。ほかにも、2年前にリアルイベントを開催した際に、視聴者とオフラインで対面した経験は忘れられないという。

 

動画制作の手法

 続いて、“動画制作ってどうやっているの?”という話題に。

 のばまんさんは64GBのメモリを搭載したゲーミングPCを使用して、2時間かけて撮影した動画を、さらに10時間かけて編集するという。作業効率の面で、やはり高スペックのPCは欠かせないそうだ。また、テロップやオモシロ演出を入れるときにはかなり時間をかけるとのこと。

 CLAYさんは、はじめは動画制作を自分ひとりで行っていたものの、今では撮影からカット割りまでを自身で行い、後の編集を会社のスタッフに任せているという。チームで制作する際、当初はなかなかイメージ通りの動画を作ることが難しかったそうだが、2年間の歩み寄りの結果、現在は納得いく形で高いクオリティの動画を出せるようになったそうだ。

 コアラさんは上記ふたりと概ね同じとしつつ、企画に関して捕捉。動画制作以外の時間でも、生活の中で常に動画の企画を考えているという。

 

あこがれのゲーム実況者

 そして、“あこがれのゲーム実況者は誰ですか?”というテーマに。

 のばまんさんは海外の実況者を挙げていく中で、「Let’s Game It Out」(登録者数365万人)が「一番ヤバい」と紹介。「ゲームを間違った方向にプレイする」というスタイルは同じなのだが、とにかく検証に掛ける時間が桁違いなのだとか。

 そのため投稿ペースも1ヶ月に1回程度と、ゲーム実況者としては収益面で厳しく思われるが、「そういうことに関係なく、徹底的にやる姿勢が尊敬できる」と絶賛していた。

 CLAYさんは、人気ストリーマーのSHAKAさんやStylishNoobさん、加藤純一さんといった面々を挙げながら、コアなファンを獲得し、どんなゲーム・企画を行っても視聴者が付いてくるストリーマーにあこがれると語った。

 コアラさんは、周囲へのリスペクトは欠かさないながらも、「特定の誰かに憧れることはない」とのこと。「いろいろな人のすごいところを吸収しながら、自分の個性を磨いていく」と説明した。

 

もしゲーム実況者にならなかったら

 6つ目となるテーマは、“もしもゲーム実況者にならなかったら”というもの。

 「死んでますね」と迷わず言い切るのはのばまんさん。その後、明日からYoutubeで活動できなくなり、何かひとつ職を選ばないといけない状況であっても、「死ぬかな」と苦笑した。

 CLAYさんも「音楽関係の仕事を続けていたかもしれないが、コロナ禍でイベント関連がダメージが甚大だったので、死んでしまっていたかも」と続いた。もしくは、野球好きを生かした仕事を探していたかも、とのこと。

 コアラさんは、これまでの職歴として探偵を営んでいたことを明かし、ほかにもVtuber関連のプロジェクトに参加したり、イラストを描いたりしていたことから、クリエイティブな仕事を行っているのではないか、と語った。

▲探偵として、浮気調査などを行った経験があるそうだ。

 

ゲーム実況者を目指す人へ

 最後に、3人からゲーム実況者を目指す人へアドバイスが送られた。

 のばまんさんは「とりあえず始めてみて」と語る。今の時代、スマホひとつあればゲーム実況を始めることが可能なため、まずはやってみることが大事だと説いた。そして、「ゲーム実況に限らず、やっていく中で好きなものを探していくのが良いと思う」と続けた。

 CLAYさんは、「ゲームが上手い人、面白い人はいくらでも溢れている。だからこそ視聴者のことを大切に考えることが重要」とコメント。また、「継続して続けること」も必要なこととして挙げ、「頑張っている自分をほめながら、ゲームが好きな気持ちを忘れずに継続してほしい」と続けた。

 コアラさんは「自分をどう見せたいのか」が大事だと挙げ、自分の武器を客観的に分析し、セルフプロデュースしていくことの重要性を語った。自身のチャンネルも例に、「最初はファンを獲得することは難しいが、やり続けることで賛同するファンは増えていく」とエールを送った。

 そのほか、インターネット上で活動することに関して、誹謗中傷にはどう対応しているのかということにも言及。

 のばまんさんは、心ない言葉に対して悟りの境地に達したという。暴言を受け続けていく中で、スルースキルを身に着けたようだ。

 CLAYさんも「誹謗中傷の声は大きく聞こえてしまうが、そうでない人の方が多い」と語る。また、実況者自身が気にしていない場合でも、視聴者が不快に感じることがあるので、モデレーターと協力して治安維持に努める必要性があることを説明した。

 コアラさんも、「はじめは傷ついていたが、今ではすぐにブロックして、できるだけ時間を割かないようにしている」とコメントした。

 以上、3者3様の考え方やスタイルがうかがえるクロストークだったが、全員が口を揃えて語ったのは「とにかくはじめること」と「継続すること」であった。ゲーム実況に限らず、一歩踏み出すことが重要なのかもしれないと思える番組となった。

 

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森口 拓海(Takumi Moriguchi)
森口 拓海(Takumi Moriguchi)
雑誌やWEBメディアを中心に記事を執筆。ゲームは雑食で多様なジャンルを好み、業務の延長でアプリ分析も得意。恩のあるゲーム業界に貢献すべく日々情報を発信。

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