任天堂は、10月26日から新しいオンラインサービス「Nintendo Switch Online +追加パック」を開始した。本サービスは、従来のサービスの「Nintendo Switch Online」に、NINTENDO 64とメガドライブのゲームタイトル、『あつまれ どうぶつの森』の有料DLCが追加されるという内容。
料金は「個人プラン」が12ヵ月で4,900円(税込)、最大8アカウントまで利用可能な「ファミリープラン」が12ヵ月で8,900円(税込)となっている。現在は1年契約のプランのみで、月ごとの加入はできないようだ。
新サービスの開始によって、「Nintendo Switch Online」はどのような特典が増えるのか。また、人気ゲームサブスクリプションサービス「PlayStation Now」(以下、PS Now)、「Xbox Game Pass」との料金の比較について、本稿で紹介していく。
「Nintendo Switch Online」とは
まずは、従来のサービスである「Nintendo Switch Online」について紹介していこう。本サービスでは、下記の5つの特典が利用できる。
①オンラインプレイ
②ファミコンとスーパーファミコンのゲームプレイ
③加入者限定特典
④セーブデータの保存
⑤スマートフォン向けアプリとの連携
価格は「個人プラン」1ヵ月306円(税込)、3ヵ月815円(税込)、12ヵ月が2,400円(税込)。「ファミリープラン」12ヵ月4,500円(税込)となっている。
①は『あつまれ どうぶつの森』や『大乱闘スマッシュブラザース SPECIAL』、『スプラトゥーン2』といった作品でのオンラインプレイを楽しみたいプレイヤーにとって、必須のサービス。②はファミコンとスーパーファミコンのタイトルを100本以上が遊べてしまうサービスで、レトロゲームをプレイしてみたいという人にとってはたまらない内容となっている。
③の加入者限定特典では、加入者だけがプレイできるゲームタイトルや限定商品、データ配信など、様々なサービスが用意されている。加入者のみが遊べるタイトルには、99人でのオンライン通信対戦が楽しめる『TETRISR 99』、『PAC-MAN 99』がある。人気ソフトが期間限定でプレイできる「いっせいトライアル」など、ゲームをお得に遊べるイベントは数多い。
新作ソフトをよく購入する方にとって何より嬉しい特典が、対象ダウンロードソフトをお得に購入できる「ニンテンドーカタログチケット」の存在だ。
対象ソフト2本を9,980円(税込)で購入できるチケットで、もちろんタイトルの組み合わせは自由。今後発売される予定のソフトも対象となっており、一度に2本購入する必要もない(引き換え有効期限は、チケット購入から12か月まで)。
例えば、11月19日に『ポケットモンスター シャイニングパール』(もしくは『ポケットモンスター ブリリアントダイヤモンド』)を、2021年1月28日に『Pokemon LEGENDS アルセウス』を購入するといった使い方が可能だ。通常は2本合わせて13,156円(税込)かかってしまうところ、チケットを使用すれば9,980円(税込)で購入できてしまうため、3,176円もお得にダウンロードできてしまう。
また、『ポケットモンスター ブリリアントダイヤモンド』+『ポケットモンスター シャイニングパール』のダブルパックは13,156円(税込)となっているため、パックに付属されるシリアルコード(モンスターボールが100個手に入るシリアルコードが2つ)を必要としないという方は、チケットを利用した方がお得だろう。
④はセーブデータをインターネット上に保存し、バックアップができるというもの。⑤は『Nintendo Switch Online』アプリを連動するとチャットやボイスチャットが楽しめるサービスで、オンライン対戦を頻繁にプレイするというユーザー向けの内容となっている。
「Nintendo Switch Online +追加パック」とは
今回の新料金プランにより、新たにNINTENDO 64とメガドライブ、『あつまれ どうぶつの森』のDLCの無料ダウンロードといった、新たに3つのサービスが追加されることになった。
「NINTENDO 64 Nintendo Switch Online」では、いつでも中断できる「どこでもセーブ」機能、最大4人までのオンラインプレイが可能。現在遊ぶことができるのは、下記のタイトルとなる。
- 『スーパーマリオ64』
- 『マリオカート64』
- 『スターフォックス64』
- 『ヨッシーストーリー』
- 『ゼルダの伝説 時のオカリナ』
- 『WIN BACK』
- 『マリオテニス64』
- 『罪と罰 地球の継承者』
今後は下記タイトルをはじめ、順次タイトルが追加される予定となっている。
- 『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面』
- 『バンジョーとカズーイの大冒険』
- 『マリオゴルフ64』
- 『星のカービィ64』
- 『F-ZERO X』
- 『ポケモンスナップ』
- 『マリオストーリー』
- 『カスタムロボ』
- 『カスタムロボV2』
メガドライブでは、新プラン開始時から遊べるのは下記の14本。「どこでもセーブ」のほか、ゲームプレイのやり直しが行える「巻き戻し」機能に対応しているのが嬉しいポイントだ。オンラインプレイは2人まで対応しており、タイトルは順次追加されていく予定だ。
- 『ストライダー飛竜』
- 『ぷよぷよ』
- 『ゴールデンアックス』
- 『ガンスターヒーローズ』
- 『武者アレスタ』
- 『ファンタシースター ~千年紀の終りに~』
- 『リスター・ザ・シューティングスター』
- 『シャイニング・フォース ~神々の遺産~』
- 『ザ・スーパー忍II』
- 『ソニック・ザ・ヘッジホッグ2』
- 『ベア・ナックルII 死闘への鎮魂歌』
- 『VAMPIRE KILLER』(バンパイアキラー)
- 『魂斗羅 ザ・ハードコア』
- 『エコー・ザ・ドルフィン』
さらに、Nintendo Switch Online加入者向けの限定商品として、当時のままのボタン配置や操作感で遊べる「NINTENDO 64 コントローラー」「セガ メガドライブ ファイティングパッド 6B」も発売中。かつて握ったコントローラーが無線で扱えるというのは、なかなか感慨深いものがあるのではないだろうか。
『あつまれ どうぶつの森』のユーザーにとって嬉しいのが、今回のサービスによりDLCを無料ダウンロードできてしまうことだろう。11月5日より配信開始のDLC「ハッピーホームパラダイス」の価格は2,500円(税込)となっており、それが無料で楽しめてしまうとなると、十分魅力的に映るサービスだ。
「PlayStation Now」「Xbox Game Pass」との比較
ここからは、人気ゲームサブスクリプションサービス「PS Now」「Xbox Game Pass」との比較について、サービス料金にフォーカスを当てて行っていく。
「PS Now」は、ソニー・コンピュータエンタテインメントが提供中の、数百タイトルを超えるPS4・PS3ゲームソフトが定額制で遊び放題になるサービス。『The Last of Us Part II Value Selection』や『レッド・デッド・リデンプション2』といった話題作をはじめ、幅広いジャンルが取りそろえられているのが特徴だ。
料金は1か月利用権が1,180円(税込)、3か月利用権が2,980円 (税込) 、12か月利用権が6,980円 (税込) となる。ゲームタイトルはWindows PCでもプレイが可能なほか、オンラインマルチプレイも定額料金の中に含まれている(一部対応していないタイトルもある)。
「Xbox Game Pass」は、マイクロソフトが提供するサービス。『Back 4 Blood』や『スカーレットネクサス』といった新作を含め、100タイトル以上のゲームがプレイ可能となっている。「Xbox Game Studios」や「Bethesda Softworks」の新作ゲームについて、リリース初日からプレイできるのは嬉しいポイントだろう。
料金はコンソールとPC、モバイルデバイス向けのプランである「ULTIMATE」が1か月1,100円(税込)、「PC」と「CONSOLE」のプランが、それぞれ1か月850円 (税込) となる。12か月の契約で割り引きが行われるといったサービスはない。例えば「ULTIMATE」を12か月間加入するとすれば、13,200円 (税込) の料金が発生する計算となる。
3つのサービスについて年間で発生する料金について、以下にまとめていく。
●「Nintendo Switch Online +追加パック」
「個人プラン」12カ月:4,900円(税込)
「ファミリープラン」12カ月:8,900円(税込)
●「PS Now」
12か月利用権:6,980円(税込)
●「Xbox Game Pass」
「ULTIMATE」12か月間加入:13,200円(税込)
「Nintendo Switch Online +追加パック」の個人プランに注目すると、2つのサービスと比べて価格帯の安さに魅力がある。一方で、「PS Now」と「Xbox Game Pass」には、新作タイトルを含む100以上のゲームが遊べるという利点がある。どのサービスを選択するのかは、好みのタイトルがプレイできるのか、しっかりと吟味したうえで決定した方が良いだろう。
「NS Online +追加パック」市場の評価は
2022年3月期 第2四半期の任天堂の決算では、Nintendo Switch Onlineを含むデジタル売上高が前年同期比15.9%減の1,442億円を記録した。
直近の数字では、前年比と比較して売上高が減少しているものの、これは主にNintendo Switch向けのパッケージ併売ダウンロードソフトの売上が減少したことに起因している。ダウンロード専用ソフトやNintendo Switch Onlineによる売上は順調に伸長しており、デジタル売上高に占める割合も大きくなっている。
サブスクリプションのNintendo Switch Onlineは、企業にとって安定的に収益を上げる柱となる。デジタル売上高は、パッケージ併売ダウンロードソフトや(DL)専用ソフトも含んでいるため、Nintendo Switch Onlineの単体売上高はうかがいしれないが、積み上げ式のサブスクリプションは極端な解約が起こることはまず少ない。
「追加パック」の導入は、企業としてはひとえに顧客単価の増加が狙いだと思うが、やはりネックなのはその料金だろう。
12ヵ月(365日間)契約した際に、Nintendo Switch Onlineでは2,400円(ひと月あたり200円)、一方追加パックは4,900円(ひと月あたり約409円)となる。倍の金額となるが、基本5つのサービスに加えて、追加の3つのサービスも楽しめるのだから割安と考えるユーザーもいる。
しかし、実際には国内外で今回の追加パックを快く思わないユーザーも大多数いるようだ。下部は、海外における追加パックの紹介動画なのだが、低評価が9割を占めている。任天堂の関連動画のなかでも、これほど低評価を集めているのは極めて異例のことで、それだけユーザーからの反発が今回の追加パックに顕著に出ていることが分かる。
追加パックを快く思わない主な意見としては、「値段が高い」「遊び放題が<20年以上前の>過去のタイトルのみ(新作・準新作タイトルを要望)」「64タイトルの操作性について」などが挙がっている。
「PS Now」や「Xbox Game Pass」はSwitchと比較して高額ではあるものの、新作・準新作を遊び放題にしているだけに、追加パックの内容(+値上げ)はややチープに見えてしまったのかもしれない。とはいえ、Nintendo Switch Onlineを値上げしているわけではなく、選択肢のひとつとして追加パックを設けているだけである。
おそらく業績に与える影響に関しては、第3四半期以降に追加パックの収益は含まれるものの、軽微である可能性が高い。追加パックのサービスはまだまだ始まったばかりのため、これからの特典追加次第で新たな収益の柱にも化けそうだが、果たして。