集英社、「超越現実」を目指しNianticとパートナーシップ契約を締結。XR組織をT&Sと組成

 集英社は、2021年11月に社内にXR事業開発課を新設し、XR事業「集英社 XR」をスタートしたことを発表した。

 「集英社 XR」の指針は以下の通り。

  1. 総合出版社として社内のメディア全般をXR化していく
  2. XRを軸とした新たなパートナーシップを元にビジネスモデルの変革を行う
  3. 自社による投資としてXRシステムを構築・運用する

 また、Niantic及び、同社が提供するAR開発者向けキット「Niantic Lightship ARDK」に関するパートナーシップ契約も締結。

 同事業では、新テクノロジーを活用した新規事業の創出を手掛けるT&S(ティーアンドエス)と業務提携を行い、事業企画をはじめクリエイティブ制作、サービス企画、システム開発、プロモーション、先端技術における R&D等に取り組むという。

    

   

 今回、発表された中でも興味深いのは、集英社が公開した以下の文章だ。

集英社のXR事業は従来のAR・VRだけではなく、5G以降の未来のインターネット社会におけるXR(超越現実)体験の提供を目指します。XRテクノロジーを用いることで従来の出版事業を力強く下支えしつつ、立体的で躍動感のある新たなメディア展開を行ってまいります。

 一般的に、XR(エックスアール、クロスリアリティなどの呼び方がある)とは、「AR(拡張現実)」、「VR(仮想現実)」、「MR(複合現実)」といった仮想空間・拡張空間を実現する技術の総称を指す。現実にない物・空間をリアルに体験できるようになる先端技術。

 だがここでは、集英社が新たなメディア展開を行っていく中で、XRを「超越現実」と置いている。この「超越現実」というワードは聞き馴染みがないものの、昨今取り沙汰されている「メタバース※」を強く意識した言葉であることがうかがえる。

※「超越した」という意味合いを含む「メタ」と、「宇宙」や「世界」を指す「ユニバース」が組み合わさった語。近年ではインターネット上の仮想空間を指す言葉として扱われている。

 直近ではFacebookが「Meta(メタ)」に社名変更するなど、大手企業が仮想空間(=メタバース)に次の狙いを定める中、異なるビジョンを打ち出しているのが、集英社とパートナーシップ契約を締結したNianticである。

 Nianticは『ポケモン GO』や『Pikmin Bloom』など、AR技術を活用した位置情報ゲームで知られる企業。ARなどのテクノロジーを使って、「探索」、「発見」、「人々との繋がり」をコンセプトにゲーム体験を提供してきた。

 そんな同社がブログ内で「メタバースはディストピアの悪夢です。」(注:ブログの内容はメタバースを批判する内容ではない)と題した記事の中でも提唱したのが、「現実世界のメタバース(リアルワールド・メタバース)」だ。これは、仮想世界ではなく、現実世界とデジタルを融合させて、人同士を直接つなぐことを目指したもの。現実世界に重ね合わせる形で仮想世界を築いていく、AR技術の発展形だろうか。「超越現実」という言葉も、ここから来ているのかもしれない。

▲Nianticによるイメージ画像

 その「リアルワールド・メタバース」構想を実現する技術のひとつとなるのが、『Ingress』や『ポケモン GO』などのアプリを支えている「Niantic Lightship ARDK」で、今回集英社が併せてパートナーシップ契約を締結した開発キットだという。

「Niantic Lightship ARDK」 は、「Real-Time Mapping  (リアルタイムでの現実世界の再現)」、「Understanding (環境の理解)」、「Sharing (体験の共有)」という3つの核となるAR機能を処理するツールや技術をまとめたものとなっている。世界中のユーザーがデジタルオブジェクトを作成、変更、操作でき、その体験をすべてのユーザーに共有できる仕組み。

 早い話が、世界中で提供されている『ポケモン GO』同様のゲーム基盤を使って地球規模のリッチなAR体験をつくり出せるということだ。Nianticはこの「Lightship」をグローバルに展開し、開発者フレンドリーな姿勢を見せている。

関連URL:「Niantic : AR開発者向けプラットフォーム「Lightship」をグローバルに展開

  

 そして上記の動画は、Nianticが提唱するリアルワールド・メタバースに関する解説も行っている「Lightship」グローバルローンチトレーラー。集英社の「週刊少年ジャンプ」連載の『ワンピース』を使用した事例は16:10から。

 動画を見る限りだと、これは複数人で同じ情報を共有できる『ワンピース』のARコンテンツといった感じ。トナカイのキャラクター・チョッパーの大好物であるわたあめを与える場面も確認できた。Nianticによると、集英社からのアプリはティーアンドエス開発のもと、2022年以降にリリースされる予定とのことだが、動画のものを指すかは不明。

 特に『Pikmin Bloom』の如くチョッパーにわたあめを与える場面は『ワンピース』ファンである筆者としては、それだけでも楽しそうなコンテンツ。詳細はわからないが、従来のARコンテンツから進化したものを期待したいところ。

 「集英社 XR」では今後、5G以降の未来のインターネット社会におけるXR(超越現実)体験の提供を目指す中で、「キャラクターと現実世界で遊べる」、「既存メディアをXRで進化させる」などの新サービスを開発していくとのこと。「リアルワールド・メタバース」のビジョンによって、ゆくゆくは「集英社 XR」ならではの未来体験ができるかもしれない。

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森口 拓海(Takumi Moriguchi)
森口 拓海(Takumi Moriguchi)
雑誌やWEBメディアを中心に記事を執筆。ゲームは雑食で多様なジャンルを好み、業務の延長でアプリ分析も得意。恩のあるゲーム業界に貢献すべく日々情報を発信。

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