Cygamesが社内報&オウンドメディア運営に注力する理由とは。企業カルチャー発信の重要性について考える

 2021年11月13日(土)から11月14日(日)までの2日間、Cygamesによる技術カンファレンス「Cygames Tech Conference」がYouTubeチャンネルにて配信が行われた。

 本稿では、11月13日(土)に実施されたセミナー「社内報とオウンドメディアの運営で得られた効果~企業カルチャーの浸透~」の模様をレポートしていく。

【講演者】

家郷 弥翔 氏
社長室 / 社内報編集長

西尾 亮祐 氏
広報 マネージャー / Cygames Magazine編集長

 

 

 

月間平均PV数15万以上を突破する社内報

 2011年5月に設立し、今年10周年を迎えたCygames。設立当初は『神撃のバハムート』をはじめ、スマートフォンゲームの企画・開発・運営を行ってきたが、近年はコンシューマゲームの開発やアニメーション制作など、多岐に渡るコンテンツに携わっている。

 2014年から「社内報」、2019年からはオウンドメディア「Cygames Magazine」(サイマガ)を運営するなど、「Cygamesのカルチャー」を社内外に発信・浸透に尽力。

 2020年に新型コロナウイルスの影響により大型イベントの実施が難しくなった昨今では、社内では社内報、社外ではオウンドメディアが企業カルチャーを発信するための有効な手段になっていると言える。

 社内報の編集長を務める家郷氏によると、2021年現在の記事総数は約1400本で、毎週3本~5本の記事を安定的にリリースできているという。PV数も月間で15万PV以上を維持。Cygames社内に社内報を作成している編集部があり、創刊時には3名だったが、現在は全体で8名にまで拡大している。

 記事の種類は「インタビュー記事」、「イベント系記事」、「息抜き系記事」の3つ。インタビュー記事の中でも人気なのは、Cygamesで活躍するベテランスタッフに経歴や仕事で大切にしていることなどを語ってもらう企画で、若手スタッフのモチベーションアップに繋がっているという。

 イベント系記事では、社内のイベントだけでなく、各コンテンツやCygamesに関する社外イベントのレポートや、その裏側について紹介。息抜き系記事では、社内のちょっとしたニュースや、近況、コンテンツ愛を語ってもらうものなど仕事の息抜きに読めるような内容が掲載されている。

 続いて、創刊から安定するまで、そして新型コロナウイルス感染症の影響によって社内報の記事制作にどんな変化が起こってきたのか、時代別に紹介が行われた。

 創刊から最初の1年では、当時リリース中のタイトルの制作秘話やCygames代表取締役・渡邊耕一氏の理念、Cygamesとしてのあり方を伝える記事を作成。更新頻度は月1回~2回程度で、編集部に所属するスタッフは3名いたが、皆別の業務をしながらの掛け持ち運営だったそうだ。

 1~2年後は人手不足に苦しむも、社内報専任のスタッフを1名採用することで解決。専任者が入ったことで記事の作成スピードやスケジュールの管理、企画出しなどがスムーズになり、週1回の更新が可能に。その後は社内報責任者が3名にまで増え、週3本~5本の記事を安定してリリースできるようになった。

 2020年春からの新型コロナウイルス感染症の流行により、全社的に在宅勤務に。編集部では取材方法を対面からオンライン、原稿ベースのやりとりに変更したり、撮影方法をリモートに変えるなどの対応が行われていく。

 社内報について、2021年に7月にCygames社内に向けてアンケートを実施。社内報を読む頻度について、週に1回~2回が56%、3回~4回が16%、ほぼ毎日が7%と、全体の約8割が必ず1週間に1回以上社内報を読むという結果になったそうだ。

 社内報を読むタイミングへの質問については、「更新のお知らせが出た時」、「習慣的に/なんとなく」が全体の約5割を占める結果となり、2つの設問を通して社内報を読む習慣が自然にできているということが分かる。アンケートを実施した際には開始2時間で回答が1000件を超えたこともあり、社内での注目度の高さを感じることができたとのことだった。

 社内報を読むことで得られた内容について、最も票を集めたのが「会社の雰囲気を知ることができた」という意見。次点で、「他部署・プロジェクトへの理解が深まった」、「会社のビジョンやミッションステートメントを理解することができた」が続いた。結果を見ると、会社やスタッフのことを知る・学ぶツールになっているということが分かる。

 社内報で好まれる企画については、全17企画のうち、「個人インタビュー」記事の企画と「会社のニュース&仕事のヒント」、「会社や個人について知ることができる」企画で占められていた。

 

社内報の注目度を高めるために必要な2つのこと

 家郷氏によると、注目度の高い社内報を制作するためには、「スタッフの皆さんが定期的に社内報を開く機会を作る」こと、「ターゲットに合わせた内容の記事を作る」ことの2つのポイントを重視する必要があるという。

 2021年7月~9月の平均リリース記事本数は月平均で20本。そのうち連載している記事は現在週刊連載は2本、月刊連載は3本~4本。さらに3ヶ月から4ヶ月ごとの連載が2本。つまり月平均20本のうち12本~14本は連載記事が占めることになる。

▲Cygamesの社内報のリリーススケジュール。色によって企画が異なっており、週3本~5本ほどリリースされていることが確認できる
▲毎週月曜日にリリースしている「Cygames Weekly」のPV数を比較したグラフ。全体として1600PV~2000PV後半を行き来している

 社内報では、現場のスタッフをピックアップする場が定期的に用意されるなど、社内報を身近な存在として意識してもらうような工夫がされている。

 2016年8月~2021年3月の間にリリースした記事のランキングでは、上位10位以内に社内イベント系の記事が3本ランクイン。社内のスタッフを数多くピックアップする社内イベント系の記事は、どの記事も高いPV数を記録しているとのことだ。

 Cygamesの社内報は、朝業務の開始から昼休憩直前の10時~13時の時間帯と昼休憩直後の14時~16時に固定されている。これには、リリース時間を固定することで、スタッフが自然と社内報を確認する習慣をつけるといった狙いがある。実際に社内アンケートでは、スタッフが一番社内報を見ている時間は10時~13時で、2番目が14時~16時となっている。

 ターゲットに合わせた内容の記事を作るための記事の例として、家郷氏は社内で行われたデザイナー向けの勉強会を紹介。勉強会に出ていない人にも話が理解しやすいよう、1つの記事の中で全3回の勉強会を網羅が出来るようにまとめられている。

▲勉強会で使用されたスライドや例として出されたイラストが用いられ、視覚的に理解しやすい形となっている

 

オウンドメディアでCygames全体のブランド向上を目指す

 続いて、サイマガの編集長を務める西尾氏より、Cygamesのオウンドメディアについて説明が行われた。サイマガは、Cygames全体のブランド向上を目指して作られたオウンドメディア。

 オウンドメディアには、企業による情報を提供を通じて、読者と良好な関係を築くことができるという特性がある。コロナ禍でオフラインでのコミュニケーションが難しい今、企業とユーザーを繋ぐコミュニケーション手段として特に注目が集まっている媒体だ。

 サイマガは2019年6月に創刊して以来、毎月10本前後の記事を更新。2021年8月末時点で、255本もの記事が公開されている。記事本数の増加に合わせて読者数は増えており、月間の閲覧数も成長し続けている。

 サイマガの記事は「COMPANY」「PEOPLE」「EVENT」「STAFF VOICE」の4つのカテゴリーに分かれている。

①COMPANY
 会社全体についての情報を取り上げる記事のカテゴリー。会社のビジョンやカルチャーを伝える記事や社内設備、制度、子会社を紹介する記事などがある。「数字で知るCygames」という会社に関する様々なデータがまとめられた記事は、公開から時間が経っても長く読まれ続けている。

 

②PEOPLE
 経営人、取締役だけではなく、現場スタッフのインタビューも多く掲載している。開発裏話や開発者の想いなどを深掘りする記事は特に人気が高い。

 

③EVENT
 ゲームタイトルのイベントレポートや勉強会、講演会、採用セミナーなどを中心に扱う。イベントレポートでは、外部のメディアにはないサイマガ独自の視点や切り口を出すことを意識しており、多くの反響が寄せられている。

 

④STAFF VOICE
 様々な部署、職種のスタッフへのミニインタビューを掲載。スタッフそれぞれの思いや熱意について語られており、読者からの人気も高い。

 魅力的な記事を制作するために、編集部では3つのポイントを重視しているという。1つ目は、「四角い話は丸くする」ということ。時勢や会社の考え方など難解になってしまいがちな内容も、Cygamesが得意とするエンタメ要素を軸に発信。

 記事内では季節に関するイラストをふんだんに散りばめ、描きおろしのラフイラストやスタッフコメントも掲載。結果、季節の移ろいとともに魅力が盛りだくさんの記事を制作することができ、読者にも好評だったそうだ。

▲新卒研修といった社内制度を、ゲームという形で発信した事例もある
▲ただ制度を紹介するだけでなく、実際にグランプリを取ったゲームをPDF化して無料配布が行われた。

 2つ目のポイントは、「“こだわり”にこだわる」こと。社内の物づくりに対する熱量を記事に盛り込み、記事の濃度で読者にアプローチしていく。過去には、サウンド部のマネージャーの音質や機能性の強いこだわりについて記事化したこともあったそうだ。

 サイマガの記事の制作は、大きく「企画」と「取材」、「素材手配」、「構成」の4つの段階に分かれているという。

 例えば『GRANBLUE FANTASY Relink』の記事では、企画段階でグラブルフェスにて発表予定のトピックの共有を行い、その中から記事で取り上げるべき内容や取材対象者について入念なやりとりを実施。取材後には深掘りたいトピックが出てきたため、追加でヒアリングの場を設け、取材をする側も理解を深めながら記事執筆に取り掛かったそうだ。

 文面の執筆と並行して、記事に盛り込む素材についての相談も進行する。完成前のざっくりとした記事文面を用意しながら必要な素材を記載し、制作サイドに素材を手配。最後に、記事全体として読み応えがある内容になっているか、1つ1つの表現が制作チームが意図しているニュアンスとズレていないかなど、やり取りを重ねていく。こうしたやり取りをおよそ2ヶ月ほどかけて行なったそうだ。

 ポイントの3つ目は、文章だけでなく、イラストを挿入するといった“見て楽しい”を散りばめること。イラストを取り入れた記事には「分かりやすかった」という読者からの反響も多く、サイマガには欠かせないアイテムとなっているそうだ。

 2021年6月から始めたオリジナルイラストをカレンダー化する記事企画など、イラストそのものを楽しんでもらう記事企画も展開している。月ごとのテーマに合わせ、社内イラストレーターが書き下ろした個性的なイラストを公開することで、季節感はもちろん、Cygames全体のイラストレーターの良さを感じてもらいたいという狙いがある。

 記事内では書き下ろしたイラストに関するイラストレーターへのインタビューも掲載。こだわりやアイデアの源泉を掘り下げることで、見る楽しさに加えて読み応えもある記事に仕上げられている。

▲技術研究所Cygamesリサーチの所長によるコラムでは、記事のアイキャッチに少しずつ変化が。よく見ると、イラスト中央の人物のメガネが変わっていることが分かる。 この記事では「アイトラッカー」という小型のビデオカメラが搭載された眼鏡を取り上げられており、記事内容とイラストの繋がりが楽しめるようになっている。

 今後の目標について、西尾氏は「これまで以上に多くの人に見てもらえるメディアにしていくために、Cygamesを未体験な方々を減らし、サイマガリピーターを増やすことを目指していきたい」とコメント。「今後はより幅広い層の方々に読者になってもらう施策を行うとともに、読者の方々とこれまで以上に深い関わりを築いていきたい」とまとめ、セッション締めくくった。

 社内報と外部向けオウンドメディアの紹介を通して、企業のカルチャーやマインドの発信がいかに重要かが分かるセッションとなった。

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島中 一郎(Ichiro Shimanaka)
島中 一郎(Ichiro Shimanaka)https://www.foriio.com/16shimanaka
ライター。ゲーム・アニメ業界を中心にニュース記事の執筆、インタビュー、セミナー取材などマルチに担当。ボードゲームが趣味であり、作品のレビューや体験会のレポートを手掛けるほか、私生活で会を催すことも。無類のホラー好き。

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