「App Store Awards」受賞タイトル発表。『FANTASIAN』や『LOL:ワイルドリフト』等が世界で高い評価を得る

 Appleが2021年のApp Store Awardsの受賞タイトルを発表した。今年最も優れたiPhoneアプリとして「ベストiPhone App」を受賞したのは『Toca Life World』。スウェーデンのアプリ開発会社Toca Bocaによる子供向けのアプリだ。

 ゲーム関連のアプリでは、ベストiPhoneゲームに『リーグ・オブ・レジェンド:ワイルドリフト』(Riot Games)、ベストiPadゲームに『MARVEL フューチャーレボリューション』(Netmarble)が選出された。

 Apple Arcadeからは『FANTASIAN』(Mistwalker)がベストゲームを受賞した。同作は『FINAL FANTASY』シリーズを生んだ坂口博信氏による新作として注目を集め、楽曲も『FF』シリーズと同じく植松伸夫氏が手掛けている。

 ベストタイトルとは別に、今年のトレンドを最も反映したタイトルとして「トレンド・オブ・ザ・イヤー」も同時に発表された。2021年のトレンドは“つながり”。協力と競争で人々をつなげ、チームワークを育成したゲームと、高く評価されたのが『Among Us!』(Innersloth)だった。

 

世界市場と課金トレンドの変化が垣間見られる結果に

 App Store Awardsはセールスよりも、どれだけトレンドをリードしたかが重視される。世界中がパンデミックに脅かされた昨年にはベストiPhone Appに「Zoom」が選ばれたように、App Store Awardsにはその年のワールドトレンドが表れるのだ。

 今年選出されたゲームタイトルはゲームシステムと世界観の両方に秀でた、非常にリッチな作りのものが多かった。その最たる例が『FANTASIAN』だ。

 160もの精巧なジオラマをベースに作られた背景は温かみを含んだリアルさを演出し、探索する楽しみをモバイルで実現させた。物語後編におけるバトルの難度は賛否が分かれるかもしれないが、今回の受賞を見るに、探索と戦略に重点を置くことで海外ユーザーの取り込みに成功したと言えるだろう。『FF』シリーズが(主に海外で)しばしば批判されていたような過剰なキャラクター演出もなく、より洗練されたシナリオとなっている。

 マネタイズの面でもワールドトレンドは大きく動いた。『FANTASIAN』はこれほどリッチな出来栄えにもかかわらずガチャは存在しない。スタミナ回復もない。Apple Arcadeで提供されているからだ。

 『リーグ・オブ・レジェンド:ワイルドリフト』の課金対象はスキン(キャラクターの衣装や見た目)やエモートに限られ、それらはキャラクターの強さには何ら影響を及ぼさない。PC版LoLと同様、費やした金額とゲーム内での強さが直接結びつかないように配慮されているのだ。

 さらにPC版LoLのアカウントを『リーグ・オブ・レジェンド:ワイルドリフト』に継承すると、PC版LoLでの総プレイ時間と累計利用額に応じて特別な報酬を獲得できる。既存ユーザーへの丁重な待遇はRiot Gamesへのエンゲージを確実なものにするだろう。日本のモバイルゲームが新規ユーザーに報酬を賦与するのとは対象的だ。

 『FANTSIAN』と『リーグ・オブ・レジェンド:ワイルドリフト』が画期的なのは、ゲーム性に富んだハイクオリティなゲームでありながら、ガチャ課金に頼らずに運営を維持している点である。サブスクリプション制や、ハイスコアと切り離された課金体系の導入は、今後のマネタイズに対する見方を大きく変えてしまうかもしれない。

 新しいマネタイズが普及し始めれば、ガチャ課金に依存するゲーム会社は窮地に立たされるだろう。ガチャはユーザー間の(経済的)格差を生み出す。だから常に不満の種であり、喜んでガチャを引く人はごく少数だからだ。「札束の殴り合い」と揶揄されるガチャ課金からいかに早く脱却できるかが、近い将来、モバイルゲームの大きな分岐点になるのではないだろうか。

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神谷 美恵(Mie Kamiya)
神谷 美恵(Mie Kamiya)https://pickups.jp/
大手SIerに就職するも、旧態依然とした組織に落胆して数年で退職。クラウドサービスを展開する企業に転職し、プロジェクトマネジメントとマーケティングのスキルを磨く。2017年に原 孝則と共同で起業。現在は経営工学を学びながら記事の執筆にあたる。

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