4月16日、アークライトは4月23日(土)・24日(日)開催の「ゲームマーケット2022春」に先がけ、新作ボードゲームの事前体験会を行った。
会場では『ゴジラ』のIPを活用したボードゲーム『Kaiju on the Earth LEGENDS』とアークライトゲームズの新レーベル「キャラメルシリーズ」の紹介が行われたほか、実際にゲームの試遊ができるスペースが用意されていた。本稿では、体験会の模様についてお伝えしていく。
「ゴジラ」ボードゲーム制作はドロッセルマイヤーズが担当。過去に2,500万円超のクラファンに成功したケースも
日本の特撮怪獣映画を代表する「ゴジラ」シリーズ。2016年には庵野秀明氏が脚本・総監督を務めた『シン・ゴジラ』が大ヒット。映像の細部にまでこだわったリアルな描写や、手に汗握るスリリングなストーリー展開、考察の余地を残す世界観設定などが人気を博し、最終興収は82.5億円を記録した。
その後は2017年から2018年にかけて『GODZILLA 怪獣惑星』などアニメ3部作を展開。現在はゴジラとキングコングをメインにしたリブート作品「モンスター・ヴァース」が展開中で、2021年にはシリーズ4作目である『ゴジラvsコング』が公開。全世界での累計興行収入は500億円を突破するほど注目を集めていた。
そんな人気IP「ゴジラ」を活用したボードゲームを制作するのは、これまでに『Kaiju on the Earth』(KOE)シリーズとして、オリジナルの怪獣をテーマにボードゲームを展開してきた「ドロッセルマイヤーズ」だ。
「KOE」シリーズの累計出荷本数は2万本を突破。シリーズ最新作『ユグドラサス』は、クラウドファンディングでボードゲーム国内支援額で歴代最高額(※2020年12月時点、アークライト調べ)となる2,500万円超の資金調達に成功している。
怪獣をテーマにしたボードゲーム制作に長けたドロッセルマイヤーズがゴジラのゲームに関わるということで、ファンからの期待値はかなりのものがあるだろう。すっかり前置きが長くなってしまったが、ここからは『Kaiju on the Earth LEGENDS』についての紹介を行っていきたい。
『シン・ゴジラ』のワンシーンを
彷彿させる緊迫のゲームデザイン
本作は、ゴジラを操る怪獣プレイヤー1人と、人間1~4人チームに分かれて戦う非対称対戦ゲームだ。1954年に公開された『ゴジラ』第1作目のシナリオである、ゴジラの芝浦上陸(映画では二度目の上陸)から東京湾へと移動していくまでのシーンが盤上に再現されている。
ゲームでは限られたターン内で、怪獣プレイヤーは街にどれだけ被害を与えられたかを、人間チームはどれだけ人命救助に寄与できたかを競う。これまでに怪獣を扱った作品と言えば、人間と怪獣との戦いを描く「KOE」シリーズや、怪獣同士の戦いをテーマにした『キング・オブ・トーキョー』などの作品があった。「人命救助」に焦点を当てられているというのは、本作独自の特徴だろう。
ゲームは、人間チームとゴジラのフェイズが交互に進行していく。人間チームはボード上にランダムに配置された「避難者コマ」を救出すべく、フェイズごとに特殊なタイルを設置しながら避難経路を形成。避難者コマは4種類に分けられており、それぞれの種類に適したボードの位置まで避難させる必要がある。
怪獣プレイヤーは移動と放射熱線の行動を組み合わせ、人間チームの行動を妨害する。行動はダイスの出目によって決定。連番が出れば移動、ゾロ目が出れば放射熱線を吐くことが可能だ。
マップに配置された「名所」を破壊することでゴジラのダイスや振り直し回数がアンロックされていくといった、成長要素もある。最終的には6個のダイスを振り、その内3個が振り直しが可能に。
ゲーム終盤では、ゴジラは1フェイズ中に街を踏み荒らし、熱線を吐きまくるといった“絶対王者”らしいダイナミックな立ち振る舞いが行えるようになるのだ。
本作の肝となるのが、避難者コマのほかに「報道コマ」という特殊なコマが用意されている点だ。報道コマと一緒に救出した避難者コマの数だけ、人間チームは「報道カード」をランダムに引くことができる。報道カードは全8種類あり、カードを全て揃えることで大量得点が取得できるといったシステムだ。
怪獣プレイヤーがいかに効率良く点数を稼いでいようと、報道カードが揃えば人間チームの逆転勝利もあり得る。怪獣プレイヤーは能力アップのために名所の破壊を狙いつつも、いかに人間チームから報道コマを取り上げていくかが、重要なポイントとなっているというわけだ。
また、人間チームが避難経路を設置するフェイズでは、2分の制限時間が設けられている点もポイントだ。人間チームは刻々と変化していく状況に応じた的確な判断が求められることはもちろん、短時間でチーム内の意見をまとめなければならない。
映画『シン・ゴジラ』の会議シーンを彷彿とさせる場面であり、さらにはゲーム全体のスピード感を高めることにも寄与している。怪獣をテーマに扱う作品とマッチした、秀逸なゲームデザインになっていると言えるだろう。
非対称対戦ゲームは、人数が少ない陣営が有利となる力が与えられる一方で、複雑な立ち回りを要求される作品も多い。ルールの理解が不十分なまま進めてしまうと、攻略難易度が下がってしまうか、ゲームバランスが崩壊してしまうこともあり得る。
その点、本作のルールは前述した通り、適度なランダム要素の絡んだシンプルな内容にまとめられているため、ボードゲーム初心者でも安心してゴジラ役を担うことができるのでおすすめだ。非対称対戦ゲームに苦手意識を持たれている方にとっても、手に取りやすい作品に仕上がっていると言える。
人間側にはチームで協力して困難と向き合い解決していく達成感があるが、ゴジラには人間チームが設置した避難経路を理不尽に破壊していくカタルシスがある。1度のプレイで終わらず、ぜひ人間チーム、怪獣プレイヤーと配役を変え、ゲームの隅々まで味わってほしい作品だ。
『ラブレター』カナイセイジ氏が
キャラメルシリーズ最新作を担当
続いて紹介が行われたのは、アークライトが2月より展開している新レーベル「アークライトキャラメルシリーズ」についてだ。キャラメルシリーズは、ボードゲーム初心者に向けたレーベルで、ルールの単純さやポケットに入れて持ち運べるサイズなど、カジュアルさにテーマを置いている。
本シリーズをプロデュースするのは、『内村さまぁ~ず』など多くのバラエティ・メディアで取り上げられている人気ボードゲーム『ito』の編集スタッフ。
これまでにシリーズ第1弾として「アークライト・ゲーム賞2021」最優秀賞作品『ワードスコイ』のリメイク作『ワードッチ』が、第2弾として「アークライト・ゲーム賞2021」優秀賞『ひきわけしわけ』のリメイク作『ピッタンコはんはん』がリリースされていた。
今回の体験会で初公開となったのが、シリーズ第3弾となる『クイックショット!』だ。1プレイが5~10分で終わるシンプルなルールで、ゲームデザインを『ラブレター』のカナイセイジ氏が担当している。
推奨プレイ人数は1人~7人まで。8種類の効果の異なる効果を持つカードを駆使して戦い、最後まで脱落することなく生き残ることができたプレイヤーが勝利となる。カード名は「狙撃」や「ボム」などシューティングゲームがモチーフになっており、いずれの効果も20字前後にまとめられているなど、ルールが一目見て理解しやすいデザインだ。
カードの効果は自身の脱落を防ぐものや、相手の手札を捨てさせるものなど様々。カードにはそれぞれ1~8までの強さが割り振られているが、効果の中には特定の数字を強制的に脱落させるもの、強弱を逆転させるものなどあり、最後まで気が抜けない。
カードの数字がバッティングしてしまうと1回休みとなってしまうため、ある程度のプレイヤー同士の読みあいも必要とされている。バッティングしたプレイヤーを強制的に脱落させる効果も用意されており、思わぬ展開からゲームオーバーになってしまう場面も多々あった。
ルール説明に時間がかからず、1プレイのサイクルが非常に短いため、まさに「キャラメルシリーズ」向きのタイトルになっていると言えるだろう。短時間でボードゲームをテンション高めに楽しみたいという方に、ぜひお勧めしたい1作だ。
以上が『Kaiju on the Earth LEGENDS』と『クイックショット!』についての紹介となる。4月23日(土)・24日(日)の「ゲームマーケット2022春」では残念ながら『クイックショット!』の販売は行われないとのことだが、『Kaiju on the Earth LEGENDS』は特別価格の6,500円(通常価格:税込6,930円)での販売が行われる予定だ。興味のある方は、ぜひアークライトブースをチェックしてみてほしい。