2022年5月に韓国版をリリースしたばかりの『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク(以下、プロセカ)』が衣装のデザインを巡りトラブルへと発展し、韓国での反発を受け現地運営会社が謝罪。当該の衣装を韓国で実装しないことを発表した。
トラブルとなったのは5月25日にYouTube上で行われていた『プロセカ』の情報番組「プロジェクトセカイ ワンダショちゃんねる #19」内で発表された衣装デザインキャンペーンの採用作品。
『プロセカ』では4月1日からレトロをモチーフとした衣装デザインを募集しており、番組では数ある作品の中から採用された衣装の発表が行われていた。
採用されたのはIYORIさんが応募した雛人形がテーマの着物に黒のレース手袋がマッチした「ひな人形メイド(女性キャラクター用)」と、シロさんが応募した複数の柄とサスペンダーやリボンがひとつのデザインにまとまっている「界世譚(男性キャラクター用)」。
ふたつの作品はどちらも好評で、番組のコメント欄や公式Twitterの発表ツイートには、衣装デザインを称賛するような反応のほかに、楽曲との相性に期待するコメントなど、実装を心待ちに望む声が多数寄せられていた。
韓国での反発と現地運営の謝罪
日本では好評であったレトロテーマの公募衣装だったが、リリースされたばかりの韓国ではこの衣装に対し、”大正ロマン”をイメージさせると批判的な意見が相次いだ。同キャンペーンの発表ツイートにも反発の声が寄せられているほか、韓国版のカスタマーセンターにも多くの批判が寄せられたという。
この反発を受け、韓国版の運営会社は「多くのユーザーに不快感を抱かせた」として韓国版の公式サイト、および公式Twitterで謝罪。韓国版では当該衣装を発売せず、別途韓国版で楽しめる衣装を新たに製作すると発表した。
また、謝罪案内では「もともとのテーマが“レトロ”であるにもかかわらず、誤って“大正”という表現を用いたこと」についても言及、謝罪している。
韓国ユーザーからの意見では、現地運営に対し迅速な対応を好意的に受け止める反応が見られる一方で、今回の対応を受けアンインストールする、(当該衣装が実装されるであろう)日本版へ移住するなどさまざまな反応も見られた。
一方、実装予定である日本では、このトラブルによる運営や製作者の疲弊を心配する声や、日本での実装撤回を心配する声が上がっている。
各国の歴史・文化を背景としたグローバル作品の炎上
さて、今回の『プロセカ』のレトロ衣装をはじめとした、明治・大正の時代を代表する衣装が海外で反感を買うのは珍しい話ではない。韓国では、この手のテーマは日本がかつての軍国主義や日本統治時代の朝鮮、日本が犯した戦争犯罪を称賛しているのと変わらないという強い批判を受けやすいものなのだ。
スマートフォン向けのゲームでは『アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ』や『あんさんぶるスターズ!』が、PCとコンシューマーで展開するスクウェア・エニックスのMMORPG『ファイナルファンタジーXIV』でも同様のトラブルに発展した。
トラブル後に企業は「ある歴史的な出来事について、特別な見解や考えを持っているわけではありません」と釈明した過去がある。
こうしたトラブルは、何も日本と韓国に限った話ではなく、グローバルで展開される全てのエンタメコンテンツで起こり得る。「実装した開発が悪い」「反応するユーザーが悪い」という簡単な話でも無い。作品が展開される各国には歴史・文化を背景とした感情があり、グローバルに展開する以上、その内容には十分な配慮が必要だ。
今後より一層グローバル化に舵を切っていく日本のゲーム業界は、各国の歴史や文化を重んじてコンテンツ製作及び告知に努めることを大前提に、もし何らかの見解を持ってデリケートな内容を取り扱うのであれば、その正当性や思惑を真摯に伝えるべきだろう。