
Google は9月30日、同社のクラウドゲーミングサービス「Stadia」について、2023年にサービスを終了することを発表した。北米や欧州を中心にサービスを提供していたが、日本ではローンチされなかった。
サービス終了の理由について、VP兼Stadia 担当GMのPhil Harrison氏は公式ブログの中で「Stadiaのアプローチは強力な技術基盤の上に構築されていましたが、我々が期待したほどユーザーから支持を得られなかったため、Stadiaのストリーミングサービスを終了するという難しい決断を下しました」と語っている。
今回の発表に伴い、Google Storeで購入したすべてのStadia関連ハードウェアおよび、Stadia Storeで購入したすべてのゲームおよび追加コンテンツの払い戻しに対応することも明らかにしている。ただし、サブスクリプションサービスの「Stadia Pro」については返金されない。
また現在、Stadiaへタイトルの提供を行っていたUbisoftなど一部企業は、Stadiaで所有していたタイトルを別サービスでもプレイできるよう対応を図っている。
Stadia は、2019年11月に北米や欧州でサービスが開始されたクラウドゲーミングサービス。クラウドゲーミングでは、データセンターのサーバーを利用したストリーミングの形式でユーザーにゲームを提供する。そのためデバイスに高スペックが要求されない点、ダウンロード・インストールなどが不要で、スペック端末の保存領域を圧迫しない点や、複数のデバイスからアクセスできる点など複数の利点があるのが特徴。
一方で入力遅延やネットワークの不安定さ、フレーム制限などストリーミングゆえの問題点が少なからず存在する。比較的早い段階でこの分野に参入したStadiaはこれらの問題点に対して、『アサシン クリード オデッセイ』や『サイバーパンク2077』といったAAAタイトルが高い水準で動作するなど、一定の成果を残していた。
しかし、ライブ配信している Stadia ゲームのコントロールをその場で他プレイヤーに渡す機能や、ゲームのセーブデータを共有する機能など、発表当初に宣伝していた目玉機能がリリース直後に利用できず、予定していたオリジナルタイトルの開発についても、2021年2月にStadiaのゲーム開発部署「Stadia Games and Entertainment」が閉鎖し頓挫。サードパーティと提携してサービスを展開していく方針に切り替えていた。
ほか、主要なゲームプラットフォームとは別途でサブスクリプション契約や「Stadia Store」でのゲームタイトル購入が必要だったことから、コアゲーマーにとってはコストパフォーマンスが低いと見られたことも「ユーザーから支持を得られなかった」要因のひとつに挙げられる。
今後、ユーザーは2023年1月18日まではゲームライブラリにアクセスし、プレイすることが可能。また1月中旬には、ほぼすべての返金対応が完了する予定。
サービスは終了するものの、Stadiaの基盤となる技術プラットフォームはYouTube、Google Play、AR(拡張現実)への取り組みなど、Googleの他の事業にも応用されるという。Stadiaチームのメンバーの多くは社内の他の部署に異動し、ストリーミング技術を引き継ぐとしている。
なお、公式Twitterアカウントでは発表直前である2ヶ月前まで、ユーザーからの質問に対してサービス終了の噂を否定していた。今回の決定は社内でも一部しか知らず、また開発者への伝達も行われていなかったようだ。