11月2日、「海外から日本に配信されるオンラインゲームを対象に、政府が税の取り立てを強化する検討に入った」と、国内の各メディアが報じている。
これは、内閣府が10月26日に公開した、現行の消費課税について審議する「第20回 税制調査会」における財務省説明資料を受けてのもの。国外事業者から本来納付されるべき消費税の徴収が制度上困難であることを背景として、米GoogleやAppleなど、アプリストアを開設しているデジタルプラットフォーム運営事業者に対して、オンラインでの販売にかかる消費税の計算およびアプリを提供する事業者からの徴収、そして申告納税までの義務を課す変更を検討しているという。
オンラインゲーム(スマホ向けアプリなどを指す)の消費税の課税にまつわる⾒直しは過去にも行われている。2015年10月の改正では、国境を越えて取引されるオンラインゲームや電⼦書籍、広告など、電気通信回線(インターネット等)を介して国内の事業者・消費者に対して行われるサービスの提供について、国外から行われるものも国内取引として消費税が課税される変更が実施された。
この改正により、現在の制度では国外事業者にも消費税の納付義務が課せられているが、かねてより「納税義務者である国外事業者の捕捉」や税務調査等、執⾏⾯において⼤きな課題があることが指摘されていた。
前提として、インターネット市場においては、ネット広告(1兆7,567億円)とオンラインゲーム(1兆6,145億 円)の分野が突出した規模となっている状況(デジタルコンテンツ協会調べ)。
このうち、ネット広告についてはB to B取引であり、仕入を行った事業者が国外事業者に代わって申告課税を行うリバースチャージ方式を採用しているため、執行上の課題は少ないとされている。
一方、やり玉に挙げられているオンラインゲームはB to C取引であり、現行制度では申告・納税に関して、サービスを提供している国外事業者が自ら行う必要がある(セールス・エージェント⽅式)。しかし規模の大きいオンラインゲーム市場には、⼤⼩さまざまな事業者が参⼊しているため、執⾏上の課題が存在。
というのも、サービスがオンライン上で取引が完結する性質上、国外に所在する小規模な事業者の多くは国内に拠点を置いていないことも多く、そもそも「納税義務者の捕捉」が困難であるという。また、捕捉したとしても接触が難しく、その後の調査においても、課税に必要な情報が不⾜しがちであり、国内に資産を持っていないため徴収も困難となってしまう。
さらには、国外事業者が自身に消費税の納税義務が⽣じていることを認識していないケースや、消費税法上の隙をついたコンプライアンスの低い事業者も存在するという。益税(消費者が業者に支払った消費税の一部が、納税されずに業者の利益となってしまうこと)の存在は課税の公平上大きな問題であり、前述の通り大きな市場であれば、なおさら迅速に解決すべき問題と言える。
そこで、本来納付されるべき消費税を徴収し、国内と国外の事業者で公平・公正性を保つ手段として、課税方式の変更を検討しているという流れ。有力な案としては、デジタルプラットフォーム運営事業者を消費者に対する最終的なサービス提供者とみなし、オンラインでの販売にかかる消費税の計算および国外事業者からの徴収、そして納付までを義務として課す⽅式が挙げられている。
現在、日本おけるデジタルプラットフォーム運営事業者(GoogleやAppleなど)は販売場所の提供のみを行い、納付義務が課せられていない。こうしたプラットフォーマーの扱いは各国でさまざまで、上記の「デジタルプラットフォーム運営事業者が納付義務を負う」方式はすでに英国、EU、オーストラリアや韓国などで導入されている。
このほか、「サービス提供者(サプライヤー)が納税義務を履行しなかった場合に、連帯責任として納税義務を負う」方式や、「税務当局に対してサービス提供者に関する情報提供義務を負う」方式なども存在。そうした外国の事例を参考に、改正案を検討していくとしている。