
欧州連合(EU)の政策執行機関である欧州委員会は11月8日、マイクロソフトによるActivision Blizzard買収に関する詳細な調査を開始した。
マイクロソフトは今年1月、米ゲーム開発大手Activision Blizzardを687億ドルで買収することを発表(関連記事)。取引の完了は2023年度中を予定している。
欧州委員会は、提案されている買収の反トラスト法(独占禁止法)にまつわる懸念から事前調査を行った結果、「複数ゲームの定額配信サービスやクラウドゲームストリーミングサービスを含む家庭用ゲーム機およびPCゲームの流通市場、ならびにPCにおけるOSの市場における競争を著しく低下させる可能性がある」と判断。EU合併規則に基づき、詳細な調査を開始した。
事前調査の報告では特に、「Call of Duty」シリーズのような著名なAAAタイトルについて、競合他社のアクセスが阻まれる可能性が指摘された。マイクロソフトはかねてより、PlayStationなど他のプラットフォーム向けにも同作を提供すると宣言しているものの、法的拘束力を持つ契約は結ばれていない状況。
ほか、この取引により「Xbox Game Pass」がサブスクリプションサービスやクラウドストリーミングの市場における競争に影響を与える可能性や、Activision BlizzardのゲームがWindows OSを通じてのみ配信されることによるマイクロソフトのOS市場への支配力が更に強まることも懸念している。
今後、欧州委員会は3月23日を期限として詳細な調査を行い、判断を下す予定としている。
Activision BlizzardのCEOであるBobby Kotick 氏は、同社のIRサイトで公開された従業員へのメッセージの中で、この決定について言及している。同氏は、すでにブラジルを含む各国の規制当局から取引の承認を得ていることを強調し、プロセスが予定通りに進捗していることを報告。続けて、「欧州委員会が代表する国々で、当社は多くの従業員を抱えており、今後も協力を続けていく」とコメントした。
これまで、マイクロソフトの買収計画は今年8月23日のサウジアラビアからの承認を皮切りに、ブラジルなど一部の規制当局が取引の承認を発表している。一方、同社の主要な市場である米国の連邦取引委員会(FTC)、英国の競争・市場庁(CMA)といった規制当局は現在も取引を承認しておらず、調査を継続している。