
マイクロソフトは12月7日、Activision Blizzardの買収完了後、「Call of Duty」フランチャイズを任天堂に今後少なくとも10年間提供する契約を締結したことを発表した。同社ゲーム部門トップのPhil Spencer(フィル・スペンサー)氏が投稿した内容を翻訳する形で、国内でも告知されている。
あわせて、Valveが運営するPC向けデジタルプラットフォーム「Steam」にも、買収完了後に提供を継続する意向が明らかにされている。
マイクロソフトは今年1月、世界的人気シリーズ「Call of Duty」などを保有する米ゲーム開発大手Activision Blizzardを687億ドルで買収することを発表(関連記事)。
ゲーム市場では世界最大規模のM&Aとなる提案だけに、反トラスト法(独占禁止法)にまつわる懸念から、各国の規制当局が調査を開始。サウジアラビア、ブラジルなど比較的影響の小さい地域ではすでに承認を得ているものの、特に主要市場である米国、英国、EUなどでは承認への進みは良くない状況だ。
米国の政治誌POLITICOによると、米・連邦取引委員会(FTC)ではLina Khan委員長のもと、独占禁止法違反にまつわる訴訟の提起も視野に入っているという。
英国、EUでも初期の調査を終え、「『Call of Duty』シリーズのような著名なAAAタイトルについて、競合他社のアクセスが阻まれる可能性がある」として、さらなる詳細調査へとフェーズを移行している。なお、欧州委員会は「マイクロソフトのOS市場への支配力が更に強まること」も懸念。
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そうした状況の中、マイクロソフトと任天堂のコミットメントが締結。買収完了後をタイミングとしていることから、市場における公平性をアピールする意図があるものと見られる。
マイクロソフトはかねてより、PlayStationなど他のプラットフォーム向けにも「Call of Duty」など人気シリーズを提供すると明言(関連記事)。
その後SIEに対して「現在の契約が終了した後も、3年間は引き続き提供し続ける」と提案していたものの、SIE社長兼CEOのJim Ryan(ジム・ライアン)氏は「PlayStationゲーマーへの影響を考慮しておらず、不十分」と海外メディアGamesInsudtry.bizを通して答えていた。
そして、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が報じたところによると、任天堂との契約と同様の10年契約が、SIEにも提案されているという。規制当局の調査が強化されていることを背景に、マイクロソフトは譲歩した内容によって市場の競争を維持する姿勢を示している。
Phil Spencer氏は発表の中で、「マイクロソフトはより多くのゲームをより多くの人々に届けることに取り組み続けます」とコメント。Activision Blizzardとの買収取引の完了は、2023年度中を予定している。