『Vampire Survivors』を開発・販売するponcleは1月3日、2022年における活動の総括をSteam上で公開した。最新情報や2023年の予定に触れているほか、モバイル版の開発における苦労が明かされている。
『Vampire Survivors』は、さまざまな特性・武器を持つキャラクターを選択して、画面を覆いつくすほど大量に襲い来る敵からひたすら生き残るサバイバルアクションゲーム。ローグライク要素を含んでいるのが特徴のひとつ。約1年のアーリーアクセス期間を経て2022年10月に正式リリースし、その後Xbox Game Passなどサブスクリプションサービスにも提供された。
同作は安価なタイトルながらリピート性の高いシステムが人気を博し、Valveが公開した統計データによれば「2022年、Steam Deck上で最もプレイされたタイトル」の上位12作品にリストインされている(関連記事)。
また、2022年12月にはモバイルアプリ版が配信開始され、1週間で100万ダウンロードを突破する盛り上がりを見せている(関連記事)。
ただ、英国のインディースタジオponcleを率いる開発者Luca Galante氏によると、このモバイル版の開発にあたっては、さまざまな苦労が存在したという。
poncleはPC版アーリーアクセス後のヒットからまもなく、モバイル版の制作に携わるビジネスパートナー探しを開始。しかし、Luca氏がモバイルプラットフォームにおけるマネタイズとして掲げていた「(ユーザーから)お金を取らない」(non-predatory)というスタンスには賛同者が現れなかったそうだ。
Luca氏がモバイル版に課金要素、もしくは買い切り型の有料作品としない理由には主に「公平性」や「多くの新規ユーザーに触れてもらう」ことが挙げられている。Pay to Winではなく、かつ無料ゲームにしか興味がないユーザー層がアクセスできることを重視しているようだ。
そして、パートナー探しに難航するまま数か月が経った時点で、モバイルゲーム市場には模倣タイトルが溢れる状況に。そのためモバイル版を早急にリリースする必要に迫られ、社内のリソースで開発を急いだためにチームの負担が大きくなってしまった。
Luca氏はこの状況について、「『Vampire Survivors』ライクなゲーム」ではなく「コード、アセット、データ、プログレッションを盗んだクローンゲーム」があちこちに出回っていると指摘。
他タイトルにおいても、2022年では『Fall Guys』を模倣したと見られる『Stumble Guys』や、トロンボーン演奏リズムゲーム『Trombone Champ』を模倣した『Trombone Hero』がモバイルで人気になるなど、PC/コンソールで話題を集めた作品を丸々コピーした模倣タイトルがモバイルゲーム市場で急速に存在感を増す事例は少なくない。模倣タイトルはリリースまでのスピード感が早く、本家が市場に不在の間に一定の地位を築くことも多い。
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そうした背景もあり、モバイル版のリリース直後である現在、実装または改良しなければならない機能(クラウドセーブなど)が多くあると認識しつつも、人手不足により予想以上に時間がかかる可能性があるという。またPC版に関しても、パッチリリースの頻度は2022年と比べて遅くなってしまうとアナウンスしている。
リリースまで相当な苦労があったことがうかがえるが、同社のポリシー通り、現在iOS/Android向けに配信されているモバイル版『Vampire Survivors』は、アプリ内課金(IAP)を採用しておらず、基本的なマネタイズは動画広告などのゲーム内広告(IAA)と最低限に抑えた形を実現。
ユーザーは任意のタイミングで広告を閲覧することでインセンティブ(ゲーム内通貨やスタミナなど)を獲得でき、基本無料で十分にプレイできる仕組みとなっている。