仮想と現実を繋げるためのゲームAI活用法 空間にAIをインストールさせる先駆的デザインの行方を取材

 ワントゥーテンは、2022年2月1日、オンラインカンファレンス『SUSTAINABLE CONNECT 2022 ~AI × XRによる「現実と仮想の融合」が、アフターコロナを切り拓く~』を開催。XRやAI関連のエンジニア、組織のDX担当者を対象に、XRとAIの新潮流と最新のDXソリューションの説明が行われた。

 本稿では、オンラインカンファレンスの前半に行われたAIセッション「ゲーム空間、商業施設、スマートシティ。仮想と現実を越境した場に宿るAIの可能性。」について、レポートをお届けする

【登壇者】

三宅 陽一郎
立教大学大学院 人工知能科学研究科 特任教授。2004年よりデジタルゲームにおける人工知能の開発・研究に従事。著書に『戦略ゲームAI解体新書』(翔泳社)『人工知能のための哲学塾』『人工知能のための哲学塾 東洋哲学篇』(ビー・エヌ・エヌ新社)などがある。
小澤 健祐
ディップ株式会社 AI専門メディア AINOW編集長。「人間とAIが共存する社会を作る」というビジョンを掲げ、AIやDXなどの最先端技術トレンドを発信する。本講演では司会を務める。
長井 健一
ワントゥーテン 取締役副社長/最高技術責任者。京都大学工学部在籍時にワントゥーテンでのアルバイト勤務を経て、卒業後に新卒入社。クリエイティブエンジニアとして大型広告キャンペーンを手掛けたのち、2013~2018年はソフトバンク「Pepper」の開発に参画し、一般販売へと大きく貢献をした。

 

空間や環境にAIをインストールする試み

 メタバースやスマートシティといった用語を多く見かけるようになった昨今、デジタル空間と現実とを繋ごうとする取り組みは、注目度が高いテーマのひとつだ。

 長井氏はワントゥーテン内でのAIやXRの取り組みについて、接客をAIが行う「バーチャルヒューマン対話システム」や、現実空間と仮想空間との融合を目指した「Smart Digital Field」(スマート・デジタル・フィールド)などの研究開発した事例を紹介。

 ソフトバンクのロボットPepperの主要機能の開発や、「TOYOTA Concept-愛i」では車の中のAIエージェントの製作など、キャラクター性を持つAIの研究・開発も行っていると説明を続ける。

 そのほか「空間や環境にAIをインストールする」というテーマを掲げ、「Magical Shores」や「二条城夜会」といったフィールドにAIを導入する施策を実施。Magical Shoresは、シンガポールのセントーサ島のビーチに、来場者の状態を判断する独自開発したAIを搭載。ビーチにいる人々の活動状況をAIが判断し、ライトアップなど最適な演出を行うという仕組みを設定したとのことだ。

 二条城夜会は、京都・二条城を舞台に、城内の障壁画や門に描かれた生き物など、「地下に流れる大地と水のパワー」をモチーフにしたプロジェクションランドアート。来場者や気候の情報から、演出を変化させていくといったアプローチを行っていたそうだ。

 以下、参考動画。

●マジカルショア/MAGICAL SHORES at SILOSO

●【ワントゥーテン 二条城夜会】クリエイティブAIが環境から生み出す、不規則性の中の美しさ

 続いて三宅氏が、自身の研究分野でもあるゲームAIについて紹介。AIとは、「人工的な存在を環境の中で活動させていくもの」だと定義し、認識・意思決定・行動構成の3つのパートから、考える・感じるといった意思決定をしていく形で知能を作っていくものだと説明する。

 ゲームAIについてはさらに、「メタAI」と「キャラクターAI」、「スパーシャルAI」の3つが協調する「MCS-AI動的連携モデル」の紹介が行われた。メタAIとは、プレイヤーのレベル状況を監視し、難易度などゲーム全体のコントロールを司る人工知能のこと。

 キャラクターAIは、レベルを認識して敵・味方キャラの動作処理を行うといった、ゲームの頭脳として役割を担っている。メタAI、キャラクターAIの動きに必要な位置情報などの空間を認識するのためのデータを、スパーシャルAIが準備していくという仕組みだ。

 長井氏が前述したようなMagical Shoresや二条城夜会で行われた、人や気候の情報からフィールドの映像表現を変化させていくといったアプローチは、三宅氏が説明したゲームAIの連携モデルに通ずるものがあることが分かる。

 

ゲームAIのスマートシティへの応用

 現在は個人がPCやスマホ、タブレットなどのデバイスを複数台所持することが当たり前の時代となったが、今後は「1人が複数人のAIエージェント(ユーザーの代わりにタスクを処理するAI)を所有する」ようになり、さらには「AIエージェント同士が自律的に連携をしていく時代になっていく」と長井氏は言う。

 Magical Shoresや二条城夜会といった例もあるように、空間にAIが導入されるようになり、最終的には生活インフラ・サービスを効率化するスマートシティ化、都市OS化が進んでいくというのだ。

 ワントゥーテンが目指すスマートシティとの連携について長井氏は、『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』のスクリーンショットを交えて説明。

 作中では、MRグラスを用いて現実空間と仮想空間のレイヤーを重ねることで、街中にいながらモンスターとの戦闘や、モンスターを倒すことで得たポイントを消費して買い物が楽しめるという仕組みが実現できているという。長井氏はゲーム世界がリアルに染み出してくるような、エンタメ性が高いニュアンスを強く意識しているようだ。

 三宅氏はスマートシティについて、ゲームAIの仕組みを応用することができると話す。メタAIとキャラクターAI、スパーシャルAIの3つが協調する「MCS-AI動的連携モデル」については前述した通り。スマートシティへの応用とは、都市全体を監視・制御するAIをメタAIに、命令を実行する役割をキャラクターAIに、都市の位置的な情報や動的な変化を認知をスパーシャルAIに対応させるという構造だ。

 ゲームAIの仕組みをそのままスマートシティに転用できるというのは興味深い点だが、三宅氏は立教大学にて、実際にゲームAIを応用させたスマートシティの研究を行っているとのこと。Unityのゲームエンジン上でメタAIが都市のサービスを実施し、マルチエージェントの満足度がどのように上がるかの解析を行っているそうだ。

 実際の道路の幅や人の流れ(混雑度)などをシミュレーションしており、実際の都市との相互性は今後の研究で明らかになっていくとのこと。幸福度が低いエージェントに対しては何かしらのサービスを行うといった、バリアフリーやSDGsに繋がるアルゴリズムも試している段階だと三宅氏は説明した。

 最後に、長井氏が「2000年頃から学術的な要素が入ってきたゲームAIを見習いながら、良いコンテンツを作っていきたいと思います」と今後の展望について話し、セッションを締めた。

 ゲームAIのスマートシティへの応用は従来のエンタメとはまた違った価値を生み出し、また新しいコンテンツを生み出していく可能性が十分に考えられる。スマートシティに関するデータは日々蓄積されている段階であり、今後は様々なAIが実装できるフェーズへと進んでいくとのこと。今後の展開について注目したい。

■ワントゥーテン主催「SUSTAINABLE CONNECT 2022」アーカイブ動画

【ワントゥーテン/1→10,Inc.】
について人間の永遠の課題に挑み、創造力で人類の可能性をひらく、近未来クリエイティブカンパニー。京都市下京区に本社をかまえ、最先端のAI技術を駆使したサービス開発やプロジェクションマッピング・XRを活用した数々のプロジェクトを日本国内及び世界各国で展開する。日本の伝統に創造性とテクノロジーを掛け合わせ日本をアップデートする「ジャパネスクプロジェクト」、パラスポーツとテクノロジーを組み合わせたスポーツエンタテインメント「CYBER SPORTSプロジェクト」など、先端テクノロジーによる社会課題解決をテーマに世界中の人々の知的好奇心をかき立て続ける。

【代表的なプロジェクト】
「ドバイ万博日本館」デジタルシフト施策の企画・製作、体験型商業施設「羽田出島|DEJIMA by 1→10」、知育エンターテインメント施設「ENNICHI by 1→10」、夜の旧芝離宮恩賜庭園や名古屋城でのライトアップイベント「YAKAI by 1→10」、市川海老蔵「歌舞伎座百三十年 七月大歌舞伎 夜の部 『通し狂言 源氏物語』」でのイマーシブ(没入型)プロジェクション、サイバーパラスポーツ「CYBER BOCCIA(サイバーボッチャ)S」・「CYBER WHEEL(サイバーウィル) X」、価値ある日本文化のつくり手を応援するファンコミュニティコマース「ENU(エヌ)」など。URL:https://www.1-10.com/

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島中 一郎(Ichiro Shimanaka)
島中 一郎(Ichiro Shimanaka)https://www.foriio.com/16shimanaka
ライター。ゲーム・アニメ業界を中心にニュース記事の執筆、インタビュー、セミナー取材などマルチに担当。ボードゲームが趣味であり、作品のレビューや体験会のレポートを手掛けるほか、私生活で会を催すことも。無類のホラー好き。

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