アカツキがeスポーツ実業団を発足。競技と業務のバランス、そして選手キャリアを考えた取り組みに

アカツキは、2020年8月6日、同社初となるeスポーツ実業団「Team UNITE(チーム ユナイト)」発足に伴う記者発表会をオンライン上で開催しました。

冒頭では、アカツキ 取締役 Head of Games である戸塚佑貴氏が登壇し、同社の状況やeスポーツ実業団を発足した経緯などを説明。

▲アカツキ 取締役 Head of Games 戸塚佑貴 氏

今年創業10周年を迎えるアカツキは、新たな中長期的経営戦略として「ゲームを軸としたIPプロデュースカンパニー」を目指し、これまで以上にゲーム事業へ注力。その一環として、eスポーツ業界とゲーム業界への貢献を目的にeスポーツ実業団「Team UNITE」を設立したとのこと。

実業団に所属する選手たちの勤務形態は、1日4時間の契約社員として働くという。具体的には、ゲーム事業部で検証とカスタマーサポートを行うCAPS(Customer And Product Satisfaction、キャップス)チームに所属するという。勤務後は、練習時間に費やせるなど、業務に携わりながらも安定的に練習時間を確保できるよう、両立が可能な勤務体系を用意。

戸塚氏は「モバイルゲーム事業は高度化してきている。安定した品質を求められるからこそ、プロゲーマーの集中力や洞察力は弊社事業に貢献できる」と、今回の取り組みによって得られる好循環=エコシステムについて説明しました。実際に選手の勤務時間は短いものの、すでに成果を上げていると評価。

eスポーツ実業団「Team UNITE」でオーナーを務めるアカツキの渡辺佑太郎 氏

話題はeスポーツ市場とその課題について。日本におけるeスポーツの市場規模は、2020年は76億2,500万円、2023年には153億3,400万円になると言われています。

また、日本国内でeスポーツの普及スピードが上がらない原因の1つとして、選手の育成環境や練習を含む活動環境が整っていないという課題があります。大会出場時の賞金や企業からのスポンサードで安定的に生計を立てることができる選手はごく一部に限られており、ゲームとは関係のない仕事をしながら活動するプレイヤーも多く、競技に専念できる十分な時間と環境が作れていない現実があるとのこと。

下記は、発表会の際に使用されたスライドです。

▲調査対象:eスポーツプレイヤー120人を対象にアンケート(平日の1日あたりのゲーム練習時間は平均でどのくらいか?)
▲調査対象:eスポーツプレイヤー120人を対象にアンケート(eスポーツプレイヤーとしての活動以外に仕事をしているか?)

eスポーツプレイヤー120人を対象にアンケートを行ったところ、「eスポーツプレイヤーとしての活動以外に仕事をしているか?」という問いに対して、8割以上が「ほかの仕事もしている」と回答。裏を返せば、プレイヤー活動だけで生活しているのは2割も満たない。当然、仕事のやりがいなど、さまざまな理由でほかの仕事も兼務していることもありますが、ひとつの職業として見たときには、給与体系や働き方のモデルが定まっていないと言えるでしょう。

eスポーツプレイヤーには、こうした課題が浮き彫りになっています。だからこそアカツキは、「日本国内におけるeスポーツ業界の発展に貢献」を目標に実業団を立ち上げたのです。

「Team UNITE」では、ひとつのゲームタイトルに限定せず、複数のゲームタイトルを扱い、タイトルごとに選手募集を行う予定。第1弾タイトルは世界的に人気のトレーディングカードゲーム「マジック:ザ・ギャザリング」です。すでに「Team UNITE」では、選手2名、コーチ1名が所属し、活動されています。

▲左から森山真秀(選手)、片山英典(コーチ)、井上徹(選手)
▲選手を交えたトークセッションでは、実業団のメリットについて語っていました。聞き手を務めたのは、eスポーツキャスターである平岩康祐さん(写真左)

実業団に入る前は、井上選手はシステムエンジニア、森山選手は銀行員として働いていました。当時は、それぞれ仕事終わりのわずかな時間で練習をしたり、大会の際は有給を消化したりと、競技に体力的にも、精神的にも打ち込めることはできませんでした。井上選手は、大会開催直前まで出張業務に追われていたとのことで、やはり企業に理解してもらえるのは難しいと語っていました。

一方で実業団に所属し、競技と仕事を両立しながら働いている現状については、「プレイヤーに理解のある環境なのが嬉しい。コーチも付いていて練習環境としても最高」と評価。アカツキの業務では、「ゲームバランスを見極めて、判断することができる。業務から競技に学べることも多々ある」と、今回の実業団を通して得られるものについても話してくれました。

第2弾タイトルはバトルロイヤルゲーム『Apex Legends』が決定しており、すでに選手募集を行っています(関連サイト)。なお、オーナーの渡辺氏は求める人物像について、「将来のビジョンがある人。理想の状態と今の自分のギャップを埋められる人」を挙げました。

▲ファッションブランド「ナノ・ユニバース」とのコラボユニフォームも制作中。2020年秋に発売予定とのこと。

以上が発表会の内容です。プロプレイヤー(ゲーマー)の括り方や捉え方は、未だ市場では揺らいでいます。ゲームの活動を通して金銭の授受が発生すればいいのか、それともチームや企業に所属するのか、ライセンスを獲得するのか、などなど。

ゲーム(関連)企業がプロプレイヤーを抱える例としては、Cygamesの「マジック:ザ・ギャザリング」のプロプレイヤーチームをはじめ、GameWithのようにクリエイター(インフルエンサー)として所属するなど、すでにいくつか事例がありますが、アカツキのように実業団としての取り組みは珍しい。

契約社員とはいえ、日々決まったルーティンのもと業務に臨めて、生活を保障する一定の給与がもらえる。そして、練習時間を確保できるだけではなく、企業側による大会遠征費のサポートや、なにより周囲からの理解が得られるのは、選手にとって大きなメリットです。

一方でプロゲーマーには、一般スポーツのアスリート同様に選手としての寿命があります。しかし、今回の実業団では、選手が岐路に立たされたとき、ストリーマーに転身するのか、アカツキに正社員登用されるのか、キャリアプランが見込めるのも現実的です。

実業団に所属できるのは、プレイヤースキルなどを鑑みて狭き門ですが、アカツキの取り組みが一般化されて、ほかのゲーム企業に浸透されていけば、採用ケースも増えていくのではないでしょうか。

この記事が気に入ったら
いいね ! お願いします

Twitter で
TAKANORI HARA
角川でゲーム雑誌とWebメディアの編集を経験した後、大手ゲーム会社でマーケティング、広報など多数のPR業務に従事。その後Social Game Info 副編集長、Sp!cemart 編集長を務める。2017年に独立・起業。現在はゲームビジネスに関連した企画・取材記事を、自社メディアで発信。

Must Read

スタジオヘッド塩川の創遊話 第6回「FGO Memories Ⅱ 概念礼装画集 1.5部 2017.01-2018.04」プロデューサー

 ディライトワークスの新スタジオ SWALLOWTAIL Studios でスタジオヘッドを務める塩川洋介さんが、社内外のクリエイターにインタビューする「スタジオヘッド塩川の創遊話」。PickUPs!では本企画の取材・編集を担当。