4月末より、「中国の大手NetEaseが、2023年1月23日をもって終了したライセンス契約に関して、Activision Blizzardの子会社Blizzard Entertainmentを3億元(約58億円)で提訴する」との報道が出回っている。中国メディアをはじめとして、複数のメディアが報じた。
背景として、NetEaseは、2008年からBlizzardと14年間のライセンス契約を締結しており、中国におけるBlizzardタイトルのパブリッシングを行ってきた。パブリッシングを行っていたタイトルには『World of Warcraft』、『ハースストーン』、『WarcraftIII: Reforged』、『オーバーウォッチ』、「StarCraft」シリーズ、『ディアブロ III』、『Heroes of the Storm』といった、同社の主力タイトル群。
しかし、ライセンス契約の主要な条件について両社が合意に至らなかったとして、これが終了。上記タイトルのサービスが今年1月に停止された。
【関連記事】
Blizzard、中国でのパブリッシングに関するライセンス契約の延長をNeteaseに拒否されたと発表 1月23日にサービス停止
これを巡って、「NetEaseがBlizzardに対して訴訟を中国・上海で提起した」と一部で報道された。NetEaseの社員が本社に設置されていた『World of Warcraft』の彫刻を破壊するライブ配信を公開するなど、両社の緊張感が高まった状態に思われたことから大きく拡散されたが、実際には不満を持った中国のユーザー個人による訴訟である可能性が高いことが明らかになっている。
両社は訴訟に関する声明を行っておらず、海外メディアPC Gamerの取材に対して、Blizzardは「(NetEaseからの)訴状は受け取っていない」と回答している。
そして、中国テンセント傘下のFanbyteが運営するメディア・WoWheadの調査によると、中国メディアが参照していた公的な裁判資料の中に、訴訟を行ったユーザーとNetEaseが連盟で記載された文書があったことを「天眼査」(中国で公的記録を閲覧できるウェブサイト)から発見。この公的な文書を基に、中国メディアが報道を行ったものと推察される。
当初、資料にはNetEaseとユーザーの連盟により、BlizzardとThe9(NetEaseの前にBlizzardとライセンス契約をしていた会社)を訴えていると記載されていたが、その後更新され、NetEaseの名前が削除されたという。
当該のユーザーは2009年、2010年、2019年と複数回にわたって『World of Warcraft』のゲーム時間を巡ってNetEaseを訴えていた人物。これまでの訴訟はすべて棄却されている。今回の訴訟に関しては、当該ユーザーが誤解を企んだものだったか、中国の裁判所が誤認したものだったのかは不明だが、NetEaseの名前が記載された裁判資料の存在と両社の緊張関係が、話を大きくすることになってしまったものと見られる。
なお、NetEaseとBlizzardはライセンス契約を終了しているが、モバイルとPCで展開する『ディアブロ イモータル』の共同開発については別途契約により現在も継続している。